不思議な力 不思議な能力 他人には無い、特別な力 Jewel.10 この世に存在するポケモン自体、数多の世界を渡ってきた私には彼等もまた不思議な生物の一つでしかない。私の知る生物でも動物でもない、元来魔獣と呼ばれる存在。ボールという手軽な物体の中にしまえて持ち歩ける事から魔獣ではなくポケットモンスター、縮めてポケモンと呼ばれる様になった、ただそれだけの違い。この世界に存在するポケモンは人間の数以上に存在し、また種類も様々に豊富だ。勿論他の世界の生物達も同様で、彼等は彼等で精一杯生きている。食物連鎖、弱肉強食様々に…………流石にこの夢の世界ポケモン世界でそんな夢壊す様な事は考えたくないけど 突然なカミングアウトだけど、この子達には不思議な力がある 他のポケモン達には存在しない、別の力。一体どうやってその身に宿し、いつから使いこなしていたかは、本人達にも分からない。不思議な能力、不思議な特性、不思議な力。私からしてみれば全てのポケモンが特別で不思議な存在で凄い力を持っている不思議生命物体しか見えないが、この世界の住人及びポケモン達からしてみれば彼等は特に不思議な存在らしい。改めて考えてみると確かに頷ける部分が多々あるし、比べてしまえばその差は歴然 彼等は別のポケモンの特性や能力が備わっていた 蒼華、この子の種族はスイクン。ジョウト地方に最も有名とされている伝説のポケモン。彼は本来知られるスイクンとは違って別の特性、【へんしょく】というカクレオンが持つ特性を持っていた。【へんしょく】とは、受けた相手の技のタイプによって様々なタイプに変色出来るカクレオンしか持たない特性を、蒼華は使えた。しかも驚く事に、変色後にまた同色の技を受けても無効化して相殺してしまうから驚きだ。これはカクレオンにはない特殊能力、能力の仕組みを理解しない人から見てみればある意味無敵な能力だろう 時杜、この子の種族はセレビィ。同じくジョウト地方で最も有名とされている幻のポケモン。彼は他のセレビィと違って【時渡りの力】以外にも【時空と空間を司る力】の能力を宿していた。そう、それこそシンオウ地方で神話とされている伝説のポケモン、ディアルガとパルキアの持つ能力を時杜は持っていた。実戦向きでは無いけれど、彼の力は日常で大いに役立ってくれた。どこぞの●こでも●アみたいに空間と空間を繋げたり、タイ●マシンみたいに過去や未来に連れてってくれたりと、まさに夢の様な力。お陰様でデンジとオーバーには心配掛ける事無く(旅をしても交流は続けていた)(週二ペースで)、どんなに危険な場所だったり超難関立ち入り禁止区域だったとしても簡単に遊びに行く事が出来るから嬉しい 刹那、この子の種族はミュウツー。今はまだ人々に認知されていない新種のポケモン。彼は本来知られる(現時点で存在するかは不明だけど)ミュウツーと違って、その身体を透明に姿を隠す事の出来る能力を持っていた。これといった名称が無い為、私はその力を【物理透明】<インヴィジブル>と呼ぶ事にした(そのまんまとか言わない)。物理透過まではいかないけど、争いを好まない平和主義者な刹那にはもってこいな力だろう。けどちょっとその能力を使ってつまみ食いしたり盗み食いしたりするのは悪い癖かな。可愛いからいいけども そしてもう一人、 「あらー、これはびっくり」 黒銀色のダークライ、その名を闇夜 最近仲間になったこの子にも特別な力が宿していただなんて誰が想像したか 「こういう事もあるなんてねー」 《私達と同じだな》 《蒼華!この時代にも僕らと同じ仲間がまだ存在してくれたね!》 「…」 《新たな仲間の誕生だな》 闇夜との出会いはしんげつじま。彼の嘆きの叫びが私を呼んでいる様な気がしたから、眠たげな皆に申し訳なく思いながら時杜の力で声の元凶でもある場所に行き、ダークライと出会い、仲間に加えた 誰よりも優しくて誰よりも思いやりのあるからこそ、自分の能力で傷付く回りのポケモンや人間が嫌で彼等の為に一人になった。引き籠もりを余儀無くされた闇夜。光の在る世界に出た彼は心底嬉しそうだった。でも何故かボールには入らずに大体私の影の中で一日を過ごしていた。まぁボールの中にいるより外に出た方が開放感があっていいと思うけど。まだ一緒に過ごして日数は少ないけど、分かった事は彼はちょっぴり臆病だけど抜け目が無くてナナシの実が好きな事。何なんだこの子私をキュン死(※死語)させたいのか← さてさて、話を冒頭に戻そう 仲間になった闇夜の実力や技や能力などを知る為に、早速ナナカマド博士から頂いたポケモン図鑑を開いたのが始まりだった。時杜の眼を借りつつも図鑑を闇夜に向け、一体どんな技を持っているのかなぁ〜ルンルンと思っていた最中だった ………あれ、何でこの子…悪タイプなのに鋼タイプも持ってんの? 「闇夜、君はその力はいつから持っていたの?」 《いや…私も今初めて気付いた》 「いやいや、技に普通に『アイアンクロー』とか『てっぺき』とかあるじゃん。使ってんじゃん」 《そうか。それは知らなかった》 「えー…」 《今日の夕飯は赤飯だな…!》 《赤飯赤飯〜!》 ダークライというポケモンは、本来なら悪タイプだけなはず。影の中に潜り込めちゃったり物理透過出来ちゃう辺りゴーストタイプじゃないのか、と疑問に思っちゃうけど、ダークライは悪タイプオンリーだ しかし、図鑑には悪タイプの表示の他にも何故か、なーぜーか鋼タイプが加わっていた。何故。技一覧にもなーぜーか鋼タイプの技が。何故。色々と何故。特殊能力って言ってもタイプ一つ増えていいの?マジ? 驚きを隠せない私を余所に、仲間が増え、しかも自分達と同じ特殊能力を持っていた事が余程嬉しかったのか皆の喜び様がハンパない。ちょ、君達ちゃんとお仕事して!闇夜見て!視界が!視界が様々に動いてて目が回る!あ、違っ、心が回る!← 「…」 《無理も無い。今はその様な人間が造ったハイテクなモノがあるから判明出来るが、本来は知る手段は無い》 《そうだね。特に蒼華の能力もミリ様と図鑑のお陰で発覚出来たんだしね》 「…」 《あぁ》 《お前達も分からなかったのか》 《蒼華と時杜は分かっているが、私もお前と同じでこの【物理透明】という能力をいつ授かったかは覚えていない。だからお前の気持ちがよく分かる》 《なるほど》 《僕らの能力については話が長くなるから別の機会に話すよ》 蒼華と時杜は昔のポケモンで、前世の【私】の手持ちだったのは分かる。分かるけど、前世以前に記憶が無い私にはどうして彼等がこの力を持ち、いつから私の手持ちになったのかも分からない。知っている筈なのに知らない現実。この胸の内がもやもやする言い様の無いもどかしさ。それは私だけではなく、皆も同じで 私は手を伸ばした その先は闇夜の身体。私の手に気付いた闇夜は何も言わずにこちらに寄ってその黒銀色の身体に触れさせてくれる (嗚呼、何故だろう) (私はこの身体を、知っている) 黒銀色のその身体。黒と思いきや光の屈折によってまるで鋼の光沢の様に煌めく、本当に鋼タイプみたいな身体だ。触れた感触は、至って普通な…鋼の感触は感じられない。影の中に潜れちゃうくらいだから、普段は悪タイプオンリーで行動しているのか (嗚呼、何故だろう) (私はこの感触を、知っている) 《そういえばこんな事があった。私を嫌う別の種族の攻撃を受ける際、反撃はせずにその場を凌ごうと覚悟を決めて攻撃を受けたら思いのほか痛くなく平然といれた事があったな》 「へぇ…なるほどねぇ。普段は悪タイプだけど、戦闘で、特に攻撃を受ける時に鋼タイプになれるってわけね」 《防御に特化しているんだな》 「…」 《ほう、少々似通った所があるな》 《ケムッソなどが放つ苦手な技もさしてあまり痛くなかったが、ゴーリキーなどの物理技を受けた時は無駄に痛かったな。軽く意識が飛んで数日は動けなかった》 《闇夜、それもう瀕死状態だよ》 「あー…まぁそうなるよね」 悪タイプと鋼タイプ、共通して言えるのは格闘タイプに弱い事。ただでさえタイプ一つで効果は抜群、二倍の威力になるものをタイプが二つで苦手な技食らったら四倍の威力になってしまう まぁ、そうなるよね、戦闘不能になっちゃうよね。意識失っちゃうよね、うん 《…つくづく、自分が嫌われていた理由も分かってきた気がする。…こんな私を、お前達は恐ろしくないのか?》 「…」 《笑止。たかだかそれしきの事、我等が臆すると思ったら大間違いだ》 《そうそう!むしろ光栄に思った方がいいよ!僕らは他の仲間達とは違う、ミリ様に認められた存在なんだから!》 《認められた、存在…か。そうだな、そう思えばいくらか気が楽になる》 《お前はそのネガティブ思考を改めた方がいいぞ、闇夜》 《いや、淡々とし過ぎるのもどうかと思うが…精進しよう》 「可愛いなぁ」 私の力の影響かな、と一瞬頭に過ぎったけど、どうやらその可能性はなさそうだ。しかし、この力もある意味で無敵な力になってこの子を守ってくれるだろう、それだけは言える でも―――もし今後増えていくだろう仲間達も、皆と同じ色違いで特殊能力付きだったら、流石に原因を追及しなくちゃいけなくなる 「(色違いだから、しか…今のところ言えないな…)」 水色のスイクン、紅色のセレビィ、緑色のミュウツー、黒銀色のダークライ 彼等は全員色違いだ 色違いは色違い同士、引き寄せられる何かがあるのかもしれない。あれかな、諺で言う「類は友を呼ぶ」ってやつ?あながち間違っちゃいないと思うけど。何せ私の知り合いとか変人みたいにキャラ濃い人達ばかりだったから。そしてもう一つ、まさにこの言葉に尽きるだろう 偶然ではなく、これは必然だと 「闇夜の弱点も分かった事だし、今後の戦法も考えなくっちゃね〜。図鑑を見る限り、素早さの能力値が高いから…うんうん、技の組み合わせからも色々試行錯誤すれば格闘タイプより強いポケモンになれるかもしれないね」 《なら早速作戦会議ですね!》 《そして夕飯は赤飯だ》 「…」 《結局食べ物かお前は》 「あはは、それじゃ改めて今日の夕飯は赤飯にしようか」 記憶が無い以上、情報が少なく断言出来ないけれど、ゆっくりと知っていけばいい 私達がこうして出会って、皆に能力がある理由も、いつか明かされる時が来る――――そう願いたい 《色々と世話になる、主》 「一緒に世界を楽しもうね、闇夜」 さて、闇夜の戦法を考えた後は本格的に旅をしよう 闇夜以外にもどんな出会いが待っているんだろう。この際、出会うポケモンが色違いばかりだったら、それはそれで面白くなりそうだ でも、なんでだろう 私は蒼華と時杜と刹那の他にもまだ、色違いのポケモンを持っていたいた様な気がするけど――――嗚呼、やっぱり思い出す事が出来ずに今日も一日が過ぎるのだった (霧に包まれるあの白と黒の残像は、一体何だろう) |