グルグルグルグル… ぐるぐるぐるぐるぐる… あぁ、堕ちていく 奈落の底に、記憶の渦に (誰か、助けて) ――――――― ――――― ――― ― 《ねぇ、蒼華》 「…」 《僕はずっと、夢見ていた。ミリ様が…僕らの事を、昔の事を思い出してくれるのを。そして、またあの日に戻れる事を…夢見ていた》 「…」 あの時は、幸せだった 勿論、今も幸せだ 一緒だけど、一緒じゃない 同一人物だけど、心は違う 違っていても、昔と今と全然変わらない 《浅はかだった。僕の考えは》 夢見ていた あの時の幸せを 今以上の、幸せを 《僕は知らなかった。【異界の万人】の意味を、その辛さを。…知らなかった、ミリ様が…あの人が苦しんでいたなんて。―――いや、ミリ様だけかもしれない…》 知らなかった 皆で見上げたあの満月が ミリにとって、身体を蝕む凶器になるなんて 《"記憶"が蘇って欲しい。記憶が蘇って、あの時みたいに戻りたい。―――でも、そのせいでミリ様が苦しむ姿は…見たくない》 自分達は、無力だ これは、自分達が入っては行けない"禁忌" ――そばにいる事さえも、ミリは自分達の事を想い、拒絶した 「…」 《無力だ》 《無力だ、よ》 「…」 《何もする事が出来ない》 《何をする事も、知らない》 「…」 《入ってはならない領域》 《入っちゃいけない禁忌》 残された者はただ想う 《僕らは託すしかない》 「…」 《それしか方法はない》 彼に託すしか 自分達には、何も出来ない 《ミリ様に最も近く、》 「…」 《心を開き、受け入れる器》 《【異界の万人】を支えし存在》 「…」 《【異界の万人】を守る存在》 白銀が、揺らめいた――… → |