「ブイィィ…Zzz…」

「ブゥゥ…Zzzzz…」

「……Zzz」

《Zzzz…》

「……く…くるしっ、Zzzz…」








「……ちょっと待てこの状態は一体どうしたんだんだよ」

「完璧に熟睡しちゃってるね」

「あそこまでいくと逆に清々しいな」






朝日が昇り、空気はカラッとしている清々しい朝。生き物が目を覚まし活発に動き出す朝、エンジュシティにある古い屋敷のとある部屋にてそれはあった


目の前にあるのは敷き布団の上に倒れ込む様にして折り重なっているトレーナーとポケモンの姿がそこにいた。いつも整っていた長い艶のある漆黒の髪は何故か一匹の黒いポケモンに絡まって締め付けてしまっている。黒いポケモンは気持ち良さそうに寝ているはずが、何処か苦しそうに呻いている鳴き声が聞こえる。白いポケモンはトレーナーの背中に腹を出して爆睡し、赤いポケモンはトレーナーの頭に倒れ込む様に眠っていた。水色のポケモンは大きな身体をトレーナーの足を下にした状態で、やっぱり倒れ込む様に眠っていた

四匹のポケモンの下に潰された状態にいるトレーナーはやはり苦しいのか呻きながら、それでも爆睡していた






「ミリ姫、生きているのか?白亜と黒恋と時杜はともかく蒼華に潰されているよなアレは」

「いつもの服を着ているって事は一度目が覚めたんじゃないか?」

「……確かラジオ体操するぞって張り切っていたなミリの奴…」

「「ラジオ体操…」」






部屋の中である意味奇抜で悲惨な光景を部屋の入口で眺めるレンとマツバとミナキ

早朝、朝ご飯の時間になっても一向に顔を出さなかったミリに疑問を抱いた三人は、「アイツもしや先に行きやがったな」と言うレンの言葉を筆頭にとりあえず部屋に行ってみるかと足を運ばせて部屋の戸を(勝手に)開いたのが始まりだった

いつもは既に着替え終えたミリの完璧な姿を見続けていたマツバとミナキに、一緒に一泊過ごした事があるレンはラジオ体操をしている姿しか見た事が無かった為、こんな敷き布団の上でカオスな状態になっているミリの姿は正直初めてだった

色気も何も無いそのミリの姿に三人は引きつった笑みを浮かべるしか無い。そんな事を知らないミリは呻きながらも夢の中へ旅立ち中である

しかし一体何があったというのか






「まぁ、こんなミリちゃんもたまにはアリかな?」

「確かにミリ姫は何処からどう見ても完璧だからな、歳の事を考えたらこれが本来のミリ姫なのだろうな」

「ミリちゃん、いつもこっちに気を使ってくれていたからね。朝は普通に早かったし、トレーナー業やりながら家の家事をよくやってくれたと思う」

「ならきっと、家政婦が帰ってきて安心したんだろうな」

「そうだね」







ははっと笑うマツバとミナキ

その二人をレンは呆れた目で溜め息を吐いた






「ったく…ポケモンの前ならともかく、大の男三人の前で無防備にも寝やがって。一度親の顔が見てみたいぜ」

「良かったじゃないか、初日からミリ姫に置いてけぼりにならずに済んで」

「さっきのレンを見たらミリちゃん一体どんな反応するんだろうね」

「そこ黙れ」





若干ニヤニヤした笑みを向ける二人にレンがギロッと睨めば二人は「おぉ、怖い怖い」「くわばらくわばら」と笑う

舌打ちをかましたレンはまた溜め息を吐くと、部屋の隅に転がっている掛け布団に気付き、それを手に持った






「…とりあえずこいつらをボールに戻しておくか。ミリが窒息死したら意味が無いしな」





端に寄せてある机の上に並べて置かれているボールに手に持ち、レンは一個ずつポケモンに向け、赤い光線を放つ

光線に包まれ、一匹ずつ消えていくたび、ミリの寝息が健やかになっていく。どれだけ重くて苦しく寝ていたんだと疑問に思ってしまう(特に軽く200Kg以上ある蒼華とか


敷き布団の上にはミリしか居なくなったそこに、レンは掛け布団を掛けてやる。黒恋のせいで絡まってしまった髪を手でほぐしながら整えさせてあげていると、不意にミリがにへらっと笑った

一瞬起きたのか?と身構えたレンだったが、ただ笑っただけだと気付く。しばらくその顔を見続けて、レンはフッと笑い寝ているミリの頭を撫でてやった








「見ろよマツバ。あそこだけ青春をしているぞ。なんだか見ていてムカついてくるのは私の気のせいだろうか」

「奇遇だな、ミナキ。僕もなんだか見ていると微笑ましい筈なのにムカついてきたよ」

「お前らいい加減黙っててくれ」












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