五つの光 五つの記憶の光の欠片 その内の三つはミリの手に 残る二つは、何処へと 彼は待つ ――――暗闇の中で 『聖燐の舞姫、鉄壁の剛腕、そして…白銀の麗皇。三人を繋ぐのは俺、話を進ませるのはミュウツーに、錠前の役目を持つカツラさん。話の終盤に近付けさせる鍵は…聖燐の舞姫』 光は揺らぐ 『白銀の麗皇…彼が一番危うい存在…。この真相は彼にとって辛い現実になるだろう。…出来れば俺が俺になった時に、その場に立ち会わない事を、願うしかないな…』 ――――――――― ―――――― ――― ― 生い茂る木々の間 小さな氷の飛礫と、それをなぎ払う機械音が木霊する 木々を凄いスピードで駆け回るのは駿足と謳われしスイクン。スイクンの放つ、鋭くて素早いこおりのつぶてに対抗するのは緑色のしたポケモン。念力で具現化した武器で氷の飛礫をなぎ払えば、氷は弾き返され木々にぶつかり溶けていく そんな目にも止まらない行動に唯一着いて来ているのはレン。スイクンの背中に跨がり、冷静にバトルに集中する 「ハイドロポンプ!」 スイクンの口から大量の水が緑色のポケモンに噴射される 迷いもないその噴射は真っ直ぐに相手に降り注ぐ、…が、相手のバリアーによって防がれてしまう。バリアーによって二つの方向に噴射された水は近くの木々にぶつかり、その威力の強さに何本か折れ倒されてしまう 小さい舌打ちがレンの口から漏れる。攻撃を止め、緑色のポケモンに対峙する。相手は悠々とバリアーを解き、こちらに戦う意思は無いと言うかの様に具現化された武器を消す 「…どうやら本当に戦う意思は無いみたいだな。しかし…まさかこんな所でお目にかかれるなんて想像すらしてなかったぜ ――――なぁ、ミュウツー」 緑色の、ミュウツー 噂で聞いていた 噂、と言うよりも調べていて分かっていた 「だが、噂とは少し違うな」 《それは別の同胞の事だろう。…あの者は、私をこう例えるなら、色違いのミュウツーだと答えていた》 「フッ、なるほどな」 別の同胞とは、表に出ているミュウツーなのだろう。このミュウツーは自分自身を色違いと区別する程だ そもそもミュウツーというポケモン自体造られただけあって数は無い。レンが調べた内容の中にあるミュウツーの事については、当時ロケット団だったカツラが自分の細胞を使いながらミュウツーを作った事位だった。他にも色々調べてあるが、今回は説明しなくてもいいだろう しかしそんなミュウツーが 誰が造ったか分からない存在が、何故自分達の前に現れたのか 「ミュウツー、お前は…」 《色々述べる前に一つ訂正しておく。その名前はもう一人の同胞の名前であって私の名前では無い》 「えらい口が回る。そんなにその名前が嫌いな様だな。…なら、お前の名前は何だ?」 《私の名前は、刹那だ》 まるでニックネームみたいな綺麗な名前だな 小さくレンは思う 淡々と口だけを動かすミュウツーもとい刹那の、自分の名前を言った時の口調が、何処か誇りを持っている様にレンは感じた。…それだけ思い入れがあるのだろう 「…なら、刹那。何故お前は俺達の前に現れた?狙いは俺か?それともミリか?」 《…》 「それに姿が見えなかったのはどういうトリックだ。お前、ゴーストタイプじゃねーだろうが。…そもそも自然の原理で自分の姿を消すなんざ不可能だろーが」 《…》 「それに…刹那、って言う名前、自分で付けた訳じゃねーな。…どうやら気に入っている様だな。その名前を付けて貰ったのはお前の造ってくれた人間か?」 《…》 「答えろ、刹那」 無表情でこちらを見てくる刹那にレンは問いながら睨み付け、隣に佇むスイクンも唸りを上げる しばらく沈黙が広がっていたが、やがて刹那の口がゆっくりと開く 《お前もよく話す。お望み通り、全てに答えてやろう。まず一つ、私が二人の前に現れた理由は…聡いお前なら分かるだろう?》 「…ミリ、か」 《ご名答》 刹那の目的がミリだと知ったレンの瞳がもっと鋭くなる。スイクンも唸りを上げ、いつでも飛び付けれる様に低く体制を構える 大抵、人やポケモンはレンのピジョンブラッドの鋭い瞳に睨まれると、怖じけづいてしまうケースが多かった。しかし刹那はモロともせずレンの瞳を無表情に受け止めていた 「ミリに何をする気だ……言葉によってはお前の細胞ごと氷結させてやる」 《別に私は聖燐の舞姫をどうするつもりもない。確かに今回は用はあった。…しかし隣にお前がいる以上、安易に姿を現わす訳にはいかない》 「フッ、だろうな。敵であるお前にそう簡単に…」 《敵?違うな。その逆だ》 「…んだと…?」 《こう言った方が分かりやすいだろう 私の名前を付けてくれたのは、私を造った者でもない――聖燐の舞姫だ》 「―――!!?」 → |