嫌な予感は、的中するものだ









「これは…一体…!」






リゾートエリアの上空で、ボーマンダの背に乗っていたゲンは下の様子に驚愕した


今日はジムリーダー総出でミリを歓迎する歓迎パーティが開かれる日。仕事を午前中に終わらせ、各ジムリーダー数人を迎えに行ったゲン。仕事の都合上準備に参加出来なかったヒョウタとメリッサとマキシマム仮面(マキシ)とトウガンと再会を果たし、共にサバイバルエリアへ飛行していた時だった。言い様の無い予感、何かが崩壊するような嫌な予感が背筋を走り、途中から別れて帰路に戻ってから、約数時間…――


今自分達が滞在している別荘から離れた見晴らしのよい段丘の上に、同居人のシロナとダイゴの姿を発見した


シロナとダイゴの姿を発見したまではよかった。驚愕するべき点は別にある。その二人は―――数多のポケモンと、激しいバトルを繰り広げていたのだ。本来此処は景色の良い、最近まで皆でピクニックをして楽しんだ場所だったのに、今ではその面影すらない

これは一体、どういう事だ

何故、シロナとダイゴが戦っている?何故、こんな場所に凶暴なポケモンがかなりの数で集結し、二人に襲いかかっているんだ。何故、どうして―――…そして、ミリが居ない。彼女は今、何処にいる






「二人に加勢するんだ!ボーマンダ!りゅうのいかり!ルカリオ!お前も出て来い!はどうだん!」






上空からボーマンダのりゅうのいかりが放たれる。強靱な口から竜の如くに青い稲妻が下界にいる野生のポケモンを襲い、丁度ダイゴのエアームドに襲いかかろうとしたポケモンを、何匹か巻き添えを食らわせ吹き飛ばした。ゲンがボールを投げれば、現れたのは相棒のルカリオ。急下降しながら手から渾身の一撃を放てば、シロナのトリドトンに攻撃を仕向けていたポケモンに直撃し、ダメージを与えた

突然の加勢の攻撃に戦いに集中していた二人は上空にいるゲンに気付き、切羽詰まった表情のままに空を見上げた






「!ゲン!!」

「ダイゴ!これは一体どうなっている!?何で君達は此処で戦っているんだ!ミリは何処に…!?」

「詮索は後にしてくれ!今はそれどころじゃないんだ!」

「ゲン!今すぐミリのところに行って!ミリが…ミリ危ないのよ!!」

「!!!」



「「「グオオ゛オォォオ゛オオッッ!!!」」」







珍しく焦った表情のダイゴ、涙目を浮かべるシロナ。二人の手持ちのポケモン総出で繰り広げられている、激しいバトル

ゲンは別荘がある方角を、初めて見た。そこで気付く、自分の嫌な予感の正体を。遠くに見えるあの黒煙に―――サッと、血の気が引いた

その時、雄叫びが轟いたと同時に自分がいるボーマンダに向かって攻撃が放たれた。間一髪迂回して回避出来たが、目の前に立ち塞がるのは数体のポケモン、飛行ポケモンだった。バサリと羽が羽ばたく音と共に、一斉に攻撃を仕掛けられる。強風が迫り、回避するボーマンダにゲンはもう一度りゅうのいかりを命じる。りゅうのいかりは命中し、煙と共に落ちていく

何者かの手によって操られているんだと、ゲンはすぐに気付いた。そう、それはこうてつじまで起きた怪電波事件の様に。しかし今回は完璧に操られていた。彼等は的確に、自分達を狙っている。しかもこれ以上先へ行かせない様に、別荘に向かわせない連携プレイ…






「時間稼ぎか…!!」







シロナとダイゴが此処で足止めを食らっているのを見れば、奴等の目的は―――ミリ

どういった経緯で引き離されたのかは分からないが、二人は敵の術中に嵌まってしまったのは間違ない。しかも奴等は念入りに策を講じての、襲撃。居場所は知られていない。なのに、どうして






「このままでは自滅だ!ッ、ボーマンダ!私を降ろせ!」

「!!ゲン!?」

「私も加勢する。一体何があったか戦っている時に聞かせてもらう!―――ボーマンダ!お前はすぐにサバイバルエリアまで行って皆にこの事を伝えろ!そしてミリの救出を!ミリはまだ―――生きている!!」

「「!!!!」」






悪魔の羽をバサリと羽ばたかせ、降下するボーマンダの背からダイゴの隣りへ飛び降りたゲンは、腰からまたボールを取り出して投げ付ける。ルカリオの隣りに現れたのは、ゲンの残りの手持ちでもあるアブソルとリングマとメタグロス。彼等もまた、咆哮と共に地を走り、爪を振り上げた。ボーマンダはゲンの指示に頷くと迂回して、サバイバルエリアの方角に翼をはためかせて飛び去っていく。ボーマンダの行く先を阻止しようとするポケモンを、地上から攻撃する事を忘れずに



ミリの波動は特徴的で、独特だ。今の状態だと彼女が何処にいるかまでは分からないが、彼女か無事に生きてくれている事だけは分かった


ゲンの言葉に驚く二人だったが、安堵の息を吐いたと同時にすぐに視線を敵に向ける。表情は真剣だったが、笑っていた。無事に生きてくれていた事が、彼等の心を強くさせ、希望を持たせた






「――――…だったら話は早い!早く此処を乗り切ってミリと再会をするんだ!行くぞ!エアームド、はがねのつばさ!メタグロス、しねんのずつき!ボスゴドラ、アイアンテール!」

「えぇ!絶対に歓迎パーティをするんだから!あの子が無事だと分かった今…その為にもこんな場所で負けられないわ!ガブリアス、りゅうせいぐん!ルカリオ、しんそく!トゲキッス、エアスラッシュ!トリドトン、ストーンエッジ!」

「ルカリオ、はどうだん!アブソル、かまいたち!リングマ、きあいパンチ!メタグロス、コメットパンチ!ボーマンダの分まで頑張るんだ!」









しかし、嫌な予感はまだ渦巻いている

嫌な予感はこの事を差していたのかは、今のゲンには分からない






一瞬、あの男の顔が脳裏を過ぎったのは―――自分の気のせいなのだろうか













衝撃が、咆哮が、空気を揺らした







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