ミリが立ち去ってからしばらくするとぐったりとした三人の姿があった。互いに荒い息を吐いて睨み合い、やがてドカッと待合室にあるソファーに座った それからマツバとミナキはヨノワールとスリーパーをボールに戻し、レンもアブソルをボールに戻した。三人の手持ちではない黒恋は回りにミリがいない事に気付く。しばらく考えると、ピョーンとミナキの膝の上に乗り身体を丸める。どうやら黒恋はマツバやレンよりミナキに懐いている様子だ(ちなみに白亜はイケメンな二人に← 「ミリちゃん…元気になって本当に良かった」 「レンも前と比べて調子も戻って来たみたいだな。前より全然マシになっている」 「…あの時、俺は俺じゃねぇみたいに感じたな…。そりゃそうだな、はっきり言って眠れねぇし食欲も減っていたしな」 「………そうか」 ミリが倒れたと知って、タイミング良くレンから連絡を受けたあの時 映像で映ったレンは、弱々しい印象を受けた。げっそりしていて、くまも少しあった。一体何があったかはテレビのニュースである程度聞いていたから深くは聞かなかったが、その時のレンに危機感を覚えた。今はこうして元気良くバトルを仕掛けて来たが、実はミリが目覚める寸前はえらい状態になっていたなんて、二人は知らない 「…ミリが目覚めてくれて、今やっと安心している。医者も大丈夫だと言っているし、本人も(勝手に)変装(なんか)して手伝いしているからな。…本当に、元気になってくれて良かったぜ」 いつものニヒルな笑みで、レンは言う マツバの目からも、ミナキの目からも見て、レンは今が幸せだと主張していると言わんばかりな笑みを浮かばせていた マツバとミナキは互いに見合わせ、レンを見る。しばらく沈黙が続き…それから二人は盛大に吹き出した。もちろん笑っていたレンの顔がすぐに眉間に皺が寄り、不機嫌そうに二人を見た 「んだよいきなり人の顔見て」 「いや…すまない。特に意味は無い、が…」 「敢えて言うなら…そうだね。初めて出会った時と比べて、今のレンの雰囲気が柔らかくなっている。…レン、君は変わったね」 「………」 二人の言葉に、不機嫌そうに見ていたレンの瞳が開かれる 「…自分では気付かないもんなんだな。……そうか、俺は変わったか」 「あぁ。お前は変わった。変わったのはお前がカントーに行った時…即ちそれはミリ姫と出会ってから」 「僕らが初めてミリちゃんと出会った時も…レン、君はやっぱり変わっていた。…僕らが初めて出会った時の君は、本当に一匹狼だった。人との交流はしても、人と関わるのを拒んでいた君が、ね」 「私は嬉しく思うぞ。レン、私達といる時より――ミリ姫と一緒にいる時の方が、レンらしく輝いているぜ」 「……そう、か」 しばらく二人を凝視していたレンだったが、フッと小さく笑い、髪の毛をかきあげた マツバとミナキはまた互いに顔を見合わせ、今度は吹き出す事はせず静かに笑った。レンも二人が笑っている事に気付くと、今度は不機嫌な表情にはせず、同じ様に静かに笑った 「ミリちゃんから聞いたよ。明日の早朝には此所を出るそうだね。次は何処を旅するんだい?」 「タンバかチョウジ、どっちに行きたいのかをミリに決めてもらって、後は自由に旅するつもりだ。…色々あったからな、ゆっくり旅がしたいもんだ。…ミナキ、俺とミリがいくらスイクンを持っていても絶対にストーカーとかすんなよ頼むから。後は水を差す様な真似はするなよ」 「誰がするか!私だってこれてもしっかりと空気は読めるぞ!」 「どーだか。以前お前にはマジ空気読めねぇ事されたからな。次なんかあったら本気でスイクンにぜったいれいどを……」 「ねーねーそこのねーちゃん!可愛い顔してるねー、ジョーイちゃんのお手伝い〜?健気だね〜えらいえらい!」 「そうだな〜、マジえらいよな〜、可愛いよな〜。よし、そんな可愛い子に奮発して飯奢ってあげるよ〜」 「おー、優しいなぁお前〜。よーし、俺も奮発して君に何か買ってあげるよ!俺って優しいなぁー」 「…………そう、あんな風にせっかく頑張ってせっせと手伝いしているミリにあーやってチョッカイ出して気を引こうとする馬鹿な男共とかにそれこそスイクンのぜったいれいどを食らわすのに充分n…」 「は、早まるなレン!何がなんでも人をあの世に送る様な事はするなよ!?いやむしろあんな奴等の為にスイクンを使うなスイクンを!逆にスイクンが汚れてしまうではないか!!」 「ミリに軽々しくチョッカイ出した事…その身に刻み付けてやるぜ…!」 「今この場にいる者すぐさま避難するんだ!!!」 「……レン、やっぱり君は変わったよ。一匹狼もそうだったけど、誰かの事であんな風になるなんて…昔の君が見ていたらどう反応するんだろうね」 (とりあえず暴走する前に一発みねうち) |