夢の中で度々見る、一人の女



そいつはいつもポケモン達に囲まれていて、いつも優しい笑みを浮かべている

俺に気付いて微笑むその笑みが好きで、差し伸べて来るそのか弱く細い手も、好きだった






「私は、自分の運命を覚悟しました。この力が有る限り、私は生涯伝説となってでも、光になり続けましょう



――私が、この世で消えてしまったとしても」







…知らない女

しかし、なんで俺はそいつを知っていて、なんで俺はいつも切ない気持ちになってしまうのか

なんで、そいつがミリと被って見えてしまうのか



俺には、分からなかった








(なぁ、お前は一体誰なんだ)



―――――――
―――――
―――








見上げるのは、静かに輝く光の数

その輝く光を照らし輝かすのは綺麗な満月

この世界に来て、二回目の満月


私の、大っ嫌いな満月






「ブーイ!」

「ブイブイ」





満月に照らされる月光を浴びながら、此所から見上げる満月は最高に綺麗だ

縁側で腰を下ろし、月見団子を一口入れる。月見には最適な夜空は、このエンジュシティを暗闇で包み、月光で光輝かす。庭では白亜と黒恋が月光の下で楽しそうに追いかけっこをして遊んでいて、蒼華は二匹の近くで腰を下ろし満月を見上げ、時杜は空中で気持ち良さそうに宙を舞って皆各々一時を楽しんでいる

夕飯を終えた私は家政婦さんの手伝いを終わらせ、ちらほらとマツバさんやミナキさんと一言二言話してから、もう部屋に戻っていた。時間も時間で、明日も早いと言う事で先に部屋に戻らせて貰っていた





「いやー、満月だ」





ははっと笑いながら、また口に一口入れる

あのふたごじまから、視力は順調に下がってきたは良いけど…まだ、月が紅くなっていない。高熱な程だった体調は、なんとか落ち着いてはきたから倒れる事はない。もちろん今でも体温は高い方だから油断は禁物だ


私は食べ終えた団子の串を皿の上に置き、また新たな団子に手を伸ばす

この団子、中々美味しいんだよねぇ〜流石家政婦さんの家庭の味(←)……としみじみ思いながらソレを手に取ろうとしたら、ヒョイッと串は一人でに宙を浮いた

宙に浮いた団子はフラフラと宙を彷徨うと、パクパクッと器用にも団子が消えていき、串が顔を覗かせる。私はその異様な光景に苦笑しながら、見えない存在に向かって声を掛ける






「中々美味しいでしょ?その月見団子。皆に内緒で家政婦さんに作って貰ったんだ



 ――――刹那」

《あぁ、確かに美味い》






隣りいる、確かな存在

私の言葉で居なかった場所に徐々に姿が現れていき――そこには緑色のミュウツーの刹那が、私の隣りで座って団子をムシャムシャと食べていた

刹那が現れた事で、四匹は刹那の存在に気付く――が、臨時態勢を取る訳でも無く威嚇する訳でも無く、もう慣れた様子で刹那を歓迎していた。白亜と黒恋は嬉しそうに刹那に駆け寄っていき、刹那に向かってダイブをする。こちらも慣れた様に受け止めて、球体の手で頭を撫でれば二匹はケラケラと笑い尻尾を振った。蒼華は刹那と視線を合わせるだけで(あれはもう蒼華なりの挨拶)、時杜は《お帰りなさい刹那〜》と、刹那の頭にペタッと座った(ジャストフイットらしい)。刹那も皆の歓迎を受けて、表情は変わらないけど何処か嬉しそうに私は見えた






「お腹空いているでしょ?ポフィンとかもあるけど食べる?」

《あぁ、いる》

「ブイ!」

「コラコラ黒恋。君はさっきたらふくご飯を食べたでしょー?これは刹那の分だからね!」

《構わん。黒恋、共に分けて食べるか。白亜、お前もいるか?》

「「ブイ!」」

「優しいなぁ、刹那は」

《刹那〜僕もポフィン一個でも半分でも良いから食べたい》

「…」

「いやいやいやいや、これだと刹那の分が無くなっちゃうからね」






ふたごじま事件から、私の前から飛んでいった刹那とは意外な再会を経た

観光で"つながりのどうくつ"付近でお昼にしようと弁当を広げて皆と仲良く食べていた……が、なんか知らないけどパクパクと食べ物が不自然に消えていったのが始まりだった。それが刹那だった事に驚いて、しかもなんで此所に刹那がいるんだよとびっくりして、つーか何で弁当盗み食いしてんだよとトリプルパンチを食らったものだ←

しかもこれは始めてじゃなかったりする。刹那が現れるたび警戒をしていた四匹だったけど、今となればこんなにも和気藹々とする程の仲になっていった。それは元々の刹那の性格のお陰だったかも知れない。皆も刹那の素直な優しい性格に、次第に溶け込んでいった




もう、仲間と言ってもおかしくは無い程、私達は打ち解けあっていた













しかしあの有名なミュウツーが食べ物の盗み食いって…←






×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -