そんな事言っても、分からねーのに


俺は、今更何を言い出すんだか






「無防備、だな」






レンの肩に頭を乗せ、全てを預けて眠っているミリ

瞳を閉じるその顔色は、少しずつ赤みを引いていく。ぐったりしているのを見ると、やっぱり無理をしてたのがありありと分かった。エンジュまでは大丈夫そうだったが、どうやら日光に体力を削れたらしい



…仮にもミリは元病人

普通ならもっと療養しなくてはいけない身。しかも目が覚めた後も休まずにジョーイさんの手伝いとかもしていた。レン自身、自分の症状でミリを結構振り回してしまった所も何度かあった。…無理しない方が、おかしい


そう考えると本当に申し訳ない気持ちに駆られてしまう

レンの症状…いや、レンの我が儘に近い強引でミリを振り回し、ポケモン達に妙な気使わせてしまった事もあった。悪い、と思っていても身体は意思と反しミリを腕に抱き留めてしまう。しかし優しいミリは嫌がる事はせずに受け入れてくれていた。それがどれだけレンを救って来たか、今眠っているミリはその事を理解しているのだろうか






「…すー……ぴー…」

「…可愛い寝息だな」

「すぴー…」






最近になってミリは少しずつだけど、レンに甘える仕草を見せてくる様になった。前まではポケモン達に向けていたそれが、今では自分にも向けてきてくれる。それがなによりもレンを嬉しくさせ、また調子をこかせる原因にもなっている。…質が悪いのが本人はその事に気付いていない←おい

一か月前、前に一回位あったがこんな事は無かったし、同室でも…何もなくても一緒に寝ているなんて昔の自分達が知ってしまったら…一体どんな反応を示すのか(確実に、唖然とするに違いない






「変わったな、俺も…」






コガネを発つその前日にやって来たマツバとミナキの言葉を思い出す

あの台詞は少なからずレンの心に衝撃を与えていた。同時に納得した。納得したからこそ、何かが吹っ切れる事が出来た




――昔の自分は誰か一人に執着し…ずっと一緒に居たいだなんて、思った事がなかったからだ









ずっと、一緒に居たい

ずっと、一緒に笑いあいたい


今まで感じた事がなかった感情が、身体を満たしていく。症状とか関係無しに、ミリに触れたい欲望が…ふつふつと支配する

近くに居るだけで心は安堵をし、安定する。こうして抱き寄せたり抱き締めたりすれば、この上ない幸せを感じる

……それだけで、満足





レンはおもむろに腰からモンスターボールを取り出して、軽く投げ付ける

そこに現れるのは、自分の相棒で最も手持ち歴が長いエルレイド。静かにこちらを見据えるエルレイドに、レンは言葉を投げ掛ける






「エルレイド、お前とは俺がまだトレーナーになる前からのつき合いだ。お前は…俺の手持ちの中で一番の古株で、ずっと俺の隣にいてくれた」

「エル」

「なぁ、エルレイド…」










俺だけ幸せになっても、いいのだろうか――…‥?

















エルレイドが返事を返す前に、何かの気配を感じた





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