《奴は言っていた。『自分を見つけ出せる鍵になるのは聖燐の舞姫だ』と》


《『…しかし、ある奴は俺を捜さない方がいい。そいつが俺を見つけ出し真相を知ったら…そいつはきっと、絶望の淵に墜ちるだろう』とな》






《その者は、【白銀の麗皇】》












白銀の麗皇


エンジュシティで刹那に言われ、初めてその存在を知った。そういった情報に疎かった為、その存在がどういう人なのかはもちろん分からなかった。興味がある、と言えば嘘になる。…そう、普通なら、人の異名如きで騒ぎ立てる程に興味なんてさらさら無かった

異名はその人を例えたモノ――逆に異名は相手の本来の個性を押し止どめてしまうものでもある。ありのままの姿が好きな為、そういった異名は意味を成さない






「白銀の麗皇かぁ…」

《きになりますか?》

「まぁ、ね。レンったら、勿体ぶった様に切り上げるんだもん、気にならない方がおかしいって。普通は白銀の麗皇って言われても気にならないけど…刹那の言う事もあるから、中々見過ごす訳にはいかないから、ね」

《なら僕らの仲間に情報収集をしてもらえればいいと思いますよ。そうですね…瑠璃なんか結構色々な所を渡っていますから詳しい筈ですよ。僕の力があれば瑠璃を呼ぶ事も可能ですし》

「…なんでもありなんだね…」







でも今回は刹那の、いや、ナズナさんが言っていた台詞がとても印象強く…この真相がとても複雑な絡みだと知ると同時に、白銀の麗皇を、その人を、止めなければならないという使命感が生まれた

何故ナズナさんが白銀の麗皇に対してそんな事を言った理由は定かではない。しかし仮定を述べる限り、ナズナさんの持つ真実が、深く白銀の麗皇と関係していると言う事






《その者にとっては替えがたき真実であり、また認めたくない真実だと奴は言っていた。何故その者が奴を探している理由は定かではないが、いずれにせよ我々から遠ざからせればならない》






彼を、止めなければ

絶望?そんなことはさせない


時杜に頼み瑠璃に捜させなかったのは、白銀の麗皇は近い内に何処かで出会えるだろう、という心の余裕

同時にそんな事で皆を遣わせるなんて出来ない、という抵抗と遠慮

力も使わなかったのは必要が無かったから。使っても意味が無い事は分かっていたから





だから今まで、何もしなかった



…いや、色々ありすぎて白銀の麗皇の存在を忘れてしまっていた、と言うべきか






「レンってさ、かなりの情報通なんだよね?」

「おー、まぁな。何だ?この俺に情報を求めるのか?ん?場合によっちゃ高くつくぜ?」

「よ!色男!その寛大な心で出欠大サービスしてちょうだいな!ヒューヒュー!」

「お前にはいつも大サービスしてやってるつもりなんだけどな。……で?いきなり改まってどうしたんだ?」

「ちょっと耳にしたんだけどさ、【白銀の麗皇】っていう名前知ってる?」








あの時聞いたのは、レンの髪が同じ白銀だったから、彼が情報通でもあったため何気なく聞いてみた

しかしレンの調子に狂わされ結局詳しい話は聞けずに終わり、聞こうにも色々あり存在を忘れてしまったままになりお預けを食らうはめになってしまった







「この辺りでは聞かない名前みたいでさ、私そういう情報にはちょっと疎いから分からないんだよね。うーん、やっぱり名前が知れているって事はその人、強かったりしてね!」

「…………」

「それに【白銀の麗皇】って、なんか格好いい名前だよねー。"麗皇"って字が私は好きだな〜、うん」

「…格好いい、好き、か…」

「一体どんな人なのか見てみたいよ。なんか"白銀"って所、レンに少し似ていない?ほら、レンの髪って綺麗な白銀じゃん?」

「………なら、仮にそいつに逢ったとしたら…どうする?」

「え、仮に?そうだね〜……とりあえず、最初に逢うならまずは握手?もしくはサイン?それとも写真?最後はバトル?」

「ははっ、そうくるか」









あの言動とあの反応…





今思えばすぐに気付けた筈なのに、どうしてあの時気付けなかったのだろうか



























「俺がシンオウで修行に明け暮れ、レン…いや、もう隠すまでもないな。白銀の麗皇、俺はそいつの事を"白皇"と呼んでいるが、確かに白皇はレンだ。間近で見てきた俺が、その事を証明する





レンガルス=イルミールは、正真正銘の【白銀の麗皇】だ」






ゴウキが静かにレンの隣りで口を開く。辺りは木々とポケモン達の囀りが木霊し、それ以外は沈黙だった

対するレンの方はそのピジョンブラッドの瞳を、その瞳の光を穏やかに光らせ、ただミリの方を見つめていた。揺らぐ事はない穏やかなまなざしは反らす事はない






「何も、言わないんだね」

「…言って、何になるんだ?」

「ははっ…それ、さっき私が言った台詞だね。…これは一本、取られたかな…」

「…………」






否定の色は何処にも無い


本当にレンが白銀の麗皇だと、認めるしかなかった







「ふふ…」

「「…」」

「フフッ、フフ…あ、アハハハハハハハ!!」

「「!?」」






いきなり笑い出したミリに二人はギョッとした顔でミリを見る。その二人の顔が面白過ぎてまたミリの壺を刺激させるはめになる

刹那の腕にいる白亜と黒恋も?マークを出しながらこっちを見て、しかしミリの笑いに釣られてケラケラと笑い出す。刹那は無表情でこちらを見るが、レンとゴウキは何がなんだかサッパリ分からない顔をしている






「あはは!えー?レンが白銀の麗皇〜?んー、確かに言われてみれば頷けるけど……刹那、セクハラエロキス大魔王の間違いなんかじゃないの?」

「Σおいコラ待てミリ!」

「…セクハラエロキス大魔王って白皇…お前…」

「あっはー私は信じないぞ〜おねーさんは信じないぞ〜。いくらラーメンつけ麺僕イケメンなレンでも【白銀の麗皇】って名前よりもマジでセクハラエロキス大魔王の方がしっくりくるって絶対!うんうん絶対そうした方が良いって!良かったねレン!」

「古っ!?今更そのネタかよ!良くねーよテメェお望み通り口塞ぐぞゴラァ!」

「ほらねー!すぐそうやって冗談だか本気だか分からない言葉返してくるんだから!ちょっとゴウキさんどう思います〜?もうこんな発言している人には立派な称号を与えるべきですよ!」

「………(汗」






さっきの緊迫した雰囲気が一変し、互いに緊張が解かれた気がした

指をさして笑うミリをレンは引きつった顔で制裁を食らわせる一歩手前状態で、そんな初めて見る二人の光景にゴウキは汗を流す。白亜と黒恋もケラケラと三人を見て笑い、スイクンもアブソルも拍子抜けた様な顔で三人を見ていた



笑い溢れるその空間は、穏やかな時が流れつつ――










「あはは、でも良かった〜








 これで貴方を止める理由が出来た」


「「!?」」








しかし、そんな穏やかな雰囲気もまた一変し



ミリと刹那、そしてレンとゴウキとの間に――鋭い亀裂が走った













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