『ミリ、最善は尽くしたわ』

「…フレ、イリ…」

『私が手を出せるのは此処までよ。例外が無い限り、これ以上の干渉は世界の均等を崩してしまう恐れがあるわ』

「……………………」

『…………ミリ』

「……………………」

『……堕ちて、しまったのね』








自我を失いし蝶は



己の壁を厚く造り、墜ちていく





――――――――
――――――
――――
――












「白皇、お前はマサラに行け」






フスベシティポケモンセンター




センターの入口で、ゴウキは言う






「……ゴウキ、」

「俺はこれからこのジョウトのジムを全て制覇した後、故郷のカントーのジムも制覇する。…丁度一か月前、コロシアムで優勝したらそれをキッカケに集めようと考えていたからな、良い機会だ」






腰からボールを取り出してゴウキは空に投げ付ける

ボールは高く投げられ、現れたのはフライゴン。フライゴンは咆哮を上げ口から灼熱の吐息を吐き出しながらゴウキの前に降り立つ


突然そんな事を言ってきたゴウキを目を張って見るレンに、フライゴンを撫でながらゴウキは言う






「ジムを全て制覇したらリーグに申請をして許可を得る。それから刹那と共にシロガネヤマに行く。行く前に一度お前達に連絡を入れる」

「………」

「白皇、お前がまず一番にする事は舞姫のそばに居てやる事だ。あの状態は、気を視ても相当なモノだ。…長く居たお前でしか舞姫を救う事は出来ないだろう」










「ごめんなさい、少し…実家に帰ってゆっくり休ませて下さい…っ」








「マツバを待つ間、捜し回っている時のお前は…記憶の光の欠片を捜す以前に舞姫の事ばかりを気にしていた。…無理も無い、気持ちは分かる」

「…………」

「気を視てなくても分かる。…早く舞姫に逢いたいと思ってるだろ?」










「ミリ…」

「ごめんな、さいっ…!こんな私じゃ、皆の…っ、足手まとい、だから……っ」

「ミリ、」

「ご、めんなさ…っ、レン…本当に、ごめんなさい…っ」

「…ミリ、泣かないでくれ…」










「……あぁ、逢いたい」

「白皇、」

「ミリに逢いたい。ミリの顔が見たい。ミリを抱き締めたい。……正直、記憶の光の欠片よりも俺にはそっちが心配で…大事なんだ」






泣き崩れる、脆い存在


普段から弱い存在が、それ以上に弱かった









「ありがとう…レン」








あの時最後に見た笑顔は、いつも見ている笑顔とは違い――無理をして作った、笑顔だった






「アイツがあんなに切羽詰まったのは初めてだ。絶対何かあると俺は思ってる。尋常じゃねぇのは見てて分かるし、見ているこっちが辛い。…俺が出来る事があるなら、何でもする」










そう、だから









「後は頼む、ゴウキ」




「あぁ」








全てを託したレン


全てを受け取ったゴウキ





レンの切なる願いを聞き届けたゴウキはフライゴンの背に飛び乗った。ゴウキを乗せたフライゴンは上昇していき、振り返る事もせず二人は空の彼方へ消えて行った

レンは二人の姿を最後まで見届けた後、腰から一つのボールを取り出した

投げ付ければそこに現れたのはエルレイド。静かに現れたエルレイドに、レンは静かに口を開いた








「エルレイド、ミリがいるマサラタウンまでテレポート」












飛び立ったフライゴンの咆哮がフスベシティ全体に響き渡った





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