一度ミリがマサラに帰ると言って来た時に、時杜の能力でミリの家に訪れた事があった

初めて見たミリの家は、二階まである極々普通な家で玄関に咲いてある花が綺麗な印象を持った。こまめに手入れしてある印象を持った、ミリらしい家だった。…けど、中に入ると一変していた。まるで今まで生活しなかった様にかなり殺風景な部屋だった。むしろ生活なんか無かったかの様な…、必要最低限なモノしか、部屋には無かった






「写真さえも、無いのか…」






一人暮らしなら、納得は出来る。そもそもトレーナーなら一々家には居ない。皆色んな場所に行っちまっているもんだ。…それは、自分の帰りを待ってくれる相手が居るからこそ、出来る事

しかし、ミリには全くもってソレを感じさせるモノが存在しなかった






「………………」






今、俺はリビングの中にいる

合鍵はとりあえず受け取っていたから簡単に中に入れる事が出来たが…あの時と変わらない、殺風景なリビング

回りを見回しても目に止まるモノなんて何も無い。…少し気になるとすれば、壁の柱に爪の様なモノで引っ掻いた後がありありと残っている(まぁ原因は分かるがな






「…飯は食って無ぇ、な…」






台所は、使われて無い

…いや、辛うじて使われてるのは分かる。が、それはポケモン達に作る料理であって、ミリが口に入れて食べる料理なんかじゃ、ない

…アイツらしい。自分はともかく皆を食わせねぇといけない、と無理して作っていたんだろうな。だからってミリ自身が食わねぇと意味が無い(ったくアイツ本当に食わない時があるから困るぜ




他にも何か無いかと辺りを見渡してみると、テーブルの上にモンスターボールが置いてある事に気付いた







「白、黒、水色、赤…白亜と黒恋、蒼華と時杜のボールか…」






本当に良く出来たモンスターボールだよな。一色なボールはコイツらが初めてだぜ(しかも色違いに合ってるから凄ぇよなマジで)。…どうやらコイツらはどっかに遊びに行っているみたいで、ボールの中には居ない。まぁ、蒼華と時杜が居れば変な奴等に捕まえられる心配は無いから大丈夫だな

もう一つのボールは無い。刹那が入ったボールはゴウキが持っている。…一度別れる時、ミリは刹那が入ったボールをゴウキに託した。刹那を造ったのはナズナ、その兄弟のゴウキが持つのは妥当な所だろう

そして俺達はその日を最後に一度別れた







「……………ミリ」







あの時最後に抱き締めた身体は、震えていた


まるで、助けてと言っている様で




けど何処か拒む様な危うさも感じ取れた。無理した笑顔が、痛かった。無理矢理奪った唇は、安易に貪ると本当に壊れてしまいそうで…






「レン…」















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