さぁ、楽しく踊りましょう

さぁ、綺麗に舞いましょう



光輝く彼方の中へ










Jewel.11













空気が一瞬だけ、止まった


館内で観戦する人々の息を呑んだのか、眼の先にあるバトルに釘付けになったのかは観客の反応様々

スポットライトの下で照り輝くステージフィールド。キラキラと結晶の名残がよりステージを煌めかせている。そのフィールドの中、ドサリと床に倒れ込むポケモンがいた。目をくるくるとさせ、一部は氷状態に陥っている―――フワライドに、対面する相手―――スイクンは優雅に海色の髪を靡かせながら高らかと咆哮を上げた







「――――…フワライド、戦闘不能!スイクンの勝ち!そしてこの勝負、ミリ選手の勝利!」









一瞬の静寂、しかし審判の張りのある言葉を最後にワァアアッ!!と一気に歓声が上がった

音という音が、声が、館内を壊さんとばかりに響いている。全ての音が、声が、空に突き抜けては余韻を残す

会場内にいる観客達の熱気がステージにも伝わるくらい、会場は大いに盛り上がっていた






「お疲れ様、蒼華」







カツンとヒールの音が小さく響く

歓声響き渡る中、歓声など関係ないとばかりに悠々と立つスイクンの元に一人の女が歩み寄る。フワリとそよぐ艶やかな漆黒の長い髪とリンと鳴るイヤリングがスポットライトでより一層魅力を引き立てる

女―――ミリの隣にはミュウツーと、宙にはセレビィが浮いていた。姿は見せないが、きっと彼女の足下の影にはダークライが居るのだろう。ミリの元へ戻るスイクンに、小さな笑みを浮かべた女は労いの言葉と共にそのしなやかな肢体に触れ、擦り寄るスイクンの頬を撫でた






「ミリサン、」







カツンとまた一つのヒールの音が響く

それはスイクンと戦っていたフワライドのパートナーであり、ミリの対戦相手でもあったコーディネーター、メリッサ

独特な髪型ときらびやかなドレスに身を纏った彼女は、高揚とした表情を浮かべながらも、手は拍手で讃えながら「おめでとうございマス!」と残念そうに、しかし嬉しそうに寄ってくる







「メリッサ」

「完敗デース!アナタのスイクン、本当に強いデス!スイクンも他のポケモンも今日は一段と輝きが増してマシータ!」

「フフッ、ありがとうメリッサ」

「…」







メリッサ―――トップコーディネーターを目指すトレーナーでもあり、ヨスガシティのジムリーダーでもある彼女

彼女はミリがコンテスト大会で出場した時に出会っい、同じ目標を掲げるライバルとしてこうしてコンテスト会場でリボンを巡ってバトルを繰り広げてきた。それはコンテストだけではなく、ジム戦でも激闘を繰り広げた。結果は勿論、ミリのバッチケースの中にはキラリとバッチが輝いていた

そんな彼女達の関係はそう、トップコーディネーターを狙う所謂ライバル同士だった









「次は負けませんヨ!アナタのスイクンは勿論―――他のポケモンにもネ!」

「…」
「キュー!」
「……」

「あらー、こっちだって次も負けないよ〜。蒼華以外にも私の自慢のポケモン達は強いんだから〜!」








白くて細い綺麗な手がキュッと拳を握り、ゆっくりと開かれた手には四つのボール

まるで手品の様に現れたボールを見てメリッサは「相変わらずマジシャンみたいデース!」と笑いながら現れたボールに視線を落とす。眼前に立つ三匹とは別の四色に染まったボール。そのボールはミリの声に応えてカタカタと小さく揺れていた

黒銀色と朱色と黄色と橙色―――それは、ミリが旅をして出会った仲間達のボール

メリッサはミリの手を取った








「たまにはジムの方にも来て下サイネ。ジムリーダーとしてもアナタとの挑戦を心待ちにしてマス」

「えぇ、その時はよろしくねメリッサ」







メリッサの手とミリの手

重なる手は両方共に優しくしっかりと、そして表情は両方共に笑顔だった







『美しさ部門ウルトラランク、勝利と栄光を手にしたのはミリ選手!強い!相変わらず強い!そして美しい!惜しくも敗れたメリッサ選手でしたが貴女の魅せる美しいバトルは素敵でした!皆さんこのお二人に盛大なる拍手を!』







観客席から盛大な拍手が沸き起こる

繋いだ手はそのままに、メリッサとミリがステージの上で優雅な動作で感謝の意を込めてお辞儀をすれば瞬く間に拍手の嵐が沸き起こった。紅いセレビィも歓声に合わせて嬉しそうにステージ場を飛び回り、同じ様に可愛らしくお辞儀をすれば何処からか「可愛い!」等の声も上がるのが聞こえた

アナウンサーの声が響く





『これよりリボンの授与式に入りますのでミリ選手は表彰台へお上がり下さい!』


「行こう、皆」

「…」
「キュー!」
「……」










――――――…ポケモントレーナーになって、図鑑を貰って、ダークライの闇夜を仲間に入れてからまた時が過ぎていき、今日

ミリは此処、輝かしいコンテストステージの上に立っていた

時には一端のトレーナー、時には一端のコーディネーターなど、ミリは活躍の場を広げていった







「おめでとう―――聖蝶姫」

「ありがとう御座います」








聖蝶姫、またの名を盲目の聖蝶姫

名付けたのは少し離れた位置で惜しみ無く拍手を送るメリッサ。彼女が付けた命名がいつしか異名となってシンオウ全土に知れ渡っていた








「皆、ありがとう。他の部門でも一緒に頑張ろうね」

「…」
「キュッ!」
「……」









輝かしい光、飛び交う拍手

リボンを受け取ったミリは嬉しそうに笑った









(キラリとリボンが輝いていた)


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