風が、揺らめく



心地良い風が吹いてくる










―――――――…‥♪















何の唄かは分からない


昔から伝えられた、鎮魂歌


唄は遥か先にまで響き渡る





優しい様で、切なくて



それでいて何処か懐かしいメロディー
















ある丘の場所に、一人の女が立っていた



少女にしては何処か大人びいている女は、漆黒の長い髪を風に靡かせ、その身に纏うオレンジの服は草原により一層色を映えさせる。腰に付いている帯状のリボンと漆黒の髪が同じ方向に綺麗に靡く姿はまさに優雅



女はフルートを吹いていた


今この場を音色で一杯にさせているのは彼女が奏でるフルートのメロディーだった。透明なフルートは淡い光を放ち、より一層女を美しく見える







「…」







女の隣りに従わせるのは水色のスイクン


駿足と言われ、三聖獣の中では一番美しいと評されるスイクンは只黙って女が奏でるフルートの音色を聞き入っていた

水色のたてがみが風によって靡くその出で立ちは女の美しさと負けない位威風堂々としていて、一人と一匹が寄り添うその姿は溜め息が出る程美しい









――――――…‥ ♪













美しい音色は辺り一体を包み込む



優しい音色は生きとし生けるもの全てを癒す










―――人には視えない"ソレ"も、音色に包まれ浄化され、消えていった…‥










「………っ」

「…」

「ん、大丈夫だよ。ありがとう蒼華。…さ、皆の元に戻ろっか」



























「ただいま〜」

「戻ったか、舞姫」



「ブイ〜!」
「ブイブイ!」
《ミリ様!おかえりなさい!》
《主、蒼華、帰ってきたか》
「…」



「皆ただいま〜!」

「ミリ、お前一体何処に行っていたんだ?」

「んー、ちょっとね」






女――ミリは



スイクン――蒼華を撫でながら、笑った










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