サラサラに靡く、茶髪

握られる手、握り締める手



切れ長の眼、

灰色の瞳が優しく揺らぐ







「貴女に逢いたかった…聖燐の舞姫」

「私も貴方に逢いたかった。暗闇の中ではなく、こうして…互いの温もりが分かる、この光在る世界で」







彼は微笑む、私も微笑む


手の温もりは確かに彼の存在を確かめるべきに値し、彼が此処に生きているという証。舞を舞った関係、私達の回りには淡い光りが、まるでナズナさんを歓迎していた

スラッとした長身、肩下まである茶髪はサラサラと靡き、彼が着ている白衣は汚れ一つを許さない。左目にある眼帯は、彼が幼少の時に病気を患い、視力を失った。そして、新たな力を得た左目でもある。――写真で見た彼と、変わらない姿だった

互いの手を握り合わせ、彼が落ちないのを気遣いながら降下していく。すると時杜が私の肩に触り、刹那はナズナさんの後ろに回り肩に手を置いた。その時の二人は小さく笑い合い…久々の再会に、私と時杜は顔を見合わせ笑った



――カツン



時杜と刹那の力を借りつつ、自分達の足に地面が着いた。ナズナさんの靴の音、私のヒールの音が、静かに響いた

地面に足を踏み締めながら、ナズナさんは立つ――が、グラッと身体が傾き私はナズナさんの身体を支えた。やっぱり半年以上も動かしていないから膝が笑っている――彼の状態は、植物人間が目覚めたばかりの状態とは変わらないから





「すまない、聖燐の舞姫…っ」

「貴方の状態は植物人間が目覚めたばかりの状態と変わりはありませんから…無理はしないで下さい」

「ミリ!」






私達に駆け寄る、皆


レンとゴウキさんに、カツラさんとナズナさんのポケモン達――ナズナさんを支えながら、私は三人を迎える

ナズナさんも皆の姿を見て、小さく笑った







「…久し振り、だな。カツラさん、ゴウキ、そしてお前達」

「ナズナ…!何がともあれ君が無事で本当に良かった…!」

「クロッ!」
「リュー!」
「フィー!」
「キシッ!」

「舞姫、ナズナは俺が支えよう。…ナズナ、無事で何よりだ」








カツラさんと固い握手という感動の再会を果たし、ポケモン達にはそれぞれ頭を撫でてあげるナズナさん。ゴウキさんが「自分が支える」という言葉でバトンタッチをしたが、私は二人が小さく笑った所を見逃さなかった



久々な再会、皆はとても笑顔で満ち溢れていた。私は微笑みながら、肩に座って来た時杜と一緒に眺めていた。刹那はもちろん、あの輪の中に入っている。彼もナズナさんと再会出来て嬉しいんだ

スッと隣りに現れたのは、輪の中に入っていないレン。ポンッと頭の上に手を置かれ、見上げればレンが「良く頑張ったな」と言ってくれた。返事の代わりに微笑を向け、その逞しい身体に抱き着いた

私に笑いかけながら頭を撫でるレンが…視線を上げる。丁度ナズナさんも視線をレンに向けていた。互いに視線が合い…少し、沈黙が広がった

最初に言葉を発したのは、ナズナさんだった






「…そして初めまして、だな…白銀の麗皇」

「あぁ」

「お前は色々俺に聞きたい事があるだろう。…無論、内容も既に把握している。けど、後でにして欲しい」

「分かっている。別に急かしているわけじゃねーし…俺は今すぐにでもミリを休ませてあげたいのが本音だ。それにそっちこそ…しばらく休みたいんだろ?し色々再会を果たしたい気持ちもある…また後日、日を改めるぜ」

「…すまない、そうさせてくれ」






申し訳なさそうに言うナズナさんの表情から、疲労が見えているのは周知の事実。ほとほと参っているみたいで、ゴウキさんに支えてもらうのがやっとな位だ

対して私の方も現状は一緒で、正直立っているのが辛い。ナズナさんをクリスタルから元の形に戻す時に、舞を舞って、力も使ったから疲労が倍増。洪水に巻き込まれた痛みも含めると、どうして立ってられるかが不思議でしょうがない。とりあえず今はレンが私の肩を抱いて支えてくれているから、なんとか平気でいられるんだけど…


聖燐の舞姫、と今度は私に声が掛かった






「貴女には色々礼が言いたい。…それに貴女も、私から話が聞きたいだろう。もちろん、俺からも」

「……それはお互い、体調が良くなった時にでも話し合いましょう。まずは一旦解散して…そちらの体調を見て、会いましょう。皆さんもそれで良いですね?」






そう聞いてみれば、満了一致で皆が頷いた

皆も疲労が溜まっていた

只でさえ此処に来るだけでもキツい。時間はもう夜を回っている頃だろう――






「時杜、空間を」

《はい!》








紅い空間が、開かれる





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -