一ヶ月前に受けたストレス障害は、既に完治したと精神科の医師に言われた。確かに前と比べると震えや発作は起こらなくなった。必要以上にミリを抱き締めなくても、平気になった だから支障は無かった ミリが少しの間、離れても ……けど、 「(やっぱ、無理だったな…)」 ミリが居なかった日は、辛かった それこそ、以前ミリに言われた「寂しがり屋」と同じだ いつも手を伸ばせば触れれた存在が無いと、どうしてこんなにも…切ない気持ちになってしまうんだ 結局俺は、依存しているんだ アイツに、ミリに ****** 「…レーンちゃーん」 「ん?」 「あの〜、腰を撫で回すのは〜世間一般だとこの事を〜セクハラだって言われてるの分かってます〜?」 「悪い、俺世間に疎いからそんな世間一般とか俺知らねぇ」 「嘘つけ!」 ****** 「…」 「よぉ、蒼華…っと、その腹で寝ているのはミリか…お前ら良くそうやって昼寝してるよな」 「…」 「「ブイ…Zzz」」 「キュー…Zzz」 「Zzz…ん〜…」 「ははっ、無防備に寝てやがるぜ」 「……レ、ン…」 「…お?」 「……のセクハラエロキス大魔王…」 「蒼華止めるな念力と紐を退け今すぐコイツの唇塞がないといけない使命が俺には出来た(ギリギリ」 ****** 「レン、今日は勝てたんだ…」 「フッ…俺に掛かればこんなもん、チョロいぜ」 「だからって、何処から知恵の輪なんか取って来たのさ…」 「別に良いじゃねぇか、細かい事は気にすんな」 「おいおい…」 「さぁて、ミリ。そろそろ寝ようぜ。正直眠いだろ?」 「あはは、実はね。…えい!」 「っと…何だ、今日は珍しく積極的なんだな。甘えたくなったか?」 「ん〜?フフッ、べっつに〜?」 「何だよ、気になるじゃねぇか。…ま、別に良いか。ほら、」 「ん〜…フフッ」 「ん?」 「いや、ね。レンって良く頭撫でてくれるよね。それ、してもらうと良く眠れるんだよね」 「(…可愛い事言ってくれるじゃねぇか)……ミリ、」 「??…わ、ちょ………んっ」 「……おやすみな、ミリ」 「〜〜〜っ。…おやすみ、レン」 ****** 「………にしても、静か過ぎる」 過去の楽しい回想もそこそこにして(懐かしいな、本当に)、俺はミリが眠っているだろう自室に視線を上に向ける ミリが眠っている部屋は二階だ。…寝ているならまだしも、けど、何で、静かなんだ(何故)。俺が来た事位、アイツならすぐに気付いている筈だ。アイツに驚かそうと何度もからかった事もあったが…仕掛ける前にいつも気付かれていた。しかも俺の気配も分かっているみてーで、遠くに居ても分かるんだと(どんだけだ、マジで)流石にそれ聞いて悪戯心は萎える、つーかお手上げで(アイツは笑っていた そんな奴が、先程からリビングをうろついている俺にすら気付かない。出迎えてさえも、くれない… すっげー嫌な予感ばかりが、身体を襲う 「おいおい、生きてるよな…流石に」 俺はそんな不安な気持ちを胸に抱きながら、階段を上って行く 飾りが一つも無い真っ白い壁に、俺が階段を上る度にギシッと音が鳴る。嫌な予感を感じながら…俺はミリが居る自室の前に到着する ドアは、閉められている まるで、外からの来訪者を拒むかの様に ドアは木製で造られた、普通のドア。やっぱりこのドアにも飾りなんかはついてなかった。…ついているとすれば、足元辺りに爪を引っ掻いた様な跡があったりする(おいおい… 躊躇するも、俺はドアを数回叩き声を掛けた 「……ミリ、居るか?」 …俺らしくもねぇ 嫌な予感があり過ぎて、声が震えちまっている 声を掛けてもう一度数回ノックをしてやった。暫く反応を待ってみるが、一向に返事を返してくれる所か、気配すらも感じない 居ないのか?と頭を捻る。ドアノブを掴んで捻ってみると簡単にドアがキィイッと開いた ミリの部屋…仮にも女の部屋に勝手に入るのも今更になって躊躇する俺(そりゃ俺だって男だ)(それに常識はある)。暫く考えるが、俺はゆっくりとドアを開かせた 「ミリ、悪いな。入るぜ……」 ―――ドクン 「―――っ!!??」 嫌な予感が、見えない刃となって俺を突き刺した ドアを開かせ真っ先に見たのは、ベットに座る、ミリの後ろ姿 真っ白いベットに、見えるのは真っ赤な血痕の花 腕は真っ赤な滝を連想させる ツンと薫のは――血の匂い その手に握っているのは―― 「―――ミリッッ!!!!」 (血の匂いがあの時の光景をフラッシュバックさせた) |