友達であり、ライバルであり

親友みたいな彼女

可愛らしい、妹みたいな存在











Jewel.27













彼女と出会ったのは、そう。カンナギタウンを過ぎてテンガンザンに向かおうとした山並みの道中。その日の天候は晴天で雲一つもない真っ青な空(と心夢眼で見た)だったけど、テンガンザンの山頂から吹く風が冷たい事もあり全体的に冷え込んでいた、そんな日

蒼華の背に乗り、これからテンガンザンをひとっぱし越え、クロガネシティのジムに挑戦しようと考えていた、トレーナーとしてまだまだ初心だったあの頃

道行く先――――東と西の境目に存在するテンガンザンを一人、輝かしい意思の籠った瞳を灯していたトレーナーと出会ったのが、今の私達を結ぶキッカケでもあった









「にしても久し振りよねー!ミリがこっちにいるって聞いたからすぐに飛んできたのよー。もう!ミリに会いたくて会いたくてしょうがなかったんだから!」

「私も、シロナに会いたかったよ。元気にいてくれて本当に良かった」

「それはこっちの台詞よ!もしミリに何かあったら、そう考えちゃうと寝れなくて寝れなくて!風邪引いてないかとか、変なストーカーに付き纏われてないかとか」

「あはは、それは大丈夫だよ。この子達目当てなら分かるけど、私目当てでストーカーする人なんていないって」

「……相変わらずその鈍感っぷりは健全みたいね、安心したわ。でもそんなミリも可愛いから許してあげちゃう!」

「?ありがと〜」


「…」(ペシッ
《ミリ様絶対分かってないよね》
《そうだな》
《主は鈍感だから致し方ない》








彼女の名前はシロナ

カンナギタウン出身の、巷で有名な【金麗妃】と呼ばれているポケモントレーナーだ

私より数個上の(まあ生きた年数からすれば私が年上だけど)、茶目っ気溢れる可愛らしい、異名通りの金髪金瞳の綺麗な美人さん

彼女は今、ベッドの上に腰を降ろす私の隣に座り、私の手を握っては「会いたかったわ〜」と、まるでポケモンの様に擦り寄ってくるから、彼女の今の姿を見てどちらが年上なのか疑問に思うかもしれない(まぁ私が年上だから気にしないけど)。表にはあまり見せない可愛らしいシロナの甘えに、私は笑みを浮かばせながらよしよしと彼女の頭を撫でる








―――――此処は、とある街のポケモンセンターの宿泊施設

いつもの様にバトルを嗜んだ後は一泊を同室で過ごす。そんな流れが定着しつつある今日も私達は同室の部屋でゆっくりと旅の疲れを癒していた













「ねえねえミリ〜、バッチは今どれくらい?」

「バッチはねぇ、今七つ目なんだ」

「あら本当?奇遇ね!流石私達!愛の絆はバッチの数をも繋げるのね!」

《また始まったか》
《此処まで堂々と言えると逆に清々しいモノを感じさせる》
《まあまあ二人とも。テレパシー向けていないからってそんな事言っちゃダメだって》

「シロナも?私と一緒の七つ目なの?」

「そうよ、私もバッチ七つ目。キッサキジムの挑戦が終わったばっかなのよ」

「帰り道だったんだ。それじゃ…次はナギサシティへ?」

「えぇ、ナギサシティのナギサジムのトムってジムリーダーが最後になるわ。ナギサシティって悪い話しか聞かないけど、最近変わってきているって話じゃない?だからどんな風に変わったか楽しみなのよねぇ。…と、そうなるともしかしてミリも次はナギサシティ?」

「残念、その逆だよ。私達の最後のバッチはキッサキシティのキッサキジムなんだ」

「ええええ!!?うそ!せっかくミリと一緒に途中まで旅が出来るって期待していたのに!もう!ミリのお馬鹿ちゃん!」

「あはー、ゴメンねシロナ」






久々の再会と同じ同室の事もあり、会話に華を咲かせていた時にふとシロナが話題を出したジムバッチについて

現在私のバッチは七つ、既に最後の砦でもあるナギサシティのジムバッチはゲットしてあったので(トムさんとは出会った時にノリでバトルを申し込んだら)、最後は最北の町の、キッサキシティのキッサキジム

キッサキジムに行くには本来山越えて雪の中掻き分けて行かなくちゃならないけれど、私の場合は時杜の力や刹那の念力があるからその必要が無いし、山や雪道に行くには正直盲目の状態ではキツいものがある。行けるだけの所は自分の足や蒼華の足で歩いて最後は力に頼ろうかなと、テンガンザンに向かっていた矢先、旅先の街でシロナと再会という事になる

けどまぁ、なんと言いますか。お互い目的地が真逆だからちょっと笑っちゃう。ブーブーと文句垂れるシロナに私は笑いながらよしよしと宥める














―――――シロナという女性は、私にとって、とても珍しく、また私にとって最も可愛い人間だった







こんな私を純粋に、真っ直ぐに慕っては、こうして懐いてくれている。歪んだ感情が無いのはいつも惜しみ無く手を握ってくれるその感触から分かっている

相手が自分に親しみや好意を寄せて嫌な思いをする人は少ない。私の場合、嫌でも相手の感情が分かってしまう為、臆病になってしまう。けれど相手が純粋にこちらに好意を持ってくれているなら話は違ってくる(まぁその好意の意味も色々違ってくるけれど)

シロナは可愛い子だ。一言で表わすと、親が子を見守る様な、師匠が弟子を見守る様な、そんな感じ。もっとしっくりくれば、そう、妹の様な存在で

彼女は強くなる。元々才能があった彼女にはライバルという存在があればある程どんどん強くなっていくタイプだ

その相手が私なら、私は彼女を阻む壁となりましょう。そして、シロナが強くなる手助けもしましょう。そうして私は彼女の挑戦を受け続けた。シロナには、強くなってもらいたくて。手加減しているのも彼女にはお見通しらしくよくバトルが終わると文句を垂れては不貞腐れる事が多いけど、暫く我慢をしてもらわないと。まだまだシロナは、蒼華と同等に戦える実力まで強くなっていない

でも私には分かる。いつかシロナが強くなって、改めて私達の前に立つ事を。私達が、今度は本気になってシロナの挑戦を受ける事を――――――……










「まあまあシロナ、いじけないいじけない。とりあえず今日はゆっくり休んでさ、明日の為に備えようよ。ね?」

「むー……」

《この者は本当に主より年上なのか疑問に思ってしまうな》

《闇夜、年齢だったらミリ様が上だよ》

《そういえばそうだったな》

「あはは。皆もシロナの手持ち達と会いたがっているからさ、ボールから出してあげようよ」

「もう、しょうがないわねぇ。あ!そうそう!美味しいお菓子があるのよ〜!一緒に食べましょうミリ!」

「わーい!」

《お菓子…!》







世間にはライバルだとか、私がシロナの背を追い掛けているとか言われているけれど、それはそれで構わない


この子の成長を最後まで見守っていこう

ルンルンとお菓子を用意し始めるシロナを、私は微笑ましい気持ちを抱きながら見守るのだった








(久々に見た逸材に心を踊らせるばかり)


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