部屋の中はリビングと同じで真っ白で統一されているシンプルな部屋だった。けど、シンプル…つってもベットしかない部屋もどうかと思うけどな。白いベット、白いカーテン、白いカーペットに白のクッション…清潔感はあっても生活感は無い、そんな部屋だった

そんな部屋だからこそ、手首を真っ赤に染め上げた腕は嫌でも目に付いた。飛び散った血痕も、ミリが持つサバイバルナイフも――全てが、赤かった。俺は驚愕した。そしてすぐさまミリに駆け寄って、また自分の腕を傷つけようとしたサバイバルナイフを持つ手を掴んだ。抵抗さえもしないミリをそのままベットに押し倒してサバイバルナイフを取り上げた。取り上げたソレをぶん投げればカランとした音と共に床に落ちる。ナイフに付着していた血がピチャッと俺の頬に飛び散った。虚ろに見上げるミリに、俺は危機感を感じた。目線を逸らして傷つけられた手首を見て、俺は泣き出したい衝動に駆られた

押し倒したベットは赤かった。黒い部分が見え隠れしている所を見ると、かなりの時間を使って自分を傷付けていたのは簡単に想像ついた。見るのも痛い腕を、俺は自分のハンカチで巻いてやる。その間ミリは抵抗もせず只黙ってされるがままになっていた






「…ミリ、お前…今自分が何してたのか、ちゃんと分かってんのか…?」






ハンカチを巻き終えて、俺は静かにミリに問い掛ける

黒のハンカチはみるみる内にドス色に変色していった。血を吸収していくその量に、俺は胸が締め付けられる思いだった






「馬鹿…何で自分を傷付けたんだ」






もし、俺が早くこっちに着ていて、ミリのそばにいてやったら…綺麗で細い腕が、傷つけずに済んだのかもしれない

それよりもこの腕は早く手当てした方が良い。このままだと、血が大量に溢れてばい菌が入っちまう。傷も治らなくなっちまう。けど、この場を離れたらまたコイツは自分を自分で傷つけちまいそうで、救急箱を捜すにも探しに行けない






「仕方無ぇ、ハピナ――」

「…必要無いよ…」

「っ、ミリ」

「必要無いよ…そんなの。ほら、」






ハピナスを出そうとボールを持った手を、傷付いた手が邪魔をした

虚ろに見上げるミリの反応に正直驚いている俺を余所に、ミリの腕が伸びる。先程ナイフから飛び散った血が俺の頬に付着したソレを、傷付いた手が優しく拭った

それから傷付いた手首を見せる様に俺の前に持っていく。片方の手が伸びて、血で濡れたハンカチをゆっくりと取る


俺は目を張った








「傷が、消えてる…」








血が付着して腕が真っ赤なのは変わりはない


しかし、傷という傷が…そこには跡形もなく消えていた






「…ね?だから必要ないんだよ」






そう、ミリは言った






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