「お前ら…鬼事していくは良いが、一体何処まで行っていたんだ」

「悪いな、コイツがえらい所まで逃げやがったから追いかけて捕まえて戻って来たらこんな時間帯になっちまったぜ」

「ごめんなさい、この人が全然諦めないですんごい速さで追っかけてくるもんだからついつい柄にも無く本気を出してしまって」

「フッ、ミリ…負け惜しみか?」

「フフッ、さぁ?」






しばらくしてセンターに戻って私達を出迎えたのは、カイリキーとプロレス…じゃなくて組み手を勤しんでいたゴウキさん。丁度センターの入り口付近にいたゴウキさんに、センターの中に入ろうとした私達と運良く出くわした

身体を動かし、少し汗をかいたゴウキさんは首に巻いてあるタオルで汗をふく。首に巻いていたバンダナは外してあり、今着ている姿はTシャツの運動しやすい恰好だ。逞しい筋肉が服の上から見える。レンも逞しい筋肉をしているけどやっぱり本職は違うn(何処を見ている

てかカイリキーと組み手とか…ひえー今度お手合わせしてもらいた(ry






「その恰好を見ると…部屋にはもう案内されたみてーだな。カイリキーも元気になってるし、その様子だと他のポケモン達も元気ピンピンって訳か」

「ゴォウッ」

「お前らのポケモンも先程回復を済んだとの連絡が入った。後で貰いに行ってこい」

「あぁ」

「…そうだ、白皇。久々に手合わせでもするか。お前が鈍ってないかこの目で確かめてやる」

「そうだな…此所に来てから組み手とかしてなかったな…。よし、たまには汗でも流すか」

「(組み手羨ましい!)あ、だったらレンの分も取りに行ってくるよ。すぐに戻ってくるから」

「悪いな」






レンも組み手とかするのか〜

だからレン、何時の日かグリーンを吹っ飛ばしたんだ〜ニヤニヤ。とりあえずわたくしは早くに皆を取りに行ったらすぐに戻って全貌を確認せねば!

てか私も組み手やりたい!!←













ミリがセンターの中に入って行ったのを見計らい、ゴウキは視線をレンに向け口を開いた





「レン、お前の身体の調子については俺は何も聞かん」

「…気付いていたのか、ゴウキ」

「俺は相手の"気"を読めるのは知っているだろう?久々に見たお前の気の流れは…多少不規則だったな。……聖燐の舞姫が敵になった瞬間には、驚く程に脆く不安定になっていた。これを見て、何も無いと思う馬鹿はいない」

「……そうか」





相変わらず人を見抜くその鋭い銀灰色の瞳は健全だな、とレンは小さく笑う

ゴウキは人を見抜くのには長けていた。幼少の頃から武道に励む中で身に着いたその力は、今と昔と変わらない。具体的な"気"の流れと言うモノは武道の道にいなく、しかもかじった程度でしかないレンに取っては理解が難しい

レンとゴウキは知り合ってから付き合いは長い。付き合いが長い分、ゴウキの鋭さをいかにどれほど鋭いかを知り、同時に隠し事が出来ない相手でもあった。幸い、淡泊な性格なのか相手の為を思うのか、ゴウキはそれ以上の事は聞かない

今も何も聞かないと言ったゴウキは何事も無かったかの様にカイリキーと組み手を再会した。拍子抜ける事もあるが、レンに取ってかなり救われていた






「なぁ、ゴウキ。……弱くなった俺を、お前は笑うか?」

「弱い弱くないかなど、思うのは勝手だ。全てはお前次第だ、誰かが決めるものではない」

「そうだったな…」






レンに取ってゴウキは、親友であり仲間でもあり…良い兄貴分でもあった。あまり必要な事は言わないゴウキだが、ここぞっと言う時にはしっかりと相手の背中を押してやる

全ては自分自身が決める事

それがゴウキの口癖でもあった






「ゴウキ、時杜が開いた空間…お前は何が見えた?」

「…帰るべき場所、か。…俺が見たのは、故郷にある道場だ。あそこは俺達の原点な場所だからな、カイリキー」

「ゴォウッ!」

「…白皇は……フッ、聞かなくても分かる。聞く方が、野暮と言った所か」

「…あの山からアサギまで来る最中、耳がオクタンになっちまう位に聞かれたぜ。余程、俺があの場所に戻ってこれたのが不思議でしょうがねーらしい」






レンはおもむろに腕を伸ばし、髪の毛を束ねていたゴムを髪から外した。サラサラとした白銀がゴムからスルリと抜け、片方の手で全てを掬い上げる

一気に高く縛り上げたその髪はゴウキの髪型と、ミリと同じ髪型のポニーテールへと大変身した(長さから言うとゴウキ<レン<ミリ






「フッ、…言うにも言えない。そうだろ?」

「ククッ、あぁ…そんな台詞吐いたらきっとアイツ、慌てふためくだろうな







俺の帰るべき場所…居心地の良い場所が、ミリの隣りだなんて…な」







今度はワイシャツのボタンを外し始める。無地の黒いTシャツが顔を覗き、レンはワイシャツを脱ぎ捨てる

ラフな恰好になったレンはワイシャツをその辺に投げ、組み手の中に入っていく






「あの時、空間を見てなきゃ無理矢理でも抵抗して逃げるつもりでいた。…でもアイツが先に空間開いてくれたお蔭で、不思議と余裕だったな」

「お前が考えた策…内容はどうあれ結果は良かったものを…あの時は焦ったぞ」

「終わり良ければ全て良し、だぜ」






蒼華と刹那の攻略方法…

レンが出したあの策は、妥当であり、それしか方法はない

しかしそれだけで勝てる相手ではない、それは一番レンが知っていた。あちらの手の内を知っての策は、当に見抜かれている事は確実。倍返しで返される、それは簡単に想像出来た




最終的に勝敗を決める策…



それは、ミリ本人だった









「ミリは推しに弱い」

「……」

「懐に入ればこっちのもんだ。(この際口塞いでやる)…とにかく隙を作ってくれ。元々こうなった原因は俺だ。ケリをつける」

「(…何故顔がニヤけているんだ)」












空間の中で瀕死だった手持ち全員に回復薬を使ったらしく、結果レンの奇襲と推しにミリは白旗を掲げる事になった訳だが…果たしてこれで納得するか、と言われると中々納得いかないゴウキでもあった


ゴウキはレンと向き合った

今はもう"気"の流れがいつも通りになっているレンに、構える。レンも小さく準備運動を終えると、間合いを取って構えた







「…居場所が分かったのなら、後はその居場所を守れ。…何がなんでもだ」

「あぁ、分かっている」








(そして互いに駆け出した)



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