「加護の力か…そのペアルック、何かあるとは思っていたけど…まさかそんな力があったなんて驚きだ。勿論、その意味にも…」

「これで少なくとも舞姫が無事だと言う事に間違いはないな。…安心した」

「あぁ、本当に。…よかったな、麗皇」

「…あぁ」








「(こそっ)にしてもレンだけなんかズルイね。僕らもこっそりお願いしちゃおっか。加護の力まではいかなくても、家族の証みたいなペアルックは欲しいよね!」

「(こそっ)それは良い案だなマツバ。ミリ姫が戻り次第、一緒に頼もうではないか!大丈夫だミリ姫なら快く引き受けてくれるはずだ!」

「俺の目が光る内はそんな事許すわけねーだろ。つーかお前らって見た目に反して意外にアホだろ」

「む。ではゼルの知らないところでこっそり頼もうとしよう!」

「ふざけろ」






――――――――
―――――
――













「―――――これは二週間くらい意識は戻らねぇだろーな。この液体回復保管機が傷の治りを早くしたところで、意識の回復までは厳しいだろうな」

「やはり総監の君でもそう思うか…」

「こっちに来る前に本部に連絡はしてある。ガイルからの連絡はまだだが、ジョーイが来るのを待て」

「分かった。よろしく頼む」

「…………」






闇夜の襲撃もなんとか落ち着きを取り戻し、七人は現在改めて治療室の中にいた

ゼルを筆頭にミリのポケモン達の容態を確認していく。付き添うのはカツラとナズナだ。カツラから液体回復保管機の説明等を受けながら、ゼルはそのカシミヤブルーの瞳を鋭く光らせる。ナズナもまた眼前の光景に眉間に皺を寄せながら―――緑色のミュウツー、刹那の痛々しい姿を拳を強く握り締めつつ、静かに眺めていた



一通り案内と説明を終えると、必然的に辿り着くのは―――対照的なイーブイ、白亜と黒恋

ピタリと二匹の目の前に止まるゼル。カシミヤブルーの瞳は、静かに二匹を写した。二匹は相変わらず目覚める事はなく、深い眠りについている

カツラとナズナに緊張が走る





「こいつらが、あのイーブイ達…」

「………ゼルジース、」

「フッ、ただ見ているだけでそんなに殺気だすな。撫でるだけだ、それくらいいいだろ?」

「「……………」」





何をされるかは分からない。二人に緊張感が走る。元々このイーブイ達を狙ってナズナを襲ったからこそ、二人は身構える。正直ゼルを、イーブイ達に会わせたくなかった。何が目的でイーブイ達を狙ったのか―――その真意は今も謎のままだ

カツラとナズナが固唾を飲んで見つめる(※睨み付ける)中―――イーブイ達を見下ろしていたゼルの表情が、小さな笑みを浮かべた






「…よくやったな、お前ら」






高価な指輪を煌めかせ、綺麗な手はスルリと白亜の身体を撫で、黒恋にはふわふわな尻尾を一撫する

カシミヤブルーの瞳は、優しい色を浮かべていた。優しいまなざしが、二匹を写す。ゼルは何を思い、何を考えて二匹を見つめているのだろう。二匹を撫でた手付きは、普段見せるゼルの姿が嘘の様に優し過ぎて

あまりの意外な姿にカツラとナズナに動揺と困惑が走った






「ゼル…君は…」

「…………」

「……此処にはもう用はない。そろそろ闇夜から話を聞こうか」

「「…………」」






イーブイ達から、視線を後ろの二人へ

振り返ったそのカシミヤブルーの瞳は、先程見た優しさの光は完全に影を失せていた。総監としての威厳とプライドを秘める鋭い目を二人を見抜く

カツラは、ナズナは、全くゼルの動向が読めないままだった









一方、別の所では







「……白皇、少しは落ち着いたか?」

「……なんとかな。……悪夢は何度も見てきたが…やっぱ見るもんじゃねーな。生きた心地がしねぇ」

「………」






液体回復保管機の中で眠る三匹の内―――水色のスイクン、蒼華の保管機を静かに見上げながらレンは言う。その表情は―――たとえミリの力のお陰で救われたといえど、やつれている様に見える。ゴウキの眼からもレンの気が滅入っている事に気付いていた為、それだけダークホールの影響は計り知れないと思い知らされた

ただでさえレンは酷な運命を強いられてきた。片割れの兄を失い、両親も失い、ミリを守れなかった―――彼の口から悪夢の内容を語られる事は無かったが、確実にレンの心身にダメージを与えただろう

何も語らないレンの後ろ姿。部屋の片隅にある影の中から、不気味に金色の瞳が顔を覗かせる






《―――私の忌々しい能力を浴びて、よくその程度で済んだな。殆どの人間達は一度でも食らえばトラウマを生み、私の前で平然としていられない》

「そーかよ。残念だったな」

《………主とお前の関係性は?》

「関係性?ハッ、それをお前に言う必要があるのか?……まぁいい。俺とミリは、恋人同士だ。誰かさんの所為で絶賛遠距離恋愛中ってところだ」

《!―――あの恋沙汰に鈍感な主に、恋人だと?……どんなに沢山の人間からアプローチを掛けられても全く気付かなかった、あの主がか?…にわかに信じられん話だ》

「………。そっちのミリも相変わらずだったんだな」





ハァァッ、とレンは呆れた様子で溜め息を吐いた。レンもレンで長い道なりから実った恋、鈍感過ぎて自分を「過保護」と言ってくるミリにどれだけ頭を痛めたか…思い出しただけでも溜め息しか出てこない

勿論、隣にいたゴウキも伊達に【三強】時代を過ごしてきた事もあり、呆れた様子で肩を竦めた



その話は後々詳しく聞かせてもらうとして、と

レンのピジョンブラッドの瞳が闇夜に向けられた







「……闇夜、お前は俺にダークホールを放つ前に言っていたな。"三匹のかたきを取らせてもらう"ってな」

《…………》

「最初に言っておく。ミリが行方不明になった日の事を言っているなら、それは俺じゃねぇ。俺は別のところにいた。ゴウキとナズナが証明してくれる」

「あぁ、俺達が証明しよう」

「お前は一体、何を見た?ミリの身に、一体何があったんだ?………答えてもらうぞ、闇夜」

《……………》








《忘れたとは言わせない。三匹のかたき、取らせてもらう!》






闇夜は知っている

あの日、あの時―――何があったかを


闇夜はレンを敵と見なし、仲間の敵討ちをする為にレンにダークホールを放った。何故レンだったのか、何故レンを敵と認識したのか―――それこそ闇夜の口から説明してもらわなければならない



敵は、『彼岸花』は

一体どんな姑息な手を下し、


ミリを、ポケモン達を陥れたのか―――










皆、と離れた場所にいたマツバが声を掛けた





「ポケモン達の確認が終わったところで、そろそろ場所を変えよう。サカキさんと合流してから闇夜から話を聞こう。それから時間が時間だ、宅配を頼もうかと思う」

「そうだな…もうそんな時間か」

「ピザでいいかい?…てかゼルはこういう宅配とか大丈夫な口か?」

「別になんでもいいぜ。ピザか…たまには庶民の食べ物を食べるのもアリってもんだ」

「マツバ、こいつにはとびっきり唐辛子が入った激辛ピザにしてやってくれ。口に入れたら火が吹き出すくらいにな」

「おいテメェふざけんなお前はピザなんかじゃなくて生クリームたっぷりのパンケーキでも食ってやがれ」

「…また始まったか…」

「お前達、こんなところで乱闘するな。ポケモン達が目を覚ましてしまう」

「ハハッ、相変わらずお前達仲がいいな!」

「「よくねーよ」」

「ほら見ろ!それが仲がいいっていうんだぞ!」

「「ミナキ後でぶっとばす」」

「おーっと!ミリ姫に告げ口してもいいならな!」

「「グッ…」」

「とりあえず適当に頼んでおけばいいかい?」

「頼むよ」

《……………》








気付くともう時間は夜の7時頃







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