「いやー、びっくりしたわね〜。レンはゴウキに鍛えてもらったにしても、ゼルもしっかり鍛えてあっただなんてねぇ。まさか剣術を得意とするとはね!シホウイン道場は剣術は専門外だからゼルの剣術は貴重ってもんだよ!一体誰に鍛えてもらったのかすっごく気になるねぇ!」 「チャーンム!」 「ゴウキ、レン、ゼル。それからレンの嫁さんがシホウイン道場に入門してくれたらシホウイン道場も安泰ってもんだよ!あー!早くあの子達入門してくれないのかねぇ!レンの嫁さんが入ってくれれば芋鶴式で入門してくれるかいね?むしろそれいい案じゃないかい!早く嫁さんこーい!」 「「「くぉー!」」」 一人張り切るお母さん ――――――― ――――― ――― サカキが画面上に現れた 「―――首領、お久し振りです」 『連絡くらい寄越せばいいものを。俺に黙って色々動いていたそうだな。…此処にいるカツラから全てを聞いた』 「…話を聞いているなら尚更な事。首領、申し訳ありませんが…」 『手出しはするな?…生憎だが無理な話だ。こんな話を聞いてしまった以上、引き下がるわけにもいかない。…そうだろう?ナズナよ』 「…………」 サカキは言う。真剣なまなざしで ニヒルに笑うサカキだが、鋭い眼光はナズナを見抜く。その面持ちはまさにロケット団首領そのもの。牙を失ってもなお、サカキという一人の人間としての威厳は健在だった サカキがポケモン達を見つけてくれた―――その話を聞き、サカキと会う事を望み、また覚悟を決めたナズナであったが…やはり、出来ればこういう形で会う事は避けたかったのが本音 目の前の上司は、確実に怒っている。伊達に首領補佐を勤めていないナズナには、ニヒルに笑うその裏には…心底煮えくり返っているんだろうと察していた。自分の意思に反してロケット団を名乗り、また勝手に『彼岸花』という名も知らぬ隻眼の烏に崩壊された犯罪組織と手を組んだ。そして、娘同然である大切な存在に手を出した―――けして許される事ではない ロケット団首領よ、とゴウキが口を開く 「お前は関係者でもない。一般人を巻き込ませるわけにはいかない。このまま俺達に全てを任せてほしい」 『……お前は、もしやナズナの弟か?名前は確か…』 「ゴウキだ。…ナズナが色々と世話になったそうだな。ロケット団ではなかったら素直に感謝したいところだったが」 『フッ、残念だったな。ま、俺は特別大した事はしていない。お前の兄貴は随分と優秀だったぞ?……しかし、顔や姿は全く似てないな。だがその灰色の瞳はよく似ている。ククッ、なかなか面白いものを見させてもらった』 「………」 ニヤリと笑うサカキに、ゴウキの眉間に皺が寄る 忘れてはならないのはゴウキは警察側の人間。兄が元犯罪者というレッテルは言語道断といってもいい(今は総監に見過ごされているが)。昔、「科学者になる」と言い昔の故郷に行った若かりし頃の兄―――就職した企業がロケット団だと分かっていたら、止められる事が出来ただろうに。内心複雑な心中にいるゴウキだったりする ゴウキの隣でゼルが鼻で笑う 「サカキ、か………お前の事はこちらに報告されている。トキワジムリーダー、しかしその裏はロケット団首領……今となれば自然消滅になった首領が、まさかミリ様の知り合いだとは予想外だったぜ」 『ナズナ、そいつは誰だ?』 「こいつは…」 「俺はゼルジース・L・S・イルミール。リーグ協会本部所属、人は俺の事を総監と呼ぶ」 『!!…お前が、噂の…』 「お前を裁く立場でもあり、生かすも殺すも俺次第だという事を忘れるな」 『…………ならお前は、この俺をどうする?』 「…お前は本来だったら裁かれる身だ。しかし、今はその時じゃねぇ。来るべき時に、罪を償ってもらう」 『…………』 「ここにいるナズナはただの一般人。その知り合いなら相手はただの一般人、ただのオッさんだ。……そんな一般人に、用はない」 『…フッ、都合良く解釈させてもらうぞ』 「好きにしろ」 今、サカキを裁く時ではない。サカキを裁くとなれば、おのずとナズナの立場にも影響が出るだろう。しかし忘れてはならないのはサカキは今回の件の、ミリのポケモン達を見つけてくれた貢献者の一人でもある。その事も踏まえて、ゼルはサカキという元ロケット団首領の存在を見過ごした 驚く事に、まさかこのサカキともミリの知り合いだったとは思わなかったゼルは、ミリの交友関係の広さに感服するばかり サカキの好奇な眼がゼルからレンへ向けられる 『…で、その総監様と同じ顔をしたそいつは?双子な事には間違いなさそうだが…やはり本部側の人間か?』 「俺はレンガルス=イルミール、残念だがコイツと違ってただの一般人だ。……これでも情報には強い方だ、お前の噂は兼々聞いてるぜ?」 『……フッ、光栄だと言っておこうか』 勿論悪い意味でな、とニヤリと笑うレンにサカキも不敵な笑みで返す 情報屋であるレンの元にはロケット団の情報を入手するのは容易い事。今回【氷の女王】の一件で再度調べてあるのでサカキが現在どういう人間であり、どういう生活を送っているかはナズナから話も聞いている為、大方把握済みだ まさかロケット団の元首領と会話する日が来るとは思わなかったぜ、そう言ってレンは挑発的な笑みを浮かべた この時点で、ある程度お互いに自己紹介が出来ただろう さて、次は―――と話を進めようとするキリのいいタイミングを見計らい、ミナキは面白そうに口を開く 『サカキさん、いい事を教えよう。……そのレンは、あの白銀の麗皇だ』 『………………、白銀の麗皇だと?』 『あぁ』 『そうだね』 「…おいミナキ、今はその話は関係ねーだろ」 『いや、そこは大切な話だぞ』 「意味分かんねーよ」 『…………………』 「…?首領?」 「「?」」 『…………白銀の麗皇、』 「何だ?」 『俺は認めないからな』 「は?」 『認めないから』 「だから、なにがだよ」 『認めん』 「聞けよ」 「……こいつは何を言っているんだ?」 『面白いだろ?父さんは認めないそうだ』 「は?」 『君もいずれ分かるさ。マツバ君が目を覚ましたら理由を聞くといい』 「(なるほど。把握)」 「(なるほど。首領もか)」 父さんは認めん → |