旅をすれば出会いは必然

多種多様な人間とポケモン


彼女また、その内の一人














Jewel.26













テンガンザンが聳え立つ猛々しい姿が垣間見れる、何処かの街の中心部

街の憩いの場とも言える広場、活気溢れるその場所で沢山のトレーナーや住民が集っていた。彼等は意気揚々と、何かを観戦し、歓声を上げ応援をしていた






そこでは、トレーナー同士がバトルを繰り広げていた






一人は鮮やかなオレンジ色のコートを羽織り、【三強】を従えたトレーナー…―――巷で有名な【盲目の聖蝶姫】がそこにいた。彼女の前、フリーフィールドに立つのは―――額のクリスタルを煌めかせる麗しい存在、【三強】の内の一匹、水色のスイクン

しなやかで麗しく優雅な存在は戦闘になるとその姿を一変し、猛々しくも雄々しい存在となる。額にあるクリスタルは何処か神秘的なモノを感じさせるも、戦闘に立った今、そのクリスタルは脅威となって無慈悲に相手に襲いかかる





対する聖蝶姫の前に対峙するトレーナーは、こちらも巷で有名な注目されるトレーナーだった






聖蝶姫の存在とは何処か対照的にも捉えられる、一人の女性トレーナー

彼女は、【金麗妃】と呼ばれていた

聖蝶姫の鮮やかなオレンジとは違い、黒いロングコートを身に纏い、聖蝶姫の漆黒で艶やかな髪とは違った、金色に輝く長い髪。こちらも容姿の整った美女で、彼女と聖蝶姫が揃った姿は目を見張るものがあり、また見惚れるものもある

美しい顔立ちに浮かぶ、闘争心に燃える輝かしい金の瞳。その眼光は眼前に繰り広げられる激しいバトルと、相手側のトレーナーである聖蝶姫に向けられていた。手持ちであるポケモン―――ガバルドは彼女の指示の元、勇猛果敢にスイクンへ負けじと猛攻を繰り広げる









「ガバルド、りゅうのいかり!」

「蒼華、冷凍ビームで相殺。続いてこちらはエラスラッシュ」

「させないわ!ガバルド、ギガインパクトよ!」








ガバルドの開かれた口から放たれる蒼き龍の炎は濛々とスイクンに襲いかかるも、スイクンの口から放たれる極寒の冷気を放つ光線によって相殺され、爆発と白煙がフィールドを包み込む。その中で、ガバルドの放ったりゅうのいかりは氷になって地面に叩き付けられ粉砕した音が静かに響いた

白煙がフィールドから引いたすぐにスイクンはエアスラッシュの攻撃に転じようと態勢を立てるも、瞬時にガバルドは指示を受け、勢いを付けギガインパクトを繰り出す







「受け止めなさい」

「!!」







凄まじい勢いで向かって来たガバルドを、スイクンは正面から受け止める。地面に響く大きな衝撃音に、観客も相手も息を呑む。よけるならまだしも、まさか正面から堂々と受け止めてくるだなんて







「蒼華、大空に振り上げなさい」

「!?ガバルド―――ッ!」







相手が指示をだす、その前に

スイクンは自身の靡く紐をガバルドの身体に巻き付けた。怯むガバルドの不意を突き、下から持ち上げる様に軽々とガバルドを空へ高らかと投げ上げた

成す術もなく空に投げられたガバルド。驚愕の色を染めて空を見上げる相手トレーナーと、歓声を上げる観客



誰もが空を見上げる中、一人正面に顔を向けていた聖蝶姫は、静かに口を開いた








「蒼華、ふぶき」








ゴォォオオオオオ―――――
























ガタリ、と何かが落ちた。それは氷の塊だった。キラリと輝く透明な氷の中には、不格好に凍ったガバルドの姿が包まれていた。この時既に勝敗は決まったもの同然。地面に叩き付けられたソレに、女はボールを取り出し赤い光線が走り氷を包み込み、労いの言葉を掛けてボールの中へ戻す

今までのバトルを観戦していた観客達から、拍手や声援が沸き起こる。ボールを持っていた女は、手に持つボールを腰ベルトに戻すと声援に応えようとはせず、すぐに早足で聖蝶姫の元へ向かう





スイクンの隣りを通り過ぎ、三強のミュウツーやセレビィの姿にも目を向けずに女―――シロナは、何をする気なのかと構える観客達を余所にガバッと眼前に立つ聖蝶姫―――ミリの身体に抱き着いた










「ミリ!もう!まーた手加減しちゃってくれちゃって!これでも私達強くなったのよ?でも久々のあなたのバトル、楽しかったわ!」

「フフッ、シロナ。私も、楽しかったよ」









金色の髪を持つ、ミリの対照的な女の名はシロナ

迫力があったこのバトル。しかしいつもの様に今回も手加減してのバトルだと気付いていたのか、不貞腐れている表情を包み隠さずミリの顔をその豊満な胸に押し付けて仕返しとばかりにギュウギュウと抱き締める

ギブギブ、とあわあわと慌てふためくミリだったが、次にはやれやれと笑ってシロナの身体をギュッと抱き締め返したのだった









二人はトレーナーというライバル同士であり、友達でもあり―――親友だった










(誰もが微笑む温かい光景)


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