「あー…やっぱり駄目だ気に食わない。なんだかなぁ、自分で自分を着飾るのってやっぱり苦手だなぁ…。髪はもうちょっとこうしてあーして…うんぬんかんぬん」 「よーミリ。もうそろそろいいか?つーか入るぜー(メタモン押し退ける)」 「Σレン!?まだ良いよだなんて言っていないんだけど!?(いやいやそもそもメタモーーン!!)」 「………へぇ…」 「…うっ…ちょっとそんなジロジロ見ないで……!やっぱりさっきの言葉撤回して…!やっぱ無理だよ…!」 「何そんなに弱気になってんだ。誰も変だなんて一言も言ってないだろーが。…むしろ、似合ってるぜ?ミリ」 「………似合ってる…?」 「似合ってる」 「本当に…?」 「あぁ。…本当だ」 「…レン」 「ミリ…」 「…もうその時点から芝居に入ってしまうんですねあの二人は」 「メタモ〜ンありがとね壁になってくれて。はい、お礼に特製まろやかポフィン。皆と分けて食べてね」 「メタ〜」 ――――――― ――――― ――― ― コガネシティの近くにある自然公園は普段ならこの時間はあまり人通りが少ない筈なのに、今日は多くの人で密集し、賑わっている 広場の中心を囲む様に中に円ができ、その中央に堂々と立っている男女二人の姿があった。二人は同じ純白に身を包み、一人の男は白馬の王子様の様な格好をして一人の女はお姫様の様な格好をしていた。男のマントと女の薄いベールが風に靡き、太陽の光で男の茶髪と女の金髪がキラリと一際色を魅せる フィンとリラン―― 二人は野次馬と言ってもおかしくない集団の中央で、回りに怖気づく事無く時が来るのを待っていた 「フィン、貴方は今どんな気持ち?」 「楽しみでたまらないさ。リラン、君はどうだ?」 「えぇ、もちろん。私も楽しみでしょうがないわ」 コーディネーターを目指して、互いに手を組んでから戦いで負けた事がなかった 始めは嬉しくて、一生懸命頑張ってトップを目指していた。コンテストに優勝するたび二人で勝利を分かち合い、日々修業に明け暮れた時もあった しかしいつの日か勝つ事が当たり前になっていき、この日常がマンネリ化していった 「……聖燐の舞姫…」 「気になるか?」 「えぇ。…私はコンテスト、あの人はポケモンバトルという趣向は違っているとしても…もしかしたら、」 私達は、良きライバルになれるかもしれない この地方に来てから知った、【聖燐の舞姫】という存在 まるで舞を踊る様な戦い方をし、そして今も負け無し敵無しを突き通しているそのトレーナーに、リランは自分と同じだと話を聞いた時に過ぎった 逢ってみたいと思った トレーナーとして、一人の女として このコンテストショーをより一層盛り上がらせる為に声を掛けた人が、まさかあの聖燐の舞姫だとは思わなかった 話の通りの容姿を持つ彼女と、隣りにいる彼女と引けを取らないくらい凛々しく立つ彼 言葉は悪いかもしれないが、本当に格好の的だった。お蔭様でショーは大成功で、こうしてあの二人のバトルを今か今かと楽しみにしている観客達で溢れ返っている 「フィン、貴方こそ――あの凛々しいお方と良いライバルになれるかもしれないわね」 「…リラン、君は気付いたか」 「えぇ、もちろん気付いていたわよ。…あの凛々しいお方、格好は違っていても――あの髪と瞳は嘘を付けない」 聖燐の舞姫の隣りにいた男 白銀の髪が一際目立ち、凛々しく整った顔に全てを見抜き見透かす様な鋭いピジョンブラッドの瞳を持つ男 フィンとリランは気付いていた 彼が彼女を見る瞳の色も、彼が彼女に依存しているのも 彼が、一体何者かを 「彼は彼女に自分の事を話していないみたいだな」 「あら?それはどうして?」 「私が彼に挑発を吹っ掛け、手をはたかれたのは覚えているかい?――あの時、それに似た言葉をかけたら…彼に、睨まれたのさ。それで私は気付いた。あぁ、彼は隠しているんだな、って」 理由は聞かない 何故彼が此所にいて、何故彼女と一緒に行動して 何故彼女に何も言っていないのか それは彼自身の問題なので深くは聞かないし、興味も無い。それこそ今回のバトルと関係が無い 「――彼が何者であっても麗しい方があの聖燐の舞姫だとしても…リラン、君がいれば私達は負ける事は無い」 「えぇ、もちろんよフィン。私達はいつも通り、楽しく舞いを踊るだけよ」 「へぇ…俺達、結構見くびられているみたいだぜ?ミリ」 「フフッ。そうみたいだね。レン」 上から突如、声が響いた → |