俺はミリの唇が好きだ


突然過ぎるとか言うな

俺だって突然過ぎるとか多少自覚している(だったら言うな)


セクハラエロキス大魔王とか良く言ったもんだが、否定はしない。あの夜――俺がストレス障害が発覚して初めてミリが泣いたあの日から、俺は歯止めを利かせていたソレをぶち壊して、ミリの口を塞いだ。一回やったやみつきは恐ろしいのはこの事だ。唇を奪う度、俺はミリに依存していき、溺れていく。ミリと別れて、どれだけこの唇が恋しかったか。やっと今、空白だった分を埋める事が出来た

久々に塞いだ唇は相変わらず甘くてやみつきになる程に柔らかかった。少しカサカサしているのを見るとそれだけミリが追い詰められていた証拠だ(しかし舐めとれば関係ねぇ






「い、や……っん、ふっ…」





逃げ惑う舌を、絡ませる


お前に逃げ場なんて与えさせねぇよ






「……んん!」






もう、何も言わなくていい

むしろ、何も言うな


自分で言って、自分を責めてくれるな





久々なのもあって、加減を知らない俺に、流石のミリも抵抗に走った。腕が俺の胸を押し返す。が、そこは男と女の差、全然ビクともしねぇ。むしろ力が弱い。コイツはこんなにも、弱くなっていた。腕を掴まれ引っ張られるが、それさえも弱かった

流石に後ろの髪の毛を引っ張られた時は反動で唇が離れちまった。仕方無く顔を上げてやる。肩で息をするミリと俺を繋ぐは一本の糸。虚ろで、しかも潤んだ瞳でこちらを見上げるミリは、艶やかで、美しかった

しかし俺はそんなに優しくは無い。いや、今回限りは優しくしてやってたまるか






「ふっ…!」






また何かを言おうとしたミリの唇をまた、奪う

あぁ、なんて気分が良いんだ。見下ろすミリの表情がたまらなくそそり、この高揚感が癖になる



けどこれ以上続くとミリが大変だと思うし第一俺の理性が、ヤバい。唇を離してやって、顔との距離を少し置いた。顔を真っ赤にして肩で息をするミリがたまらなく可愛いと思った。口から涎が垂れていたから拭ってやる






「……」

「ミリ、もう自分を傷付ける事はしないでくれ」

「…どう、して…?」

「どうしても、だ」






自分を傷付けるまで追い込まれているミリは、本当に本当に…脆い。触れてしまったら最後、簡単に壊れてしまいそうだ

相手を傷付く姿を見る事を嫌うコイツが、まさか自分を傷付けていたなんて、どうして俺は今まで気付かなかったんだろう。なぁ、どうして今まで溜めていたんだよ。こんなにも、なっちまうまで、なぁ、ミリ、ちゃんと俺をその瞳で映してくれよ。頼むから




俺は押し倒していたミリを抱き上げて、自分の腕の中に抱き留めた。前よりも確実に痩せただろうミリの身体は易々と腕の中にフィットした。困惑気味にこちらを見上げるミリの瞼に軽くキスを落とし、それからギュッとミリの身体を抱き締める。ミリの頭を撫でてやれば、次第にうつらうつらと頭が揺れ…コテン、とミリは寝た


無防備に眠るミリを見て、俺はやっと安堵の溜め息が口から零れた






「……ミリ…」






お前は一体、何を背負っているんだ








(いつの間にか俺の頬に涙が流れていた)



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