アサギシティからエンジュシティを繋ぐ道路




先頭をきる一匹は白い身体を駆使しながら地を軽々と飛び越え駆け出していく

もう一匹は大空を広々と、緑色の翼を大いに羽ばたかせながら白いポケモンの後を追う


二匹の背中にはそれぞれ二つの人影があった






「…そっか、アブソルは人を乗せて走った事が少ないからスピードも遅い…!」

「フー!」

「聖燐の舞姫、アブソルだけでも先に行かせるんだ!俺のフライゴンならすぐに後を追える!こちらに移れ!」

「えぇ!お願いします!…アブソル、先に行きなさい」

「フー!」






アブソルの背中に跨がっていたミリは、近付いてきたフライゴンの背中に飛び移る。フライゴンの背中に乗る持ち主はミリの身体をしっかりと抱き留めて、しっかりと背中に足を着けたのを見てフライゴンは上昇する

アブソルは上昇していったミリ達を見送ると、スピードを速くしていった。先程よりも軽々と岩山を登って行き―――やがては見えなくなっていった






「あのアブソルの足ならばすぐにでも着くだろう。少量だが木の実を与えておけばバトルになっても大丈夫だ」

「…大丈夫でしょうか、レンは…」

「…案ずるな。アイツはそう簡単にはやられん。…奴の実力は知っている。お前はアイツを信じていればいい」

「………」

「…聖燐の舞姫、しっかりと掴まっていろ。俺のフライゴンは、速いぞ」

「はい、お願いします






 ―――――ゴウキさん」









* * * * * *










《信じられない、そんな顔をしているな。だが、私と聖燐の舞姫が顔見知りであり知り合いなのは事実。私が姿を現しても奴は驚くどころかむしろ迎え入れてくれている。白亜も黒恋も、蒼華も時杜も私を受け入れ仲間の様に接してくれている。おかしい話は全くもって無い》






ふたごじまで出会った事

ジョウトでも度々会っていた事も


勿論、二人が再会した日も――





表情を変えず、刹那は淡々と語る






「…マジかよ…」






呟く言葉は微かでしか聞こえなく、唯一聞こえたのは隣にいるスイクンくらいだろうか。しかし脱帽に近い気持ちになっても刹那の警戒心は怠らない

正直な所、レンの心中は複雑だった

この一か月という空虚に出会うならまだしも…まさか、ふたごじまで、自分が倒れる前の、あの時だなんて。しかも再会したあの日にも出会っていたなんて…開いた口が塞がらないのはまさにこの事を言う



しかし、何故

何故ミリは――何一つ、自分に教えてくれなかったのだろうか



教えてくれたって、良いはずだ

ふたごじまの時はしょうがないとしても、その後なら言う機会はいくらでもあったはずだ。再会してコガネのセンターに二週間居た時もいつでも言えたはずなのに




しかし、何故――――…







《解せないな。何故、お前は悲しむ。私の言葉に、悲しむ理由は何処にも無いだろう?》

「………」

《逆に驚くかと思っていたがな》






レンは気付く

目の前のコイツは、造られた存在。人間が出す喜怒哀楽という感情が、よく分からないでいる


レンは小さく笑った






「そうか…お前は知らないか。いや、感じた事がない、か。…ならしょうがねーな、そう言うのも分からなくもない」

《…感情を、と言いたいのか?》

「………いずれ、分かるだろーぜ」






レンは小さく笑い、自分自身に嘲笑する

嗚呼、自分は悲しんでいるんだと

むしろ何故教えてくれなかったんだ、と言う嫉妬に近い怒りがふつふつと浮かんで来ている。まるで置いてけぼりを食らっているみたいだ



――あの時はあまりミリはこちらに心を開いていないのは分かっているが、…せめて一言だけでも…







ガサガサガサガサ…!





「「!」」

《…!》






ガサガサ、ガサッ!






「フー!」

「!?アブソル!?」

「フー!フー!」






何かがこちらに駈けてくる音が聞こえ、気配が迫ってくるのを感じ取ったその時、レン達と刹那の間に割り込む姿――アブソルが、現れた

レンは目を張り、スイクンも驚く。アブソルは二人を守る様に刹那に対峙して唸りを上げる。レンは慌てて声を荒げた






「アブソル!お前ミリはどうした!?俺はお前にミリを連れて避難しろって言ったはずだぞ!?」






逃げる事はいくらだって出来た

しかし自分はこの場に残った

けどミリを巻き込みたくないという一心で、手持ちの中で眠るミリを無事に運び出せれるか…と考えた結果がアブソルだった

戻ってこい、そんな命令はしていない。むしろミリの側にいろと命令したのにも関わらずアブソルは戦場に戻って来た





「フー!」





アブソルは後ろを振り向かずに声を上げる

人間ならば鳴き声にしか聞こえないソレは、レンにはしっかりと"言葉"として聞こえていた





「なん、だと…!?」










「フライゴン!りゅうのいぶき!」








ゴォオオッ!と刹那の頭上に熱い息吹が降り懸かる






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