イーブイ達とダークライ、そして傷付いたスイクンとセレビィとミュウツーの治療を終わらせたカツラとサカキは、普段からよく使用する部屋に場所を変え、カツラはサカキに今までの経緯を長い時間を掛けて全てを話した 【盲目の聖蝶姫】の事、闇に葬った事件、解散したはずの犯罪組織、解決出来なかった事件、そして―――シンオウに起こった「ポケモン凶暴走化現象」 解散したはずの犯罪組織、『彼岸花』。伝説のハッカー、隻眼の烏の手により堕ちたというのに密かに活動を続け、ロケット団復興という甘い誘い文句にロケット団の残党を組み、操られたポケモンを使いミリを襲った。結果ミリは消息不明、波動も感じられない、まさに絶体絶命の危機に晒されている危うい状態 『彼岸花』の手掛かりは一週間過ぎても未だ見つかってはいない。勿論、ミリの姿を。頼みの綱であるミリの手持ち達の所在をマツバの千里眼の力で探していたところ、ダークライを見つけ、そこにサカキがいた。それが大まかな一連の流れ サカキは頭を抱え、大きな大きな溜め息を吐き出した 「――――…噂では、喋るニャースを連れた残党がまだ知らずに活動している話は聞いていた、が…………まさか、まさかアイツらが……」 「………」 「…本来だったらロケット団首領として、復興を目指す彼等の活動には喜ぶべき事だろう。まだロケット団は終わってはいない。俺には居場所がある、アイツらが作ってくれている、と―――…しかし、俺はもうロケット団を再結成するつもりはない。俺にはもう、ロケット団には戻らない。……どう転んだところで、アイツらにとっては…残酷な話でしかない」 「………最後に会ったのは?」 「…シルフカンパニーの一件以降、アイツらには会っていない。今まで何をしていたのかも知らん。…きっとアポロの事だ、ナズナの奴でも探していたんだろう」 今、サカキは大切な存在を見つけ出し、その者と共に歩む為にもロケット団首領の立場を捨て、一般人として暮らしている たとえ再結成されたロケット団の椅子を差し出されたところで、サカキの決意に揺らぎはない。仮初の玉座、他者が作った幻想―――そんな椅子なんかに座る事は、サカキのプライドも含めて絶対にしないだろう 嗚呼、愚かな事だ。真実を知ったらアイツらは、どうなってしまうのだろう サカキの脳裏に浮かべるのは、かつてナズナの部下だった面々―――特にアポロはナズナを慕い、敬い、ずっと背中を追ってきた努力型、ナズナが脱走した後も一時期自分の補佐として奮闘してくれた事もある、頼もしい男だった。ロケット団への忠誠は深く、狂気にも似た光を秘めるその露草色の瞳に、将来のロケット団も安泰だなと思っていた事も事実 さぞナズナは驚いただろう。かつて部下だった者達が、サカキの意思に反してロケット団復興を目論み、自分達の敵になってしまった事を――― 「首領…いや、サカキ。【氷の女王】は勿論知っているね?」 「あぁ」 「ナズナの部下だったランスが女王を狙いにホウエンに行っていた事は?」 「知っていた。といっても…事後報告だったがな」 「事後報告?」 「俺はナズナが脱走した理由を知っているし、行き先も用意した。躍起になる三幹部共には勝手に捜索させてやった。勿論、そこにはナズナの部下達もいたがな。…―――いつしかアポロが、『緑色のミュウツーがホウエンにいる』という事を知ったらしく、俺に【氷の女王】捕獲の提案してきた。………当然、俺は却下した」 「―――…何故ですか、サカキ様。この情報は間違いないです。緑色のミュウツー、このポケモンこそナズナ様を見つける重要なキーワードになります!それを、何故…!!」 「二度は言わん。下がれアポロ」 「サカキ様!」 「気に入らなかったんだろう。有力な手掛かりがあるのに、動こうとしない俺に痺れを切らした。それからアポロの奴は独断で内密に小隊を結成させ、長期任務を命令した。そのリーダーがランスだった。…………この事を知ったのは任務が果たせずに帰ってきた、数週間後だったか。…アイツは随分とやられていた。それだけ【氷の女王】は脅威なのだと驚かされた。任務を果たせなかった処分を下そうにしても、すぐにシルフカンパニーの事件だ。処分は見送った」 【氷の女王】のダークライの技を食らい過ぎた所為か、他のメンバー以上に悪夢にうなされ続けたランスの変わり様は酷いの一言だった 女王にやられ、堕ちた者達は数知れず。表に知られていないだけで、裏では随分な事をやってきたらしい。当然他の組織は女王捕獲を諦めざるおえなくなり、こう言われる様になってしまう 女王を怒らすな―――と ―――そんな女王が自分の知るミリだったとは到底思えるものではない 「―――……少なくても、君が命令を下した可能性が消えて、安心したよ」 「真実を知っていたからな。…命令を下さなかった自分の判断に安堵している」 アポロが差し出した写真 まだ名も付けられてない【三凶】と【五勇士】、そのポケモンを従わす女トレーナー その内の二枚―――緑色のミュウツー、後に【沈黙の暗殺者】と呼ばれるポケモン そして―――このポケモン達を従わせ、本格的に【氷の女王】と呼ばれる様になってしまう、美しい盲目の女 記憶が戻る かつての、断片的な記憶が 「―――――サカキさん、お疲れ様です。シルバーと一緒にお昼寝しません?ぽかぽかといい天気ですから、きっと気持ち良く眠れますよ」 「…手遅れだったとはいえ、思い出せただけでも救いだったな」 「……?何の話かね?」 「…こちらの話だ」 コン、コン、コン、コン、 ガチャッ 「失礼する。…!やはり此処にいたか」 「!ミナキ君、」 「今マツバは寝ている。…この事をナズナさんにも連絡した。暫くしたら向こうから連絡がくる。レンとゴウキ、もしかしたらそこにゼルも加わるかと思う。他のリーグ関係者はゼルからの報告で十分だろう」 「ありがとう、ミナキ君」 「…レンとゴウキとゼル、この者達もミリの為に動く仲間達か?」 「そうだ。ゴウキさんはナズナさんの弟、レンは白銀の麗皇と呼ばれている男。それからゼルは、リーグ本部の総監だ」 「!!……まさか総監までもが動くとは…」 「驚くのも無理はない。ミリ君はポケモンマスター、本部が動くには十分な理由だ」 「………」 元トキワジムリーダーでもあったサカキは当然本部の存在は認知している 総監という、絶対的存在も 彼等はロケット団を、そして『彼岸花』を潰しに掛かってくるだろう。シンオウの脅威を、ミリを襲った制裁を加える為に 喧嘩を吹っ掛ける相手を、間違えたな。そう思うしかない そんな事よりも、だ 「……………、白銀の麗皇…」 「?どうかしたか?」 「まさかこんな形で会う事になるとは……」 「「??」」 「父さんは認めん」 「(なるほど。察した)」 「(なるほど。そっちか)」 父さんは認めん → |