何処かで鈴の音が聞こえる 微かな音、しかし確かな音 鈴の音は鳴り響く 絶え間なく、ずっと ―――…この鈴の音の意味は、 「………ミリ様が、危ない」 ―――――――― ――――― ――― ― 「―――――…此処に来る前から、シンオウには"何か"があると思っていた。キッカケを作ってくれたのは私のお友達からの手紙からで、友達の為にも突き止めようと思った。実際に船に乗って、シンオウへ向かう最中に感じる妙な予感…嫌な予感さえ感じた。最初はこの嫌な予感は聖蝶姫絡みかと思っていたけど、違った。原因はそう、貴方達の存在だった」 咆哮が、上がる 「闇に蠢く不穏な影…それからシンオウ全土に感じる嫌な予感の元凶を探る為に、私は密かに三匹を放った。この子達は動けない私の代わりに眼となって、くまなくシンオウを巡り、探してくれた。人間では無理がある場所や、人間では知り得ない情報など様々に、ね。それに此処のポケモン達が積極的にお手伝いしてくれたから、より濃厚な情報を入手してくれた。そして私達は見つけた。貴方達という、存在を」 淡く輝くクリスタルから放たれた冷たい冷気が、まるで光が爆発したかのように全土一体に破裂する 「随分と手の込んだ事をしていたみたいね。誰にも気付かれずに、誰にも悟られずによくも此処まで浸蝕出来たね。怪電波…貴方達が放った微量の電波は着々とポケモン達を蝕んでいった。…見事なものよ、指一本で数多のポケモンを従えるまでになってしまっているんだもの でも、それも今日で終わり」 その光を浴びた瞬間、飛び掛かろうとしたポケモン達の動きが止まった。パキッ、と何かが凍る音がしたと思った瞬間には、彼等の身体は氷が張り付き――――気付けば彼等は氷の中に閉じ込められてしまっていた まさに、一瞬 あんなに沢山いた野生のポケモン達が―――スイクンの咆哮一つで、一瞬にして氷付けにされて見事に散った 「元々貴方達を倒すつもりでいたからね、ただその日が早まっただけ。貴方達の目的は分からない。貴方達がどうして私を狙う理由もね。私を狙うだけなら好きに狙えばいい。私は逃げない。でも他の人間やポケモンを巻き込むのなら話は違う。その為に人を簡単に殺してしまうなら、尚更。―――…私は命を粗末に扱い無下にする行為を絶対に許さない」 強い光を放つその漆黒の瞳、相手を鋭く見据えた揺るぎない眼に、ゾクリと背筋に寒気が走る 「だから私は…いえ、私達はポケモン達の為にも、シンオウに住む人達の為にも、友達の為にも、そして皆の為にも貴方達を此処で倒す。だから貴方達の企みに負けるつもりはない。…――覚悟しなさい」 その言葉を最後に、ミリの手持ち達は駆け出した 狙う先は勿論、アポロとランス スイクンは冷気を携えクリスタルから冷気を放出させる。セレビィは宙を翔び赤い葉を風に乗せ、リーフストームを繰り出す。ミュウツーは具現化した武器を持ち、ダークライはミリの影を離れて刹那と共に二人に飛び掛かった。イーブイ達もまた、勇猛果敢に皆の後に続いた スイクンのぜったいれいどによって自分達のポケモン以外を氷付けにされてしまった二人には成す術もない。形勢逆転、しかし二人が浮かべる笑みは変わらなかった。一体何故。何か向こうは企んでいるに違いない。気をつけて、そうミリは皆に伝えようと口を開こうとした その時だった 「――――…天晴れ天晴れ。実に興味深い話だ」 男の声が、聞こえた 「流石は我等が聖蝶姫、我等が女王。その推理力と洞察力、この状況に対する冷静さ、そして昔と変わらぬ強者の眼は惚れ惚れしてしまう。ククッ、愉快愉快。なら是非とも我々と共に同行し、ゆっくりと茶を交えようではないか。時間はたっぷりとあるのだから」 ミリが後ろを振り向けば、眼前に迫るのは―――…月光に煌めく、白銀色の髪 妖しく光るピジョンブラッドの瞳は、焦がれてやまない大好きな瞳で 「……レ…ン…………?」 遠くに見えたのは、一人の男 彼の口許は歪んだ笑みを浮かべていた そしてミリの眼前まで迫る男は口角を吊り上げたまま―――レンは勢いを殺す事なくその脚を振り上げ、無慈悲にもミリに向かって振り降ろした 何かが壊れる音が響いた → |