変わりたいと願った

綺麗になりたいと願った

美しくなりたいと願った



もう辛い思いは、したくないから








Jewel.16













初めまして、こんにちは。私の名前は水姫、ミロカロスの水姫です。コンテストが大好きでブリーの実が大好物、ミリ様と一緒にする水浴びが大好きな水姫です。そしてちょっぴり、蒼華様に恋心を寄せちゃったりしているという…(ゴニョニョ)い、いいもん、進展がなくったって私はあの人と一緒に演技が出来たり一緒に過ごせるならそれだけで十分だか(ry

私の身体は他のミロカロスと違って色が違います。所謂色違いというものです。色は金色、黄金とも言われました。金ぴかなあまり、よく闇夜さんに眩しいとか言われるくらい金ぴかな身体をしています。そんな私の得意な技はフラッシュです。以後よろしくお願いします(ペコリ




さて、そんな私ですが早速本題に入らせてもらいます

今はこんなに凄く綺麗な容姿をし人間の方々に注目なんてされていますが、昔は随分と酷い身体をしていました。ちょっぴり長くなりますが私のお話を聞いて下さい






私は今、こうして立派なミロカロスに進化しました。立派、と言っても回りがそう言ってくれるだけで私はまだまだだと思っていますが。ミロカロスという種族は、ヒンバスという種族から進化します。しかし、ヒンバスからミロカロスに進化出来る方法は知られていなく、ヒンバスの種族からミロカロスの種族に進化出来る確率は、百匹に一匹でしかないとまで言われていました。あ、これは私達の間ですけれど。勿論私も自分がミロカロスになんてなれる事もその方法も知るわけがなく、一生ヒンバスで過ごすのかと思っていました

お恥ずかしいお話ですが、ヒンバスという種族は他のお魚種族と比べて一番醜い種族です

みすぼらしくで醜いポケモンと知られているヒンバス。しぶとい生命力を持ち僅かな水だけでも生き延びると図鑑に書かれていましたが、まさしくその通りです。そして私達は集団で行動をしますので、結束は硬く、日によって集う場所が違うので人間にはあまり見つかる事はありません。全てはこの弱肉強食の世界を生き残る為。団体行動、仲間同士の絆は強い、ヒンバスは他の種族よりも仲間思いだと――――そう、思っていました

ですが、違っていました

何故なら、そう


私は、色違いだったから






仲間と違った色をした私。本来ならヒンバスのヒレや水掻きの部分は青、水に同化して回りに見つからない色をしていました。ですが、私はくすんだ黄色をしていました。身体の方も他の仲間と違って色が濃く、本当に醜くて、自分がどうしてこんな色をしているんだろうと自分で自分を呪いました

勿論、結束が硬く仲間思いで絆が強いヒンバスと思っていた仲間は私を疎遠しました。無理もありません。色違いは異端の色。ヒンバスに限らず何処の種族もちょっと色が違うだけで相手を忌み嫌い、突き放す。悲しかった、苦しかった。何が悲しいかって、他の種族に私の身体を見て醜いと笑われ、攻撃をされ、しかも仲間にも自分より醜いからと笑い、いつしか事あるごとに私を嘲笑って私の失態を楽しんでいる始末。この現状は人間でいう女の職場である展開だと昼ドラ見て気付きました。人間も大変なんですね←

仲間に対する怒りや憎しみよりも、やっぱり悲しい気持ちが強かった。疎遠ならまだしも、日に日に酷くなってくる扱いに、私はもう嫌になりました。ですがこの群れから離れたとしても他に行く宛もないし、あったとしても同様な扱いをされてしまう。だから諦めて、涙を忍ぶ事しか出来ませんでした








何も出来ない私は、月夜が輝く静かな夜、水辺から顔を出して神様にお願いするしかありませんでした

生まれ変わりたい、綺麗になりたい、美しくなりたい、優しい仲間が欲しい――――

ずっとずっと、願いました。叶わない願いだと分かっていました。ですが私は祈りました、願いました。あの美しいお月様に向かって、神様に向かって、変わりたい、生まれ変わりたいと…ずっと――――


そう、願い続けました










「ならその願い、叶えてあげましょう」









出会いはそう、突然に

私の人生を大きく変える出来事が起こりました



それは今日も美しい満月の夜の日だった。今日も今日とて涙を浮かべながらお月様に恒例のお願いをしている時だった

突然自分の耳に聞こえた、優しい声色。人間の女性の声だとすぐに気付きました。すると突然強い北風が吹いたと思ったら―――満月を背後に、私の目の前に…淡く輝くクリスタルを額に持つ、美しいポケモンが水面の上に立っていました

その方は、そうです、蒼華様です

初めて見る種族、初めて見た美しい存在に、私は目を奪われました。優雅溢れ、堂々とした御姿、私でも解る強い存在…この時、私の心は彼に奪われてしまった。所謂、一目惚れというものです。お月様の月光と、淡く煌めくクリスタル、そしてしなやかで美しい肢体はきっと人間もポケモンも同様に魅入ってしまうものでしょう。まるで時間が止まってしまったかの様に、私は蒼華様を見つめる事しか出来ませんでした

しかし、身体は動けなくとも脳内はすぐに正気に戻りました

あの優しい声は、一体誰が?

眼前に立つ水色のポケモン、蒼華様ではない事は確か。一体誰、そう思った丁度その時に、蒼華様の背に誰かが座っている事に気付きました。やはり私の思った通り、人間で、女性の方でした。蒼華様は私がその方の事に気付いたと分かると、身体を動かし私にその方を見せてくれました


蒼華様の背に座っていた御方

その御方こそ、今の私の主であるミリ様です


私はまた強い衝撃を受けました。ミリも蒼華様同様に、とても美しい御方だったのです。鮮やかなオレンジ色が印象強い、蒼華様の放つ淡い光と月光の光によって艶やかに反射する漆黒の髪、しなやかな肢体…ポケモンも人間も関係無しに万人受けの良い、美しい女性でした。彼女はこちらを見て微笑んでくれました、けどその瞳は一切の光を宿していませんでした。あぁ、この人は眼が見えないんだ…―――それが、ミリ様という主様の、初めての出会いでした

衝撃はまだ続きます。もはやぽかんとしたアホ面した私を余所に――――…なんという事でしょう、蒼華様の背から降りて、水面の上に立ったじゃありませんか!驚愕なあまり目が零れ落ちそうです。水にドボンじゃなくて本当に立ってこちらに真っ直ぐ歩いて来るんですよミリ様!ポケモンだから出来る事はあっても、初めて見ましたよ人間が水面を堂々と歩く姿を!衝撃と驚愕で唖然としている私を前にして、ミリ様は微笑んだ。しゃがんで、手を伸ばして、私の額に触れた

人間の指の感触、人間の温もり。温かい、そう思った次の瞬間――――私は眩い光に包まれた。衝動的に私は目をギュッと閉じました。そしたら身体に異変を感じました。身体が成長していく様な、妙な感覚。恐る恐る目を開いて見れば……―――――アレ、どうして私…ミリ様を見下げているの?







「君は今、誰よりも綺麗で美しいよ」







ミリ様は笑う

綺麗に、優しく、美しく

突然襲った身体の異変、高くなった視界、輝かしい光―――水面に反射された自分の姿を見て、私は驚愕しました

私は、ミロカロスに進化していました

しなやかな肢体、輝かしい黄金のヒレ、麗しい姿…みすぼらしくて醜かったあの身体とはまさに雲泥の差。そして無駄に明るくなったと思ったら、私の身体が発光していて

驚きました、しかしそれ以上に上回ったのは一言では言い表せられないくらい大きな喜びでした







「ねぇ、私達と一緒に行かない?私達と一緒ならきっと楽しい毎日を送れるよ。それにもっと…―――君の黄金輝くその美しさを、色んな人に見てもらわないとね」






フワリと笑うミリ様

そしてミリ様は、私に手をさし出した

蒼華様もミリ様の隣へ歩み寄り、私に言ってくれました。《何も恐れる事はない。我等はお前を歓迎しよう。主人と共に、その美しい姿を見せてやれ》――――…私は嬉し涙をボロボロと零しながら、その手を、取ったので御座いました







―――――――
―――――
―――













私にとってミリ様は神様…いえ、女神様です

私の夢を叶え、私に優しい仲間を与えてくれたミリ様。今の私があるのはミリ様のお蔭です。感謝の言葉も尽きません






「水姫、今日も君は美しいね〜」







いいえ、ミリ様

確かに私は貴女のお蔭で強く、美しくなりました

しかしミリ様、一番綺麗で美しいのは他の誰でもない―――…貴女なのですよ







「よーし、それじゃ次のコンテストに向けての技のコンビネーションを考えましょー〜!一緒に頑張ろうね、水姫」

「ミロー!」








ミリ様、美しいミリ様

みすぼらしくて醜くて弱かった私を救い、慈愛の抱擁で優しく包み込んでくれた太陽みたいな御方。誰よりも美しく、綺麗で、麗しくて、そして…一番儚くて、脆い人

安易に触れてしまったら最後、壊れてしまいそうなくらい繊細な貴女。私は知っています。貴女がそうやって輝けるのは、心に大きな闇を宿しているから、辛い経験を何度も味わった事があるから、故に輝ける事を

そんな貴女だからこそ、一番美しい

だから私は貴女を、守っていきたい




喩え貴女がどんなに尊い存在だとしても








(貴女は誰よりも弱いから)

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