自分が進む道

自分が歩む未来

その前に、考えてみましょうか


ポケモントレーナーというものを












Jewel.08














ポケモントレーナーとは、くどいようだがトレーナーカードを所持し、手持ちに一匹でもポケモンを引き連れた者を差し、もっと遜った言葉を言えばポケモンを育てている人全般を差す言葉でもある。その中でも主にポケモンバトルをする者を、ポケモントレーナーと言われている。そうなれば様々な職業を抱え、ポケモンを育て戦わせている者全てがポケモントレーナーとなっていくのは幼児でも知っている、彼等にとっては何の難しくもない至って普通で常識な事である

ポケモントレーナーにも様々な肩書きや職業が存在する

例えばポケモンコーディネーター。ざっくばらんに言えばポケモンコンテストに参加するポケモントレーナーの事を差していて、コンテスト大会に出場し優勝する事を目的に、ポケモンをより魅力的に魅せる演技を追求するトレーナーを言う。ポケモンブリーダーはポケモンの健康管理を中心に技術的な面においてあらゆる方向にポケモンを育成・訓練するトレーナーを言う。他にもポケモンの研究や観察を行なう者を研究者、特にポケモンウォッチャーと呼び(またウォッチャーには博士号を取得した学者も差している)、ポケモンレンジャー、ポケモンドクター等様々に存在している。中にもポケモンリーグ協会公認であるジムリーダーや四天王など、様々な面でもポケモントレーナーは存在をしている

勿論ポケモントレーナーがポケモンに関する職業や企業を展開し名を馳せていく中、勿論一般企業や一般人―――ポケモンを別とした職業を主とする、いわば人間専用の職業がちゃんと良い具合に存在していた。この職に就く者の中にもポケモントレーナーもいるが、殆どの人間はトレーナーを趣味として楽しんでいたりと、この世界は良い具合に成り立っていた








「ほーんと、この世界はよくしたものだよねぇ〜」








絶妙なバランスで人とポケモンが支え合って生きている

そんなこの世の情勢につくづくミリは感心するばかり







「トレーナーカードを持っていなくても、ポケモンを育てるだけでもポケモントレーナー。バトルをしたらポケモントレーナー、バトルをして金を稼ぐだけでもポケモントレーナー、何をしてもポケモントレーナー……社会にはぶられ路頭に迷ってもポケモン捕まえればポケモントレーナー、収入が無くてもトレーナーカードがあればポケモントレーナー…………………いやぁ、よく出来てる世界だよねー、ハハッ」

《ミリ様、影が差してますよ影が》

「よくもまぁこの世が成り立っていられるよねぇ。全てが『ポケモントレーナーだから』って許されちゃうし、最終的な逃げ先なんてポケモントレーナーになれば良い話だもんね。笑えるー。就職困難で結局見つからなくて浪人してしまう学生達や家庭の為、生きる為に必死になって職を探す彼等の苦労を知らないね、きっと。ハハッ」

《主、落ち着け》

「流石に国の税金とか年金とか保険とか支払う義務はあるみたいだけど、まさか年に一回だけの支払いで十分だなんてどれだけこの世は裕福なんだ。まぁポケモントレーナーでも安定した職に就いていない限り毎月高い金額払うのは大変だと思うけどさー、こんな、夢に向かってマジになれる世界も探せばあるものなんだねー。おねーさん本当にびっくりだよー。流石はポケモン万歳ポケモンありがとうポケモン、てね。ハハッ」

「…」
《戻ってこい》








何処か遠くを見て(いや、視力は無いが)影をさした含み笑みを浮かべながら、ミリは怪しく笑う

そんな彼女に周りのポケモンは若干引き気味だ

何せトレーナーがこんなに大量留置で大量発生していても、ニートという存在が居ないのだから。ニートでもポケモン持ってバトルすればポケモントレーナー、ホームレスでもトレーナーカードを持てばポケモントレーナー。探せば何処かにそういう無職な人間が隠れているかもしれないが、流石はポケモンの世界だ。ミリはぼんやりと別世界の悲惨さを懐かしんだ



さて、そんな話はさておき



トレーナーカードを入手し、思わぬところでポケモン図鑑も手に入れる事に成功したミリ達は、現在マサゴタウンのポケモンセンターの宿泊施設で寛ぎながらも、ポケモントレーナーとしてどう進んで行こうか、と方向性を考えていた真っ最中だった。どうしてこんな嫌な話になってしまったのかはこの際気にしない方向で









「……ま、此処はオーソドックスにジムを巡ってジムリーダーにバトルを挑んでリーグ出場を目指すのもアリかもしれないけどね」








ゲームではジム戦攻略は必ずしも通らなければならない道。バッチが無いと秘伝マシン等便利グッツが使用出来なかったり、バッチが無いからと強制的にジムに案内されたりと、次のステージに進められないのが主人公の悲しき運命に、ゲームの絶対の決まり

しかしそれはゲームであって今は違う。この世界には勿論ジムリーダーが存在し、リーグ公認リーグバッチも存在する。これを八つ、地方にいる全てのジムリーダーを倒し認めて貰わなければ貰えない代物で、八つ集めてこそ年一に行われるリーグ大会に出場出来る。バッチがリーグ大会の出場権みたいなものだろう。多くのトレーナーが大会出場を目指す為にジムリーダーに挑戦を挑む。ミリもその内の一人で、まだジム戦には挑戦していないが彼女の頭の中ではもうジム戦に挑戦するのは当然だと考えていた。勿論、手持ちの三匹も同様にいつでも戦える様に準備は万全だった

むしろ、







「…」
《ジム戦だけでは少々物足りない気もするがな》

《うんうん!ミリ様、蒼華の言う通りジム戦だけではなく色んなものに挑戦してみたいです!》

《あまり戦闘を強要しない競技があれば尚嬉しい》

「お、皆やる気満々だねー」







ミリもやる気があれば彼等もやる気十分だった

彼女のやる気に釣られたのもあるのだろう。しかしやはり彼等にもこの世に流行している様々な競技や最先端に触れてみたい気持ちがあった。蒼華と時杜は何百年も昔から生きていても、人間の遊戯には触れる機会が無ければ興味が無く、無論今まで眼中に入れていなかった。記憶が無い刹那に至っては全てが全て初めてな事なのだ。好奇心が彼等の心を動かしていた

それにミリと一緒に楽しみたいのもあれば、やるからには徹底的に頂点を目指したい等、彼女の為ならどんな場所にも着いて行きたいと思っていた。全てが全てキラキラ輝く人間の世界に好奇心を押さえられない様子を見せる彼等にミリは綻ばせながらグッと拳を握って空に突き上げる








「それじゃ皆のやる気に期待しちゃおうかしら!」

《わーい!》

「んー、やっぱり皆が主役になっていくから皆がやりたい競技を中心に行動すればいいよねー。どれにしようか〜」

《主、このまま世界征服もアリかもしれないぞ》

「…刹那ちゃんそんな台詞何処から聞いた?」

《蒼華から聞いた》

「蒼華ちゃんんんん!?」

「…」
《やるからには徹底的に追及し、頂点を極めてこその強者だ。それこそ世界征服も夢ではない筈だ。それにその辺の人間共など、主人と我等の敵ではない》

「意外に完璧主義者なのね蒼華ちゃん…………けど私は世界征服なんかには興味ないから、そんな恐ろしい事は言っちゃ駄目だよ」







何度かよく言われる台詞だな、そう苦笑を浮かべながらミリは蒼華の頬を撫でる

よく居るのだ。【異界の万人】のミリを崇拝し、彼女の存在を世界に主張したいが為に、見せしめとして世界征服を目論む者達が

【異界の万人】となれば、たかだが一つの異空間を支配するなんて息をする位容易い事だ。しかもその圧倒的な力で異空間に存在する生き物を従えさせるなんて造作も無い事であり、平伏す事だって出来る。圧倒的な力と絶対的な存在、羨望と畏怖を受けながらも頂点に君臨する女帝、それこそが【異界の万人】であり、まさにミリの裏の顔なのだ。本人はそんな雰囲気を微塵も見せず呑気に唯我独尊貫いているが

勿論ミリは世界を恐怖のどん底に陥れたり世界征服をして恐慌世界など作るつもりは更々無い。興味もなければ、逆にそんな台詞を言われてしまえば、一体何を企んでいるのかと疑念を浮かばせ一気に距離を置いてしまう。純粋に自分を慕って来る者もいれば、自分の力を目的に近寄って来る輩も沢山いた。身構えてしまうのも致し方無いし、長年の癖でもあった

時杜の通訳も交えつつ、大胆不敵に言い放つ蒼華は勿論純粋に慕う部類に入る。純粋に、純愛に、そして誰よりも忠誠心の高い彼の混じり気の無い真っ直ぐな想いはその真紅の瞳を見れば一目瞭然

ま、世界征服の事は置いておくとして、とミリは話を戻した








「皆は何がやりたい?」

《ミリ様に任せます!》

《私は主が行く道を進むまで》

「…」
《主人が満足すれば満足だ》

「えー…」







色んな競技に挑戦してみたい好奇心はあるにしても、主至上主義な彼等にはミリが満足すればそれだけで十分な為、ぶっちゃけどっちでもよかったりする

元気良く、返答にならない返答を返した彼等にそれこそミリは苦笑を漏らす







「こらこら、何か一つでもないの?主役は君達なんだよ?私はあくまで君達の実力を引き出すだけの存在に過ぎないっていうのに」

《そんな事はありませんよ!ミリ様がいてこその僕らなんですから!》

「うーん、でもねぇ」

《私達は主の意向に従うまでだ》

「その気持ちは嬉しいけど」

「…」
《結局これらの戯れは主人の目指す頂点の通過点に過ぎん。主人の夢を叶う為なら、我等は何処までも着いていく。だから気を使うな》

「う、うーん…まぁ、そう言ってくれるなら」








最大の目標はポケモンマスター

しかし今の現段階では、どの課程を踏み、どういった経緯でポケモンマスターになれるのかなんて、情報が少ない以上知る術が無い。しかし蒼華の言う通り、全てはポケモンマスターになる為の通過点だ。リーグ大会に出場するのも、図鑑を完成させるのも。ただポケモンマスターになれる方法を知らないだけ

別にがっつく必要は無いし、急かしてもいない。ゆっくりと、気儘に旅をしていけば自ずと後になって機会が巡って来る。そう思いたい

それかこの際、闇雲に進むのも一つの手だろう。本気で色んなものに挑戦していくのもアリかもしれない。ジム戦に限らず、そう、様々な競技に挑戦して、頂点を目指し、そして―――――








「―――――うん、決めた」







ミリは不意に笑う








「ジム制覇にリーグ制覇、図鑑完成にコンテスト全種目制覇、他にはこの世界の検定や資格にも挑戦するのもこの世界を知る為の良い機会かもしれない。君達には少々、手に余る位余裕な事かもしれないけど、ね」








生憎、彼女達には時間や他人に縛られていない

時間はたっぷりある

ゆっくりと、のんびりと、時に身を任せていこうじゃないか








「楽しみだねー」

「…」
《ですね!》
《そうだな》






(その後の活躍が今後に影響されていくなんて、まだ気付かない)

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -