点滴が無事終了し、俺達は後は荷物をまとめて病院から出るだけになった

安易に長居は出来ない。父さんは仮にも元ロケット団の素顔を持っていて、もしかしたら顔が知られている可能性が無いにもあらず





「父さん、受付はもう済ませた」

「あぁ、行くか」






あの事件から二か月余りが経つ。二か月経った今でも、必要最低限の事しか会話には無く、後は無言が空間が待っている

俺はただ黙って父さんの荷物を持ち、手持ちのニューラもそれに従った。父さんは同じ病棟のナースから花束を貰っていたので、それを持って病室を後にした。通り過ぎるナースやドクターに頭を下げながら、病院を後にするのだった



…もし、俺の父さんが…いや、あのロケット団の首領のサカキが、花束持って歩いている姿をレッド先輩達が見ていたら…凄く驚くだろうな。そんな事を、思った








* * * * * *








「だはー、なんか無駄に疲れた」

「「ブイ…」」





生い茂る木の下で、白亜と黒恋は疲れたと撃沈し、私も精神的にも疲れたので木に背を預けた状態で撃沈した←

ちょっと向こうでは、虫ポケモンに囲まれて幸せそうに会話をしているツクシ君の姿があった。肩にはキャタピー、頭にはビードル、腕の中にはケムッソ……あぁあああ私には想像が出来ない姿になっている。イモイモのもさもさした三匹を嬉しそうに撫で、パラスやトランセルやコクーンなんかともこれまた楽しそうに遊んでいる

ツクシ君は完璧に自分の世界に入っちゃっていた






「あー、やっぱりどうあってもキャタピーだけは無理だったなぁ…ビードルもケムッソも図鑑じゃなくて本物を見ると、やっぱ抵抗が…」






やっぱり私、イモムシ無理だ

焼き払いたくなる←


そんな物騒な事を考えながら、疲れ果てて眠ってしまった二匹の身体を撫でる。よほど疲れたのか、ピクリとも動かない(マツバさんのポケモンにも遊ばれていたからね





「(ウバメの森、か…)」





そういえば此所には祠が確かあったはず。森の神様が奉られていると言われている祠だ。森の神様は即ちセレビィの事を指していて、スペではあの祠の中は時の狭間(とゆーか空間)があると記憶している

同時にマツバさんとミナキさんが初めて此所で時杜を見た場所でもある。時杜をマツバさんとミナキさんに紹介した時はテンションがはんぱなかった(特にミナキさん)。時杜は二人を覚えていた様で、《まさかまた会えるとは思いませんでした》と苦笑を零していたのを覚えている

今はもう時杜がふわふわ浮いていても驚かれる事はなくなり、むしろ普通に接してくれている。時杜もそれが嬉しい様で、二人の回りをぐるぐる回って遊んでいたり(時杜なりの親しみの表現)。二人も幻のポケモンとこうして仲良く出来た事を純粋に喜んでくれている

余談で、二人にはもちろんテレパシーの声は聞こえないみたいだけど、鳴き声は「キュー」らしい(可愛いじゃないか!





「あ、そういえばまた過去夢を見たんだったっけ…」





時杜を連想していたら思い出した

この一か月、過去夢を見たのは確かまだ一回位しかない。一回だけでも、私に取ってはもう何十回も行っている様だった。それもその筈だ、一日一回の夜に、毎日の様に過去夢をしていたのだから。正直このパターンは初めてで、しかも相手が相手だったから驚く事しか出来なくて

過去夢を見始めたのが、ジョウトに来てマツバさんの家に居候をさせて貰ってから。半年は夢を見たけど……こっちの一日が向こうでは一週間で、夢を見終えたその時は夢の中では軽く二ヵ月が経とうとしていた(ややこし過ぎる

ブルーより、期間が長かったこの過去夢の旅


今、彼らは元気にしているだろうか








「ミリさーーん!見て下さいこんなにも可愛い子達がいっぱいですよ!!」

「なーにツクシく……ッギャアアーーーーッッ!!!ツクシ君顔がっ!顔がキャタピーとビードルで埋もれている!!身体なんてケムッソとコクーンとトランセル…!?………って!いやいやちょっと待って待って待ってツクシ君その姿のままこっちに来ないでぇえええ!」









記憶の力はもう、解かれている






×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -