自然公園に入る頃にはトレーナー達の姿や、ポケモンの姿、一般人の方達が仲良くウォーキングしている姿がちらほらと見えた

中にはポケモンバトルをして盛り上がりを見せている所もあったが、そこ以外は殆どがのんびり平穏だった






「久々だね。自然公園」

「そうだな…」






自然公園に入った、私達

あの日の事件から結構経ったけど、相変わらず自然公園は平穏で変わっていなかった






「…あの日から二週間か」

「あぁ」






今は此所はのんびりと静かな公園になっているけど、私が倒れたあの日から…少し騒がしかったらしい

現場検証の為に一時閉鎖になったり、野次馬がぞろぞろとやってきたり、それを取り締まる警察だったり…むちゃくちゃ騒動になってんじゃん、と話を聞いた時ついツッコんでしまった記憶がある

聞けば、あの時戦った場所は元の形に戻っているらしい。記憶が正しければ、相手のがんせきふうじで現れた岩と蒼華の(怒りの)ふぶきで氷結され、すんごい状態だった気がする。それにプラス、私の血も(血の池だったよーな…)。それが元に戻ってるだなんて……なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだ←






「結局、どうなったの?」

「…お前を散々な目に遭わせた奴等は自首してきて、かなり反省しているという理由で一件落着だ」

「そう」






軽い返事を返した私に、レンはちらりとこちらに視線を向ける






「……悔しくねーのか?」

「?どうして?」

「理由はともあれ、あんな目に遭わせた奴等だぞ。…悔しいとか、憎いとか、そんな気持ちは無いのか?」

「……レン」

「少なくとも俺は、はいそうですか、って思わなかったな。自首してきた?反省した?…ふざけるな。だったら最初っからんな事するんじゃねーよ、…ってな」

「………」

「警察に自首してきたなら、奴等はそこにいる事は確かだ。…一発ぶん殴りに行こうかと思った時があったな」






そこまで言い終えたレンは、近くにあるベンチに気付く

そのベンチは誰も座ってはいなかった。レンは私の手を引いてベンチに向かい、私を座らせる

静かにレンを見上げる私に、レンは小さく笑う






「…けど、そんな事しても虚しいだけだ。俺がスッキリしても、お前はスッキリしねぇし…その時殴っても、お前は、ミリは目覚めねぇ」

「……」

「…悔しかったぜ。何も出来ねぇ俺は、テレビの前で怒りに震え上がる事しか出来なかった」

「……」

「それに、ミリはんな事してもしなくても最初っから望まねぇと分かっていたしな」

「レン…」







私の前にしゃがみこみ、優しく微笑むレンに、私は安堵の吐息を零す

私も微笑んで、未だ繋がれているレンの手をキュッと力を込める。視線を手に向けるレンに、私は言葉をかける







「私自身、そんな寛大な心を持ち合わせていないし、私にもちゃんと心はある」

「ミリ…」

「人間、間違いは誰だってする。間違いを、いかにその正しい道に繋げられるかが、今彼らに課せられた課題。この先また、同じ過ちを繰り返さなければ良い」

「……」

「……何も思わない、って言ったら嘘になる。私はあの時…悔しいよりも、憎いよりも……悲しかった」

「…ミリ、それは」

「人は自分が有利になっていると分かると、優越感に浸り、見境が無くなる。…今回がそれだね。彼らは三人という人数で、いくら聖燐の舞姫だと言われている私を人数で捩じ伏せる。ポケモンを使い、自分が優先だと分かると、それこそ回りが見えなくなってくる」






回りが見えない程、人は変貌をする


私を見る彼らの目は――草食動物を捕らえる狂喜に満ちた捕食者だった






「……それが、すっごく悲しかった。ポケモンを傷付ける道具にした事が、自分というモノを忘れてしまった彼らに」

「ミリ…」

「…分かっていたけど、やっぱりそういう一面を見ると、人って恐ろしいなって思うんだ。…勿論、誰もがああいう人じゃないのも分かっているよ」






腕を伸ばし、レンの白銀の髪に触れる

朝日でキラキラ輝く白銀を、レンの頭を撫でる。形良い頭はとても撫でやすく、心地が良い。黙って私を見るレンに、私は小さく苦笑を零す






「…お前の眼は、人の善をよく見る反面、人の悪さも視えてしまうんだな」

「それは人それぞれ、かな」

「…少なくとも、俺はあんな奴等じゃねーからな」

「知っている」










それは良かった、と笑うレンに、私も笑った






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