「ゴウキ、一つ忠告しておく。…知っているだろうが、ミリの手持ちにいるイーブイ達は不思議な特殊能力を持っている。それは、身に染みて分かってるな?」

「あぁ」

「あの二匹は多種多様な技、七種類の進化が可能。…だが、あの二匹だけじゃねぇ。特別な能力を持っているのは他にもいる」

「…あの色違いのスイクンか…」

「そうだ。他にもミリはセレビィも持っている。…驚くよな、あのセレビィだぜ?しかも色違いだ。時杜って呼ばれているが、アレの能力は分からねぇ。が、蒼華は【プレッシャー】の他にも【へんしょく】を持っている。聞いた事あるだろ?」

「【へんしょく】…か。代表的なポケモンはカクレオン、と言った所か。中々厄介な能力だ。見れば相当、否かなり強いと俺は見る。…勝ちにいくのは難しいな」

「ミリの手持ちの中で蒼華がダントツに強い。刹那の実力も同じ位だろうが、厄介なのは勿論蒼華の方だ。アイツの実力は近くで見ていたから嫌でも分かる。一番最悪なのは一度食らってまた同じタイプの技を食らうと無効化にしちまう。最強…いや、最恐だな」

「…が、勝てない相手では無い」

「あぁ。奴にはあるパターンで勝ちにいくしかない。難しいだろうが…ゴウキ、耳を貸せ。―――この策なら、勝てるぜ俺達」

















ドォオオン――――













スイクンの冷凍ビームを蒼華はその駿足で避ける。避けられ行方を失ったソレは地面を冷や冷やのツヤツヤに凍らせた。スイクンの後ろに控えていたカイリキーは自慢の腕を振り上げて地面に叩き付ける。叩き付けられたそれは地響きが起こり、反動で岩山の岩が降ってきた。色々な形や大きさをした岩が無慈悲にも襲いかかってくる

地に着地した蒼華の前に刹那が現れる。腕を振り上げれば回りに念力で作り上げた特殊なバリアーが自分達を覆う。岩はバリアーにぶつかり、それから弾き返される。弾き返された岩はスイクンやカイリキーに襲い、レンの瞬時の命令でスイクンはこおりのつぶてで回避をする


バリアーをしている刹那が発動をし続けながら一歩下がる。今度は蒼華が一歩前に出て、額にあるクリスタルを輝かせながら大きく咆哮を上げる。とても強いふぶきが辺りを襲い、岩山を凍らせた。もちろんそれは二匹にも、トレーナー達にも襲いかかる。レンは瞬時にスイクンの背に跨がりふぶきを避け、ゴウキとカイリキーは瞬発力でふぶきの軌道から逸れる






「アレを食らったらひとたまりも無いな」






地面からは巨大な結晶があちらこちらと姿を見せる。岩山の所々に魅せる結晶はまるで幻想的にも見える――が、裏を返せばソレがどれほどの強力なモノなのかが頷ける

今まで沢山の氷タイプの技を見てきた――が、ここまで結晶が作られる程の威力を見た事はない。ゴウキは内心驚きながらも刹那の具現化された武器の攻撃を避ける






「気をつけろよ!あの技食らったらそれこそ細胞まで氷結だぞ!」






蒼華の技を見た事あるからこそ、その恐怖を知っている

爪先でも触れてしまえば最後、全身にまで凍り付いてしまうだろう。レンはスイクンにおいかぜを命令すると後ろから風が吹いてくる。これならお互いのポケモンのスピードが上がってくれる。スイクンはゴウキの隣りに降り立ちレンはスイクンの背から降りる

白皇、とゴウキは小さくレンに声をかける






「お前の氷技があのスイクンに決まったとしても、遠距離攻撃だと先に俺のカイリキーがやられるだろう。ミュウツーの技にも弱いからな、この状況だと難しいぞ」

「…だろうな。思ったよりも蒼華と刹那のコンビネーションが良い。蒼華を中心に狙ったとしても刹那にやられる、刹那を狙っても蒼華にやられる。…究極の選択だな」






少しお互いの技を出し合い、避け合っただけでも二人には次の行動で自分達がどうなるか、もう予知していた



凍った岩山の上に優雅に立つ蒼華はいつでも攻撃の用意が出来ているらしく、ダイヤモンドダストらしき光が見え隠れしている。その少し離れた空中では刹那が具現化された武器を手にして宙に浮かんでいた。また、少し離れた岩の上にはその主であるミリが肩にセレビィを乗せて静かに見つめていた

こちらを見てくる漆黒の瞳は何故か紫水晶の瞳に見えた。瞳には感情が込められていなく――同時にミリは自分達に容赦はしないという警告に近い色をしている様に見える






《やはり人に攻撃する戦いは私には向いていないな》






冷気が漂い、沈黙が続く空間に刹那のテレパシーが頭に響く

無表情で己の武器を見て武器を消した刹那にゴウキは少なからず驚く。ゴウキも"ミュウツー"というポケモンが凶暴ポケモンだと言う事を知っていた…が、まさか試合を放棄に近い行動を起こすなんて。それは隣りにいるレンも、表情は変えずとも刹那には驚いていた

ゆっくりと地面に足を着ける刹那に、岩に立っていたミリはフワリと笑った






「そうだよね、貴方は戦いは好まない平和主義者だったものね。ごめんね、私の我が儘に巻き込んでしまって」

《いや、構わない。私も鉄壁の剛腕と白銀の麗皇とは一度刃を交えてみたかったのも事実。…これ以上やると流石に私も自分の内なる力を抑えられんからな。あの者達の実力は知れたから、私はもう充分だ》






だがしかし、と刹那は続ける






《守ってばかりの攻撃では私達には勝てない。…結局、お前達の実力はそんな程度だと言う事だ》

「「――!!」」

《お前達の攻撃は既に聖燐の舞姫は読んでいる。無駄な抵抗は止めた方がいい。私達が実力を出す前にこの場から立ち去った方が身の為だ》

「…言ってくれるじゃねーか!」






レンの言葉と同時にスイクンは刹那に向かって駆け出す。その口からは冷たい冷気が電撃の様に迸っている

こおりのキバ――

しかし、駿足並の速さで攻撃してきたスイクンを刹那は武器を出す事も無ければバリアーを出現する事なくその攻撃を腕で受けた



強烈な牙は易々と刹那の腕を食い込み、冷気が包み腕が次第に凍り付いていく。やった、とレンは心で呟くが対する刹那は無表情でスイクンを受け止める。まるで痛みが無いのか、表情には一切現れない






《スイクンよ――すぐに私の腕から牙を外し、離れた方がいい。幾ら蒼華と同じ種族であっても、私の技には耐えれるかどうかは分からない》

「――!?」

《聖燐の舞姫、》

「…えぇ、分かってる







 ―――刹那、十万ボルト」








スイクンの身体に強烈な電撃が迸った






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