レンとゴウキの指示でポケモン達全員、蒼華と刹那に飛び掛かった。それぞれ得意な技を蓄えながら、憶もせず二匹に向かって飛び出し、拳なら拳を振り上げ、放射なら口から大きく吸い込みながら彼らの行き場を失わせる

――妥当な戦法だろう。しかし、彼らは知らなかった

これこそが、刹那や蒼華、勿論ミリが狙っていた瞬間だったから








「大いなる竜巻よ、その無慈悲な吹雪と共にこの全てのものを包み、なぎ払い、無二帰しなさい」








全員が降り懸かるその前には、刹那はその具現化されたスプーンを頭上で回転させ始めた

刹那を中心に、大きな竜巻が作り上げられる。竜巻はそれはそれは立派なものになっていき、易々と襲いかかってきたカイリキー達やアブソル達を飲み込んだ






「な…!?これは一体…!?」

「これは…刹那のサイコウエーブ!」






強力な竜巻はグルグルと回り、相手の攻撃や動きを封じ、感覚を麻痺させる

竜巻の中に無残にもグルグル回っているポケモン達は何もする事が出来ず、尚且つ翼を持っているポケモンが少ないため、脱出が困難。竜巻から出る暴風音によりトレーナーの命令も聞けず、しかもトレーナー自身も竜巻の内側が見えずにいるため安易に命令が出来ない

それに竜巻の被害はこちらにも降り懸かっていた。強風が吹き荒れ、二人の髪をはためかせる。引き寄せられるため、岩に掴まって耐えるしか方法は無い






「大丈夫、二人には被害がいかない様にしてあるから。――じゃないと二人共、カッチンコッチンに凍っちゃうから、ね」

「「――!!」」






蒼華の額にあるクリスタルが大きく輝きだし、咆哮を上げる

蒼華の回りに光るダイヤモンドダストを中心にして、ふぶきが炸裂する。ふぶきは真っ直ぐに刹那の造ったサイコウエーブに直撃した

竜巻の中にある水蒸気が凍り、勿論水分さえも凍り付く。吹雪きの雪が竜巻の回転に流れ込み――中にいる生きとし生けるものを凍らせてしまう、最強にして最悪の…雪の台風






「レンは見覚えあるよね?フィンさんとリランさんの得意とする華の台風を。――フフッ、まさかこういう展開で役に立つなんて思わなかったよ」






今度お礼の電話かけよ〜、と呑気に笑うミリの声はレンの耳には届かなかった




二人は唖然としていた

蒼華と刹那の技の応用を――まさかこんな時に瞬時に組み合わせて、技にするなんて。ミリの頭の回転の良さに舌を回し、呑気に笑うミリの表情が憎たらしいと感じた


心中舌打ちだらけの最中でも、台風は変わらずの強さで中にいるポケモン達を襲っていく


――――台風から投げ出されたソレは、無惨にも凍り付けにされ、結晶の形になってしまったポケモン達が次々と投げ出されていった






「っ!?アブソル!ハピナス!ミルタンク!トゲキッス!スイクン!」

「カイリキー!トリデプス!…っフライゴン!アーマルド!ジバコイル!」






二人は凍り付けにされ地面に叩き付けられた仲間の元へ駆け出す

全員が全員、見事にカッチンコッチンに固まっていた。目をクルクルと回した状態で、中には面白い恰好で固まっているポケモンもいた



一瞬にして、手持ちの全員が戦闘不能になってしまった


レンは膝を着いた

ゴウキは拳を地面に叩き付けた





――つまり、その意味は敗北








《お前達は選択を誤った。――一気に全員で戦おうとするから、こうなってしまう。策があった様だったが…残念だったな》

「…」

「もう、戦う意思は…無いよね」

「…っ」






時杜がフワリと現れる

舞い降りた場所は―――レンの頭上






「帰りなさい、もう二度と会う事は無いでしょう」







レンは時杜を見上げる

時杜の後ろには巨大な空間



空間の先に見える、自分の帰るべき場所――


フワリと、レンの身体が浮いた






「白皇!!逃げろッ!!」

《人の事を心配する前に自分の事を心配するんだな》

「ッ!」

《時杜の力が無くとも、私はテレポートの力でお前を帰るべき場所へ帰らせる事が可能なんだぞ?…大人しく、する事だ》

「ッ!」






刹那がゴウキの前に降り立つ事で、行動を遮られゴウキは唇を噛んだ

対するレンはただ黙って、空間の先を見つめていた。憔悴しきるのでもなく、焦るのでもなく逃げ出すわけでも無く――レンは、微笑んだ


ミリに、向かって






「…レン」

「ミリ、確かにお前らは強い。俺は素直に負けを認める」

「そう、それは良かった」






誰の力か分からない

レンの身体はドンドン地を離れていき、時杜が開く空間の前にたどり着いた

小さく鳴く時杜の頭を、ポンと撫でた






「…ミリ、今更俺は何も言わない。お前らが言う真実だとか絶望だとかも、聞かねぇ」

「…」

「けど、約束してくれないか?」







――再会したら、全てを話してくれ







「…約束するよ。…再会、無事に成功したらの話だけど」

「絶対、だからな」

「えぇ」







レンは笑い、ミリも笑った

腰からボールを取り出し、空中から皆をボールに戻していく。一個一個に良くやった、と呟きながら戻していく。やがて全員をボールに戻したレンは、前を見据えた






「ミリ、またな」






いつもの飄々とした、レンらしい笑みで、レンは笑った



そして、自ら紅い空間の中へと入って行った――








(さようなら、白銀の麗皇)(さようなら、聖燐の舞姫)



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