眩い光、弾けた光



光が、変わる





―――人の、形に









「…そろそろ、お目覚めの時間ですよ…ナズナさん」







腕を伸ばし、頬に触れる



スッとした切れ長の瞳が、ゆっくりと開かれる







「…おはようございます、ナズナさん。久々の光は、どうですか?」

「…あぁ、とても…眩しいな」






灰色の瞳が優しく微笑み、頬に触れた手に自分の手を重ねた




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オレンジ色の夕焼けが、空全体に色を染め上げる。その夕焼けを背景に――豪邸が、まるで写真の一部の様に存在していた。黒一色に塗られた豪邸は何処か不気味さを漂わせ、反射する夕焼けの日差しが、その雰囲気を盛り立てる

豪邸の中にある、広過ぎる庭には不気味さと一変してとても綺麗な花が咲き並んでいた。白い花、黄色い花、夕焼けの色と同じ色の花など…その色は、まるである人物を連想していそうで――


その庭を一望出来る、豪邸の中にあるベランダに、ゼルは居た






「紅茶が入りました、ゼル様」

「あぁ」






ベランダにある、西洋風にコーディネートされた黒い椅子に机。その机の上に並べられるのは、とても美味しいそうなブルーベリーレアチーズケーキに、側近にいるガイルの淹れたての紅茶。オレンジ風味のアールグレイの香りが鼻をくすぐる

フォークを持ち、ブルーベリーレアチーズケーキを一口分に切り分け、口の中に含める。「相変わらずガイルのケーキは旨いな」と言えば「恐れ入ります」とガイルは頭を下げる

ガイルを視界に入れながら、またゼルは口に含める。それから紅茶を一口入れ、此処から一望出来る庭や空を見上げた






「あの夕焼けと同じ…あのお方も、綺麗なオレンジだったな…」






恋い焦がれるは、先程会った女

クリスタルの光に照らされた、静かに眠る愛しい存在







「…ゼル様、一つ聞いてもよいでしょうか?」

「お前の一つはいつも一つじゃないだろーが。…で、何だ?」

「ではまず一つ。どうして私達がミリ様を向かいに行った時…あのクリスタルを破壊しなかったのです?」

「あぁ…アレか」







ゼルとガイルがハナダのどうくつに居た理由は、他にもない"ナズナ"という男を探し出し――殺すこと

または証拠湮滅として気配を探し出した結果、あの洞窟にたどり着いた






「お前の言う通り、お前らがミリ様を向かいに行った事、壊そうとしたさ。…だが、俺の力ではアレを破壊する事が出来なかった。お前が壊せなかったのと同じだ」

「ゼル様の、力でも…」

「まぁ、それもどうでも良くなったんだけどな」

「…ミリ様が、現れたから?」

「そうだ」






カチャッ、飲んでいたカップを皿の上に乗せる







「俺に走ったあの動悸、痺れる様な感覚――あれは紛れもない、俺達が探し求めていた存在…。心が踊ったぜ、目的を忘れるほどに、な」

「…………」

「あの方はあのクリスタルを捜していた。…何故あのクリスタルを必要としているかは分からねぇが、アレを壊してもし泣いてしまわれたらと考えると…心が痛くなってな。まぁその顔もそそるものがあるが」

「フッ、その気持ちは分かります」

「いずれにせよ…ミリ様の前に俺達が出迎えるんだ、前々から俺達の存在を知ってもらえた方が…面白いだろ?」






ニヤリと口元をつり上げながらまた一口、口に含める

オレンジを見つめる藍色の瞳は、とても優しい色を浮かべていたが…呟いたと同時に浮かんだのは、悪戯心と欲望。その為にもあえてミリ様を連れ出さなかった、とゼルは言う


では後一つ、とガイルは言う







「レンガルス=イルミール様についてはどうなさいますか?」

「……もちろん、アイツには絶望を与えてやらないと気がすまない…。大切なミリ様の隣りにいる、と考えるだけで…虫酸が走る」

「調べによると、レンガルス様は何度か絶望に近い事を覚え、実際に精神に障害をお持ちになられたと。今は完治しているそうですが、如何しますか?」

「なら都合が良い。…またアイツに絶望を。ククッ…どうせ俺の存在に気付いたら驚くだろうな…楽しみだ」







喉の奥で笑う彼の瞳には、憎しみ

何故そんなにもレンガルス=イルミールの存在に、憎悪に近い感情を露にするのだろうか。藍色の瞳が、もっと暗く歪んでいく――


そんな事よりも、とゼルは眉間に皺を寄せる






「ガイル、どうして此処に砂糖がないんだよ砂糖が。紅茶に砂糖は必需品だろーが」

「…ゼル様、砂糖をお入れになられますとオレンジの風味が薄れてしまいます。糖分摂り過ぎにもなりますが」

「その糖分は仕事で使う。むしろ摂取しないとやっていけねぇ。…サーナイト、念力で砂糖取って来い。今すぐに」

「サーナイト、ゼル様のお体の事を考えて念力を止めろ」

「サ、サー…」









どうやら甘党の様ですね





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