「ミナキ、これは一大事だよ」

「だな。まさかロケット団首領に知られてしまうとは…」

「僕達の家族に新しく父親が加わる事になるなんて!」

「そこか!そこの話か!」

「父親にプラスして弟もいるなんて、随分大家族になってくれたよ。うんうん。ミリちゃんの作ってくれた料理をこの大家族で仲良く食べるんだ、きっと楽しい食卓になってくれるに違いない。何が言いたいかって言うとそろそろミリちゃんの手料理が食べたいかなぁって思うんだよねはははは。あーミリちゃんの作る肉じゃがが食べたい…味噌汁飲みたい……あー」

「気持ちは痛いくらい分かるがマツバ、お前は一度寝ろ。睡眠不足の所為で思考回路がおかしくなってるぞ」

「煮込みうどん美味しかったなぁ」

「寝ろ!」






ミリ料理依存症発動



―――――――
―――――
――








カツラにイーブイ達を任せたミナキはさっそくナズナに連絡を入れた

連絡を受けたナズナはそれはそれは驚いてミナキの話を聞いていた。彼は驚いていた、喜んでいた、安堵していた。声を聞くだけでは彼の様子は推し量り切れないが、あながち間違いではないだろう。ナズナの方は相変わらず息詰まっていたそうだから、イーブイ達の発見は大きな進展に繋がってくれるはず

ミナキとナズナは静かに喜び合った

――――しかし喜びも束の間、次の話題にナズナは押し黙ってしまう






『――――…首領に知られてしまう、とは……』

「マツバが見つけた時にはもう………すまない、もう少し早く辿り着けていれば……」

『…………』






シンオウに戻った後、サカキとはちょくちょく連絡は取っていた。最後に連絡をしたのは、約一ヶ月くらい前か。盲目の聖蝶姫やら『彼岸花』の件やらで色々事情が重なり、あれから連絡は取ってはいなかった

正直な話、サカキには一番知られたくない話だった。無事に息子と再会し、一人の父親として幸せを掴み取った。このまま穏やかに、失われた時間を取り戻しながら平和に過ごしてもらいたかった。ロケット団首領という立場を忘れた、一人の人間として

だからナズナはサカキに報告しなかった。ロケット団の残党が、自分の部下だった者達が、復興を目論んでいる事を。そして復興の為に、『彼岸花』と手を組んだ事―――勝手にロケット団の名で活動し、他の組織と手を組んでいる事だけでもサカキの怒りを買うというのに、何よりミリを狙った行為でさらにサカキの怒りは頂点に達するだろう

彼は病に侵された身で、現在療養中だ。息子やミリの手助けもあって穏やかに過ごせているにしても、不安でしかない。病人は病人らしく、大人しくしてもらいたい。そんな事を言ったら「このサカキをナメるな」とど突かれてズンズン進んでしまうだろう。簡単に想像出来た



小さく溜め息を吐くナズナの真意を知らないミナキは、さらに話を進める







「あの者もまた、ミリ姫の事を"家族"だと言っていた。…ミリ姫が認めた者と判断し、連れてきた。今、カツラさんと一緒にいる。…ナズナさん、少なくても彼は敵ではないと判断してもいいか?」

『あぁ。あの人はこの件に関しては無関係、信用してもいい。この俺が保証しよう』

「そうか、なら私達も信用しよう」






サカキに敵意は全くない。見抜けないほどミナキは馬鹿では無い。カツラに電話している間、イーブイ達に手当てを施すサカキの表情…そして別れ際までの姿は、まさに一人の娘を心配する父親そのものだった

つくづくミリの交友関係に驚かされるばかり。なんたって世間を騒がせたあのロケット団の首領の知り合いどころか、"家族"だと言わせているのだから。これにはミナキも圧巻通り越して笑うしかない








『…後少ししたらゴウキ達が帰ってくる。一報を入れればすぐにでも飛んで帰ってくるだろう。その時にカツラさんとマツバ、そして首領を含めて話がしたい』

「分かった、カツラさんに伝えよう。その時間帯…もしかしたらマツバがまだ仮眠していたら頭数から外してほしい。アイツも千里眼を酷使した…ゆっくり休ませてやらねばな」

『あぁ、勿論。身体を優先させてやってくれ。…ゼルジースにはこちらから連絡をしておく』

「よろしく頼んだ」










光が、見えた





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