「うーん…甘えろと言われても…一体どう甘えるべきか…あー、悩む…」

「フー」

「……んな難しく考える必要ねーだろうが。赤ん坊でも出来る事を今更考えるなよ」

「Σレン!?居るなら言ってよしししし心臓にわわわわ悪……!!////」

「(面白いな)…フッ、簡単な話だじゃねーか。今アブソルがお前にやっている事が、"甘える"だろ?」

「フー」

「お!」

「……だがなんかムカつくからアブソルお前はボールに戻ってろ」

「フー!?」

「えええええ!?」







―――――――
―――――
―――











腕の中にいる確かな存在は


こんなにも、弱々しい






「………」





布団の中の温かい温もりに包まれながら、自分の腕の中にいる存在は静かに眠りについている

美しい顔立ちは何処か儚げに、しかしとても愛らしい。温もりを求めて小さく身動ぎしてくるので、もっと抱き寄せればすんなりと身体を預けてくる。胸板にくっついた存在は、おもむろに腕を伸ばして空を彷徨わせる。小さく笑いその手を取って握ってみれば、向こうも小さく笑い握り返す

白いベッドに、縛っていない髪が無造作に散らばっている。一本一本掬ってみると、止まる事を知らずにスルスルと手を抜ける。艶のある髪の触り心地は最高だ。普段はきちんとポニーテールでキメていて、しかも中々こうして触る事はなかったから。……なのに今こうして触れる事が出来る。そう考えると嬉しくて口元に笑みを浮かばせてしまう






「ミリ、そろそろ起きる時間だ」

「……ん、」






近くにある時計を確認したレンは、か弱い存在を小さく揺さぶってあげると、ミリはその瑞々しい唇から吐息を漏らしながら身動ぎする。まだ起きたくないそうで、瞳を開ける事はせずモゾモゾとレンの胸板にくっついて小さく丸まる。さながら、その姿は猫の様だ

レンは腕の中でさらにくっついてきたミリに苦笑を漏らし、頭を優しく撫でてあげる






「………ん〜…」

「ミリ、」

「…、いや…」





起きる事を拒むミリは、レンの言葉を嫌がる仕草を見せる。今度は腕を伸ばしてレンに抱き着いてくるから、流石にこれにはレンも面を食らう(その時感じた柔らかい感触は…この際気にしない方向で)。しかし前まで無かった一面に、自然と心が踊ってしまうレンでもあった

自分に絡み付く細い腕を解き、その細い身体を静かに抱き寄せる。抱き締められた本人は完璧に眠りについていて、レンは困った様な、それでいて嬉しそうな表情でミリを見る






「……ミリ、早く起きないと朝のキスをしちまうぜ?」

「……スー…」

「…そうか、そんなに眠いのか。なら前みたいに冗談無しで遠慮なく口塞がせてもらうからな」

「………んっ」






ちょっとした、悪戯心

前までは冗談でもしなかった。一回でもしてしまえば、相手を想って歯止めを利かせていた抵抗は脆く簡単に崩れ去る。三日月に笑うソレは、意図も簡単にその瑞々しい唇を塞ぐ

最初は軽くキスを落とす。しばらく柔らかい感触を堪能した後に、今度は深くキスを落とす。流石にここまでされれば眠っていた本人は嫌でも覚醒をしてしまう。閉じられていた瞳はゆっくりと開き、やがて状況が分からず目を大きく張ってレンを凝視する。同時にビクッと身体を揺らしレンと距離を置こうとするが、既にレンの腕は一本でも簡単にホールドしているせいで、されるがままに

口を離せば一本の糸

熱い吐息と紅潮した頬を浮かばすミリに、レンはニヒルな笑みでまた一つ、キスを落とした






「よぉ、ミリ」

「…っ////、朝っぱらから…!」

「起きない方が悪いだろ?…それにお前があまりにも可愛かったから、つい」

「Σ!?////」







口を押さえ、先程からリンゴの様に真っ赤になるミリに、レンは笑う

またもう一度仕掛けようとしたがもの凄い素早さで避けられ、しばらく鬼ごっこが続いた←









台所では黒恋が腹を空かせて倒れてた(気付いたのはそれから数分後





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