不思議な力があるとして疎まれ忌み嫌われ、魔獣の生け贄として捧げられた私。捨てられたと言ってもおかしくはない私には、誰も信用できる者達なんて存在しない。生まれた時から人らしい扱いをされた事が無い私には、結局こうなる事は分かりきっていた。今この世界は、魔獣達の戦いで荒れ放題で、私達人間は被害に遭わない様にする為に必死に生きているだけ。目をつぶっていても、この島以外の光景なんて嫌でもしっかり見えてしまっている そんな、最中だった 「ねぇ、どうして貴方は私の所にわざわざ訪れてくれるのですか…?」 私一人だけ孤立されている島に、わざわざやってくる人が一人いた 周りは荒れ放題なのに、魔獣の戦いで危ないのに、この人は、彼は、毎日の様に私の元へと足を運んでくれた 長く靡かせる白銀の髪は太陽の光で反射され、私を写すその紫色の瞳は……初めて私に向けられる慈愛の色 生まれて、初めてだった 「―――それは、全ては貴女様の為ですから」 初めてだった 私を優しく語りかける声色も 私を包み込むその温もりも 私には、彼がとても眩しく見えた * * * * * * 目が覚めたら イケメンな顔が三つありました 「よぉ、ミリ」 「ミリちゃんおはよう」 「おはようの時間じゃ無くなったけどな」 「………あらー?」 私を取り囲む様に顔を覗いている、三人の姿が 俯せで寝ていてまだ寝足りなく頭がぼーっと三人の顔を見上げる私に、三人は顔を合わせ笑う。未だ状況が分からない私はとりあえずのっそりと起き上がる事にした 「…………おはようございます…」 「あぁ、おはよう」 「今何時ですか…?」 「もう10時だよ」 「…………おやすみなさい…」 「Σコラコラ!」 掛けてあった布団の中にもぞもぞと潜り込む私にマツバさんのツッコミの声が聞こえる なんだよー 私は眠いんだよー 昨日は夜が遅くて朝なんて早かったんだぞチクショウ てーことでおやすみ! 「…………Zzzz…」 「…寝てしまったな」 「…なんだかカラサリスみたいだね」 「どうするんだ?」 「……どうもこうも、コイツが目を覚まさなきゃ旅なんて出来ないだろ」 掛け布団を自分の身体に巻き付け、もぞもぞと丸くなるその姿はまさにカラサリス。レンは溜め息を吐きながら丸まるミリをポンポンと撫でる ミナキは苦笑を零しながら、同じ様に丸まるミリにポンポンと触れる(しかしすぐにレンに叩かれる)(そして睨み合いが起こる)マツバも苦笑を零すが、良い事を思い付いたのかレンに言う 「良い事を思い付いた。レンが先に行ってミリちゃんがまたもう一泊泊まればいいよ。僕は全然構わないさ」 「おぉ!それは良い名案だなマツバ。レン、マツバの言う通りに言葉に甘えて先に行けば良いさ。私達はまたミリ姫の手料理を食べるつもりだ」 「断る」 またもやギロッと睨みつけるレンに今度は二人して(声を押さえて)大爆笑。レンは怒りに震えながら二人を睨み続け、それを遮る様にレンは視線を逸らし、ミリを見る 布団にくるまり、既に物体化しているそれにレンは苦笑を零すしかない 「昨日は、無理をさせちまったな」 ある意味初めて見るミリの一面に自然と心が穏やかになっていく。いつも見るミリは確かに完璧だが、何処か無理をしている様にレンは見た。それはミリが心を開いていない証拠だと、分かっていてレンは気付かない振りをしていた でも、今回は本当に意外な一面を見れたのは…かなりの進歩だろう。先程見たミリの笑みは、いつも見る綺麗な太陽の笑顔とは違う…レンにはその笑顔がミリ本来の笑顔にも見えた そんな事を思いながら、ふと視線を元に戻す。アレだけ爆笑していた二人が、急に大人しくなったからだ。視線を向ければ、そこにはワナワナとボールを握り締めるミナキに、かなり笑顔なマツバ(しかし背景にはポケモン達)がレンを睨み付ける様に見ていた為、流石にレンは二人の異様さにかなり引いた 「…おい、なんだよお前ら」 「レン……貴様と言う奴は…!見損なったぜ!」 「は!?」 「こんなにまでミリ姫を疲れさせる程、お前は…!そもそも八つ当たりなどミリ姫の身を案じれば貴様はやはりずっと嫌われていれば良かったんだ!」 「なんとか喰わぬは男の恥って言うけど…レン、君は一度地獄を見るべきだ!」 「いや、ちょっと待てよお前ら落ち着け!…つーか誤解してるだろ!?俺が何時ミリに手を出したって言うんだよ!……っておいおいお前らマジで此所でポケモン出すなよ!ミリが起きる!」 「だったら今の台詞を説明して貰おうじゃないか!フーディン、サイケこうせん!」 「野蛮な男に可愛い妹は渡せないね!お兄ちゃんは可愛い妹の為には修羅になるさ!ゲンガー、ナイトヘッド!」 「人の話を聞けーーーーッ!!!」 「(…うるせー)」 起きたくてもタイミングを失い、布団の中で顔を赤くするミリの姿があった 「(いいや、もう一度寝よう…)」 しばらく戦闘は続いた → |