フィンとリランの必殺技を打破った私とレン。バトルがこちらが有利に見えたのだが、意外にも彼らの立ち直りは早かった





「アブソル!もう一度アイツらに向かって切り刻め、かまいたち!」

「白亜、アブソルに応戦するのよ!かげぶんしん、そしてマジカルリーフ!」

「チルタリス、光りを溜めてゴットバード!」

「キレイハナ、チルタリスを守るのよ!全てを弾き返しなさい!はなびらのまい!」






アブソルがまた風を呼んでいる中、白亜はアブソルを守る様に立ち、かげぶんしんを試みる。数体に分裂した白亜はそのまま尻尾を大きく振り、そこから大量のマジカルリーフを弾き出す

先程みらいよちを受けてダメージを受けたであろうチルタリスはそれを見せず、光を吸収し始める。キレイハナは吸収中で動けないチルタリスを守る様に回りにはなびらのまいを降らす

白亜のマジカルリーフとキレイハナのはなびらのまいがぶつかりあい、花なのに金属音を鳴らしながら相殺されヒラヒラと力無く宙を舞う。光が溜まったチルタリスが花の間から姿を見せ、同じく風を呼んだアブソルも姿を見せる。すぐさま白亜は後退し、キレイハナも後退すればチルタリスは大きく翼を広げると光を放ちながら飛び立った。高く高く飛び上がったチルタリスは真っ直ぐにアブソルに降下してくる。アブソルは向かって来るチルタリスを見上げ、その頭に付いている刃を振り上げれば呼び集めた風の刃達が真っ直ぐにチルタリスに向かって行った


風の刃は容赦無くチルタリスに傷を負わせる。チルタリスは傷を負えてもなおアブソルに向かって突撃…する一歩手前で身体に纏う光は失い、悲痛な叫びを上げてチルタリスは地面に落ちた






「チルタリス、戦闘不能だな」

「チルタリス!」






フィンが声を上げてもピクリとも動かない

目はクルクル回っている

……戦闘不能だ






「なんて事…!」

「余所見なんて出来る余裕があるのかしら?今貴女の相手は私達よ。白亜、れんぞくぎり!」

「ハナァアッ!!?」

「っ!あぁ!キレイハナ!」






リランとキレイハナが倒れたチルタリスに目を向けていた隙を見て私は白亜にれんぞくぎりを命ずる。瞬時に白亜はキレイハナの懐に入り、葉っぱの形に近い尻尾を光らせキレイハナにぶつけた

れんぞくぎりは虫タイプの技。草タイプは虫タイプに弱く、そしてリーフィアは元々攻撃力が強いポケモンな為、キレイハナを簡単に突き飛ばす

ズシャァアアッ!とコンクリートの上にスライディングを決め込んだキレイハナ。その目はクルクルと回っていて、そこで勝敗はもう決まった様なもの同然







「キレイハナ、戦闘不能ね」

「この勝負、俺達の勝利だな」






手に持つ扇を開き口元を隠しフフッと笑う私に、フッと(見下した様に)(ひどっ)笑うレン

目の前に佇むフィンは静かにボールを取り出しチルタリスをボールに戻し、リランはキレイハナに駆け寄り抱き上げる






「…この私達が…まさかこうも早くにバトルが終わってしまうなんて…」

「完敗だ。…私達の負けだ」






素直に敗北を宣言したフィン達

それを聞いて観客から声援が上がる

私が指を鳴らせばリーフィアだった白亜の姿が元のイーブイに戻り、白亜は嬉しそうにピョンピョンと跳ねる。隣りにいるアブソルもイライラを解消出来たらしく、清々しい表情で欠伸をした(え

チラッとレンを向ければ丁度こちらを向いたレンと視線があう。しばらく見つめあった後、お互いに笑い、ハイタッチを決めた






「やったな、ミリ」

「やったね、レン!」






レンの白い手袋と私の黒い手袋が良い音を放ち、余韻を残す

回りからは拍手が沸き起こり、白亜とアブソルがこちらに帰って来る。私の胸に飛び込んで来た白亜の頬にキスを落とせば白亜も私にキスを落とす。可愛いなぁもう!とニヤニヤしながら白亜を撫でていれば、レンに頭を撫でられているアブソルが物欲しそうな目でこちらを見ていたのに気付く

白亜を抱き上げたままアブソルに近付いて、屈む。キョトンとこちらを見るアブソルに笑い、頭を撫でながら頬にキスを落とす。パチクリと目を点にしたアブソルだったが、今度は嬉しそうに私に擦り寄って来たので(心の中で萌ーー!と叫びながら)アブソルを撫で返す






「お疲れ様。白亜、アブソル」

「ブイ!」
「シャー」

「気分はスッキリ?」

「ブイ!」
「シャー」

「そっか、それは良かった」






時杜の通訳を聞かずとも、二匹の言いたい事が分かる。私も二人のお蔭で鬱憤がかなり解消されたから気分はいい感じだ

ありがとう、そう言い二匹をもう一度撫で、ボールを取り出し白亜を戻す。それを見てレンもボールを出してアブソルを戻す

ボールを異空間に戻した私は立ち上がり、レンに振り返る

さぞレンも気分爽快な表情をしているに違いない!




…と思ったけど、何処かレンの表情はつまんなさそうな顔をしていた







「?レン?どうしたの?勝てて嬉しくないの?」

「……、ミリ」

「ん?」

「アブソルにはそれをして、俺にはしないんだな」

「……………、はい?」






………おいおいおいおい

今この人なんて言った?



目を点にしてレンを見る私。絶対今私の顔は滑稽に違いない。レンの言葉を頭に叩き付けるのに時間がかかり、らしくないレンの台詞に目を凝視させてしまう

対してレンの方は腕を組み、ふてくされた顔をしてこっちを見ている。ニヤニヤもしていない所を見ると、冗談は確実に言っていない

………えええええ…






「…頭、だいじょーぶ?」

「至って正常だが?」





大丈夫な人はそんな血迷った事は言わないと思います





「で、もちろんしてくれるよな?」

「あはは、本当に頭だいじょーぶ?」

「姫の為に今日も一肌脱いできたってのに報酬も何もねーんだなんて、な?」

「おっかしいな〜そんな話になっているなんて聞いていないんだけどー」






扇で扇ぎながら笑顔で返す私の内心はもう滝汗だらけ←

いつもの調子で話し掛けて来るレン…だけど、うん、やっぱり何処か不機嫌で言葉という言葉が若干マジな感じを漂わす…!

しかも近付いて来る辺りこれは私は逃げた方がいいのかしらとかなりの危険が迫っている←






…と、その時だった








「………ちょっと、私達の目の前でイチャイチャしないで頂戴よ。見ていてこっちが恥ずかしいわ!」

「呆れてモノが言えないぞ」






いつの間にか私達の前で呆れる顔でこちらを見ているフィンとリランの姿があった(観客は苦笑していたり笑いながら帰っている姿がちらほらと

二人の登場に驚きと、良い所に入って来た事に私は初めて二人に感動する(←)。対してレンは「あ"ぁ?」とこれまた不機嫌そうに二人に振り返る(こえぇええ!






「なんだお前らまだいたのか。つーか邪魔するな俺に取っては死活問題だ。さっさと敗者は帰りな」

「Σそんな事が死活問題!?」

「……そんな事だと…?」






私のツッコミがピキッと来たのか二人の前なのに構わず私の手を掴み、引き寄せる(私最近このパターン多いなぁ…)。慌てて離れようとするが、力は当たり前に強いからビクともしない(あぁあああ二人の前でぇえええ!)

見上げるレンの表情はまさに不機嫌そのもの!いやいやいやいや何故!?顔を真っ赤にしレンから視線を逸らし、ヘルプを求めて二人を見る。助けてむしろ助けろ!←

二人は「「はぁ…」」と溜め息を吐いていた






「…やれやれ、このカップルもほとほと困ったものだ」

「本当ね」






フィンとリランはこちらにツカツカと歩み寄って来る、……と思ったらフィンはレンの肩を掴みグイッと力を込め、リランは私の腕を掴み引っ張った

意図も簡単に離れる私とレン

おっと、と躓きそうになる私にリランは支える。ありがとう、と小さく呟くとリランは小さく微笑み返してくれる

その時、バシンッ!とフィンの手をはたくレンの姿があった






「…どうやら私はかなり嫌われてしまった様だな」

「…………」

「(レン……?)」






フィンを睨みつけるレンに、困った笑みをこちらに向けるフィン。リランは驚きで目を張り、私もレンを見る


毛嫌いするには、尋常過ぎる

今のは、少し酷いのではないのか




そう思い、レンに声を掛けようとする前にはフィンがリランに言葉を掛けるのが早かった







「リラン、彼女を」

「分かったわ。さぁ、聖燐の舞姫!こっちよ!」

「え?…わわっ!」






リランがフィンの言葉に頷くと、私の手を取って走り出した

互いのヒールの音が無駄に響き、ドレスを靡かせ、まだいる観客達の間をすり抜けて行く。リランの名前を呼んでも一向にこちらを振り向かないので、私は何が何だかサッパリ分からない。ただ分かるのは私の手を取るリランの手から感じる感情は焦りだった






「ミリ!」







何故か私を呼ぶレンの声が悲痛な叫びに聞こえた気がした









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