「…………フフッ、」

「…どうかされましたか?"  "様」

「いえ……皆さんを見ていると…幸せだな、って思うんです。皆さんあんなに喧嘩ばかりしていたのに、今はお互いを支えあいながら仲良くしている。その中に私いる。…ずっと一人でこの島にいた私には、いくら種族が違ってもこの上ない幸せです」

「確かに皆の者が此所にやって来てから、賑やかになりました。それは平和になった証。…ですが私は、"  "様の笑顔が見れるだけで幸せです。……それは、此所にいる魔物達も気持ちは一緒でしょう」

「…私は怖いのです。この幸せに、亀裂が走ってしまうのを……皆さんと、貴方と、引き離されてしまうんじゃないかと…」

「……させません。この私がいる限り、私が貴女様のお側にいる限りは。もし、貴女様と私が離れてしまっても…私は必ず、貴女を見つけましょう




 ――――どんな事が、あっても」








幸せなんて、たった一時にしか過ぎない


ずっと幸せの日々が続くわけがない






「この幸せが、仮初であってもしても…私は願い続けたいのです」






人の運命は仕組まれている




楽しい事、嬉しい事


悲しい事、辛い事





人間の寿命の中に、それらはランダムに仕組まれて、人間はその中で生活をしている





楽しい事があれば、辛い事がある


悲しい事があれば、幸せな事もある






それは、同等


それ以上もそれ以下も、ない












そんな急速な流れで、


短過ぎる寿命の中で、




人間の幸せは、たった一時にしか過ぎない










「私は……使命など関係無しに、皆さんの為に、自分の為に…この幸せを、けして崩させはしません」









"幸せになりたい"


それは、ずっと願っていた事






「…私が幸せになる第一歩に、ちゃんと私の隣にいて下さいね…"  "さん」

「ずっと、お側にいます」











この平和を壊してなるものか


この幸せを崩してなるものか


皆の笑顔を無くさせてなるものか







それは、【私】も、私自身も


気持ちは、一緒に―――

































「……う…?」

「フー」

「あれ…アブソル?」

「フー」





目が覚めると隣にはレンの手持ちのアブソルがふせの状態で座っていた

蒼華と違いフワフワと毛並みがあるなぁ、と思っていたのはアブソルのお腹で、どうやら私はアブソルの腹に寄り掛かっていたらしい。こちらを振り向き擦り寄ってくるアブソルの頭を撫でながらゆっくりと起き上がる






「此所は…アサギの灯台?」






見た事ある景色


アサギの灯台が見える此所は――あぁ、懐かしい。ミカンさんと対戦を終えて休憩した場所でもあり、レンと再会した場所でもあった。見晴らしの良い此所は潮風が心地よく、見渡す海がキラキラと輝いている






「アブソル、ありがとう」






随分と眠ってしまったみたい

お蔭様で疲れはある程度取れた。けど寝起きの怠さは残っていて、まだ寝れるのが正直の本音

立ち上がる私にアブソルは労る様に擦り寄ってくる。微笑みながら撫でているとある事を思い出した






「…あれ、レンは?」






普通なら、いるはずなのに


隣に、近くに、レンがいない



腕にある白銀の腕輪は何も反応がない。近くにいないのはよーく分かっている。回りを見渡してみるが当たり前にレンは見えない

アブソルに視線を向けると、こちらを無垢な目で見つめてくる……が、私は見過ごさなかった






「アブソル、レンは何処?」







アブソルは、レンを心配している


何故、レンがいなくてアブソルがいるのか。どうして、アブソルが動揺しているのか



―――嫌な予感が、した









「……優しいレンの事だから、私をバトルから外して後で合流しようと思っているんだろうね」

「フー…」

「相手は、ポケモン?」

「フー、フー!」

「(…時杜、)」

《ポケモンで、強い。僕とエルレイドのサイコカッターを防いだ、姿が見えない敵だった》

「フー」

《エルレイドはやられてスイクンで戦っている。スイクンがいれば大丈夫だと思うけど…でも、相手は強い》

「…見えない敵、強い……!?」






私の頭の中に過ぎった姿



……どうやら嫌な予感は的中したらしい






「行くよアブソル!とりあえずレンの所に戻るよ!」






何故、あの子が出て来たのか


何故、レンの前に現れたのか





急いで元の道に向かおうと足を踏み出そうとした時、丁度こちらに歩み寄る気配を感じた

サクッ、サクッと草を踏む音も聞こえて私とアブソルは振り返った。こちらにやってくる気配の元を視界に入れたアブソルはびっくりした表情を浮かばせ、私も目を張った






「あ、貴方は……!?」







(私には、分からない)



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