あの日から、俺は父さんの言っていた"姉さん"を追いかけた


スイクンの背に乗っていた、姉さん


まるで蝶の様だったその人は、初めて見る程の美しい人で……今でもあの優しい笑みを覚えている。水色のスイクン(多分あれは色違い)に乗ったあの人はもっと美しさを際立っていて、息が詰まる程に見惚れてしまった


あれが、俺の姉さん




あの時

突風と共に駆け抜けた姉さんは、俺と、父さんに、その美しい顔で微笑んでいた

俺にはまるで「久し振り」と言っている様な笑みをしていて、父さんは全てを分かった笑みを空に向け、姉さんに向かって、フッと笑った

たった、それだけだった






「会いたいか?」






ひみつきちで父さんが呟く

俺は驚いて父さんを見る。視線はこちらを向いてはいなかったが、質問は真剣だと言う事はひしひしと感じていた。そんな父さんに目を張って凝視するが、俺は素直に頷いた





「会ってみたい」

「…」

「……いや、会いたい」





頷いた俺を、本当の気持ちを伝えたら、父さんがこちらを振り向いた

父さんは分かっていた様にポン、と俺の頭に手を置いてフッと小さく笑った







「行ってこい、シルバー」

「父さん」

「お前には、俺の病気のせいで随分縛ってしまったからな。お前が一番したい事を、やってこい。……アイツに無事再会出来たら、『あの時は、礼を言う』とでも言ってやってくれ」

「……あぁ、分かった」






父さんはその後に「このジョウトを巡っていれば、勝手に向こうからやってくるだろうな」と言った。何でだ、と父さんに聞いてみれば「お前がアイツに会いたい様に、アイツもお前に会いたいんだ」と懐かしむ様に父さんは俺の頭を撫でていた


それから俺はひみつきちを後にして、"姉さん"を捜しに飛び立った




このジョウトの、何処かにいる事を信じて










* * * * * *









「ハヤト君って、ジムリーダーをやっていながら警官も勤めているなんて凄いね」

「いや、褒められるなんて。俺はまだまだですよ」

「謙遜しなくたっていいよ。君がお父さんのジムを守るひたむきな気持ちは周知にもう認められているし、警官の仕事でもそうだって。キキョウシティはハヤト君のお蔭で守られているって言うし。格好いいね。ねー、ポッポ」

「ポッポ!」

「いや、その…!」






マダツボミの塔の手前付近の木々の中、私は此所のジムリーダーのハヤト君(とそのポッポ)と一緒に仲良くお菓子を食べながら寛いでいた

今の時間ジムは休み時間に入っているらしく、また観光しにきた私をハヤト君は見つけてくれた(変装をしていなかったからすぐに見つけたらしい)(今の時間は変装タイムじゃないからね)久し振りだね、と近くの木々の下でこうして会話を弾ませていた

どうやら此所のハヤト君はスペ寄りが混じっているみたいだニヨニヨ。確か君のお父さんって名前がハヤテだったっけ?(誰に聞いてんだ

ちょっと照れた顔で顔を背くハヤト君に燃えただなんて、そんなことな(ry





「バッチはどれ位集まったんですか?」

「今のところは四つ。カントーみたいにすぐにジム戦じゃなくてゆっくりと観光して時間をかけて制覇しようと思っているんだ」

「ジョウトは歴史が深い地方ですからね、観光にはもってこいですから」

「そうそう。そこのマダツボミの塔とか、中にいるお坊さんとか」

「ははっ、ある意味歴史がありますねお坊さんは」

「ポッポ!」






ジョウトに来て、マツバさんと戦って次に挑戦したのがハヤト君だった

空中戦を得意とするハヤト君の戦法に白亜と黒恋で臨んだあの勝負。色々翻弄されながらも日頃の訓練のお蔭で無事に勝利し、ウイングバッチを手に入れた

その時ハヤト君は副業の警察の仕事があったから交流は出来ずに終わっといたけど、今日は(気紛れで)キキョウシティに来て良かったと思う。程よいツンデレが心を揺すぶる←






「そうだ、今度良かったらまた俺とバトルを再戦してもいいですか?今度は前と同じ様にはさせません!」

「ポポ!」

「お、逆に君から私に挑戦状?もちろん受けて立つよ!私もまたハヤト君とバトルしたかったからね!」










それからしばらく会話を楽しんでいたら、どうやら休憩時間が終わった様でハヤト君はジムに戻って行った

私はハヤト君が去って行った背中を見えなくなるまで見送った後、食べていたお菓子(市販のクッキー←)の後片付けをして、立ち上がった

空気を一杯に吸って、空を見上げる


晴天の空、とても心地の良い空だ







「さて、そろそろ来る頃かな」






昔はあんなに小さかった、可愛い可愛い弟みたいな存在を



久々に見たあの子は、立派な少年へと成長をしていた










あの日から、三日の月日が経っていた






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