映像は先進み、場面はミリが行方不明になったと予測されるあの小島へと変わる。映像に映る小島の風景はとても穏やかなもので、この後起こる大惨事が信じられないくらい平和なものだった その小島に近付く、ミリ達を肩に乗せた闇夜 既にその小島には蒼華と時杜と刹那の姿があった 「皆お待たせー!」 「「ブイブイ!」」 「…」 「キュー!」 「……」 「やー、闇夜ありがとう此処まで運んでくれて!ちょっと見て見て!ダークライだよ!ダークライの闇夜っていうんだって!カッコいいね!ダークライちょーカッコいいよ!」 「……」 「…」 「キュー!キュッ!」 《………私は、お前達の事も知っている。久し振りだな、お前達に会いたかった》 「!…キュー」 《主の様子を見てもしやと思っていたが…残念だ。まさかお前達も記憶喪失になってしまっていただなんて。しかし、生きていてくれてよかった》 蒼華、時杜、刹那は闇夜を静かに見つめ返す。ミリを守ってくれた手前、敵ではないと分かっているらしい。闇夜を見つめる視線は何処か品定めをしている様にも見えた 何かに気付いた闇夜の視線が、隣にいるミリを写す 光沢輝く闇夜の身体にミリの手が触れていた。優しく、労る様な手つきで闇夜の身体をミリは撫でる。ミリの表情は優しい笑み、闇夜の知っている大好きな微笑み。ミリは闇夜を撫でながら、「大丈夫、」と三匹に言う 「事情は分からないけど、少なくてもこの子は味方。色々お話を聞かせてもらいたいけど今は別の事に専念しよう ―――彼等の気配がこちらにくる」 優しい笑みから、鋭く真剣な表情で この表情を、闇夜は知っていた この映像を見る彼等も知っていた ミリはある方角へ視線を移す ―――――そしてすぐに現れた、二つの存在 「―――――…えーっと、アポロさん、ですか…随分とまぁ…ちょっとお菓子を連想する可愛らしい名前の方ですねぇ。あ、今手元にそのお菓子ありますが、要ります?美味しいですよ」 「シバき倒しますよ」 「それから、えーっと…ランスさん、でしたっけ?最も冷酷と恐れられたランスさんでしたっけ?すみません…私、自称冷酷とか言っちゃう痛い人と知り合いになった覚えが全くもってないんですが…ププッ!…自称冷酷…自分で自称って言っちゃった…ププッ!ヤバい私この世界で初めて見ちゃったよププッこんな稀な人っているんだねププッ!自称冷酷…冷酷…ブフゥッ!!(噴出」 「ハッ倒しますよ」 「R」の文字の服 赤い彼岸花のブローチ 水色の髪をした男 緑色の髪をした男 蒼華、時杜、刹那は【三強】の時と同じ様にミリの前に立ち ミリの足元には白亜と黒恋が、普段の可愛らしい姿を一変させ、毛を逆立てしながら威嚇を続ける そして闇夜は六年前同様にミリの背後へ立つ 「うーん、皆聞いた?私、記憶が正しければあんな人達は初めて見たんだけどなぁ」 「…」 「キュー」 「だよね、そうだよねー私達あんなちょっぴり痛くて危なくて怪しいお友達とかいないもんね。解散したはずのロケット団の残党がまさか私の前に現れるだなんてちょっと私聞いてないなぁ」 「さっきから好き放題言ってくれるじゃありませんか。ランスはともかく私はちょっぴり痛くて怪しい人間ではありませんよ。失礼な方ですね」 「貴方の言葉も十分失礼ですよ私に」 《…残念だが主、あの男…ランスとは面識があるぞ》 「…え?それ本当?会った事あるの?最も冷酷と恐れられたランスさんと?えー、なんかヤダ」 「ヤダとはなんですかヤダとは…!アレだけ私に仕打ちをしておきながらそんな台詞を吐くんですか!相変わらず酷い人ですね!それから一々名前が長過ぎます!私はランスですよランス!最も冷酷からのくだりはいりません!」 「そんなまさか!」 《あの男に私の忌々しい力の一つ、ダークホールを連発させ、精神的にも肉体的にもボコボコにさせてやった。今ではいい思い出だ》 「え?何?ふむふむ、最も冷酷ランスさんにダークホール連発、徹底的にボッコボコにしたんだね。そんな惨い命令をしただなんて…なんて酷い人!」 「命令したのは貴女ですよ貴女!」 「そんな馬鹿な!」 ミリは二人を知らない 当然だ。ミリは記憶喪失、六年前の事は覚えていない。六年前、何度も何度もダークホールに堕しまくった緑色の髪をした男の事も、全て おちゃらけた風を装うミリであるが、これは相手の動揺を誘い自分の優位に持ち込もうとする戦略の一つであると闇夜は知っていた 勿論相手、ランスはペースを乱され、狂いに狂っている。悪態を吐き荒れている姿をさらにミリの批判という茶茶が入れば怒り狂って見境が聞かなくなる。チラリと盗み見るミリの表情は何処か楽しそうに見えた。あぁ、あの男は堕ちるだけ堕ちて次は遊ばれるだけ遊ばれるのか。闇夜は内心哀れみの目をランスに向けていた 「私はずっと忘れた事はありませんよ…女王。貴女を倒す日を、どんなに待ちわびた事か…!」 「えーすみません、多分それ人違いです」 「何を今更。そう言ってもお前が聖蝶姫だという事には変わりはないんですよ」 「貴女に、いえ…貴女達に与えられたこの屈辱を、恐怖を、戒めの鎖から解き放つ。今日はまさにうってつけの日です―――…見て下さい女王!空を!海を!まさにあの時と同じ状況を!貴女を倒せば私は…―――貴女から、解放される!」 「えーっと…最も冷酷と恐れられたランスさん、あの人色々と大丈夫ですか?」 「それこそ今更ですね。お前がどんな仕打ちでランスを返り討ちにしたかは知りませんが、お陰様で鬱っぽくなってしまいましてね」 「あらー」 「全く、ウチのランスをどうしてくれるんですか」 「えーすみません私、貴方のランスさんに手を出した覚えは全くありません。貴方のランスさんに」 「だ れ の で す か 二度も言わないで下さい人聞きの悪い」 「…貴方達、私の話聞いていました?」 「「痛い人ですねぇと思いながら」」 「シバき倒しますよ!」 キィイイッ! イケメンが台無しですよー 貴女の所為ですよ! そんなバナナ! 「――――久し振りにアイツ等の姿を見たが、ランスの奴はあんな奴だったか?最後に見た姿とえらい違うが…」 「…完全に遊ばれていますね、ランスの奴。俺もあんなランスは初めて見ます」 「こんな状況でもミリ君は……」 「下手すれば相手を逆撫でし逆上させてしまう。極めて危険な交渉法だというのに舞姫の奴…」 「ったくミリの奴…見つかったらでこピンだな」 「ミリ様…楽しんでおられる……状況が状況なだけに複雑だ…」 「「…(汗)」」 しかし、そんなシュールな光景は一瞬で終わりを告げる 「――――…さて、そろそろ本題に戻りましょうか。ランスを弄っていては時間の無駄になりますし、あのチャンピオン達がこちらの居場所に気付き、追いつかれてしまう」 「弄っていたとか何なんですかアポロ貴方アジトに戻ったら覚悟しなさい」 「すみません私、物覚え悪いのでヤドンの様にど忘れするかもしれません」 「嘘おっしゃい」 「とにかく、彼女を含めた全員を捕らえる。その秘めた復讐心を使って彼女を捕らえる事に専念しますよ。彼女とイーブイ、スイクンとセレビィとダークライ、そしてあのミュウツーもn…―――」 映像を見ていても、よく分かる ズン、とこの場の空気が一気に重くなったのだ → |