さぁ、旅をしよう 期待溢れる未知なる世界へ 色んな出会いが待つ、楽しい旅へ 私達の旅が、始まる Jewel.07 改めてトレーナーカードを受給された次の日を境に、初ポケセンデビューを果たした私達は早速此所ナギサシティを出発し、まだ見ぬ世界へ一歩足を踏み入れる事となる ポケモントレーナー。トレーナーカードを所持し、手持ちに一匹だけでもポケモンを所持していれば問答無用でポケモントレーナーと認識される、そんなこの世の常識に私はつくづく感心するばかり。腰にモンスターボールが装着して、しかも旅してますよランランルーな感じに旅を楽しむ人がいればその人こそがポケモントレーナー。しかも「目と目が合ったらポケモンバトル!」というゲームにあった暗黙の了解は健全で、色んな場所でバトルを楽しむトレーナーが数多く存在していた。仲良き事は良い事だ。バトルを通じて交流も深めれば、時には残酷に敗者から金を巻き上げる、そんな世の理不尽を垣間見れるこの世界は本当に面白いと思う。勝てばどんどん収入が得れるならこの世界は色んな意味で安泰だろう。別の異世界では収入が無くて金に飢える亡者ばかりの所だって存在するのに、きっと彼等がこの世界の存在を知ったら真っ先に食い付くんだろうなぁ…と、無意味な比較をしてしまう さてさて、そんな私達もトレーナーとして旅に出たわけなのですが――― 「いやぁ、私とした事がうっかりしていたねー」 《僕らって人気者だったんですね》 「…」 《興味が無い》 そう言うのも勿論理由があった 私達はしがない一般トレーナーで、出来たてホヤホヤの新人トレーナー。バトルなんて初めてだし、右も左も全然分からない素人。勿論この世界の常識を全て知っている訳が無いから、どれが正しくてどれが間違っているかなんて検討が付かない。勿論、この子達もそれは同じで(いやむしろポケモンにこの世の常識を聞いてはいけない気がするが)、私達はある意味で一般人とかけ離れた存在なわけで… 忘れていたのだ 蒼華と時杜と刹那は、とても珍しい存在だと言う事を 伊達に伝説や幻と語られてはいなかった。特に蒼華のスイクンと時杜のセレビィ―――ジョウトで(多分)有名な彼等は此処でもかなり注目された。…と、そういうのも旅先でポケモンに詳しいシンオウの博士と鉢合わせした時のテンションがハンパなく凄かったからだ。彼に出会う前は珍しいポケモンだと目を輝かせてバトルを挑んで来るトレーナーや喜々とした様子で遠くで見てくるだけであって、この子達の存在を知る人は殆どいなかった。だから今まで気にはしなかったが、彼の言葉で思い出したのだ。「あ、そういえばこの子達って有名だった。ヤッベッ」って 勿論この子達だけではなく、私自身にも言えた事だった。喜々として私達に接してくるトレーナーだったり妙な下心で接してくるトレーナーも居たが、まぁそんな彼等とも一言二言会話するのはしょうがないとしても ポケモントレーナーの会話は、常にポケモンが中心だ 自分のポケモンや相手のポケモンの自慢話やさして障りもない会話なら分かる。しかし専門的な話やゲーム以外で浮上した内容なんて知るはずもない。ナギサシティで情報という常識を詰め込んだつもりだったのに、私の苦労は呆気なく崩れてしまう。………といっても、他の世界でも大体似た様な状況に何度も経験した事があるから想定無いだったけれど(でもキツい。精神的に 「しかし…刹那、君の存在がまだ世に知られていないだなんてね」 《そうらしいな》 「(あ、落ち込んでいる)」 スイクンとセレビィは認知されていた しかし、ミュウツーは知らなかった となれば、この世界の流れが大体想像が付くが―――問題はゲーム寄りなのかアニメ寄りなのかポケスペ寄りなのか、だ。ゲームだったら何十年も前にフジ博士がミュウを捕まえてミュウツーを産ました、アニメだったらミュウの睫毛の化石から造った映画寄り、ポケスペだったらロケット団が造った、と様々な可能性が浮上する。けど今の時点でどちらが該当するのかは未だ謎のまま 私の隣りでモサモサとクッキーを食べる刹那は、博士の話を聞いて先程から落ち込んでいた。見た目は全然分からず声のトーンも分かり辛いけど、彼から感じる感情のオーラやその緑の尻尾の振り方で大体分かる。あー、でも落ち込んでいる姿も可愛い(ry 蒼華と時杜と違って、刹那は記憶が無かった。そう、全ての記憶を。どのように生まれ、どのように私と出会ったのかも、全て。気持ちは分からなくもなかった。旅を続けたら分かるだろうと思い、一緒に旅を始めた矢先、博士からあんな台詞を言われたのだ。少なからずショックを受けてしまったに違いない。私自身彼の記憶が無い為安易な事は言えないから、ただただ彼の頭を撫でるしかない ―――その時、研究所の自動ドアが開かれた 「―――…待たせてしまったね、ミリ君」 「!ナナカマド博士」 「すまないね、私の後輩と少々話が長くなってしまってな」 「いえ、私達は大丈夫ですよ」 私達は現在、マサゴタウンにあるナナカマド研究所の中に居た 現れたのは、まさに私達にある意味で衝撃的発言を言いのけたナナカマド博士。彼に出会ったのはナギサシティのゲート付近で、そろそろ出発しようか皆!と意気込んでいた最中だった。どうやら彼は数人の研究員と一緒にポケモンの生態観察をしていたらしい。隣りを通り過ぎようとした私に気付いた博士がこの子達に気付き、テンションが上がって―――あれよあれよと言う間に私達は博士の案内で暫くマサゴタウンに滞在する事になったわけだ。あの時の皆さんのテンションマジパネェ 「実はコレについて少々話が長くなってな」 「?―――…これは、」 私の手の平に置かれた、ソレ 長方形の形をしたソレを手に、これは何だろうと首を傾げる私と興味津々とソレを見つめる時杜に(蒼華は相変わらずな反応、刹那はムシャムシャとお菓子に夢中)ナナカマド博士は「ポケモン図鑑だ」と得意げな声色で言う 「ポケモン図鑑、ですか?」 「そうだ。私の後輩でもある博士からサンプルを貰って、使いやすく改良したものだ」 「へぇ〜、凄いですね」 嗚呼、まただ 一瞬だけ、懐かしいと思ったのは たまにあるんだ。こういう気持ちに、懐かしいと感じてしまうこの一瞬が。懐かしくて、ちょっぴり切なくて…今もなおこの原因が何なのかは、分からないまま… ていうか!これがあの噂のポケモン図鑑、まさか自分の手にポケモン図鑑が乗るなんて!少々驚きを隠せない。ポケモン図鑑、主人公達には欠かせない代物で、そんな図鑑がこんな形でお目見え出来るなんて! 「君にも是非、図鑑を持って欲しい」 しかもこんな台詞も頂いちゃったから驚きが倍増なんだぜ 「君に、この図鑑を持ってシンオウを、いや、世界を渡って欲しい。君の他にも一人、図鑑を託した者がいるんだが…良いだろうか?」 「はい!私でよければ喜んで!」 まさかこんな形でポケモン図鑑が手に入れるなんて、やっぱりあの時逃げなかったのが正解だったみたい← 心夢眼で見て分かる、オレンジ色をしたポケモン図鑑 しかし、これも不思議とやり方を私は知っていた。勝手に手がスイッチを押し、図鑑が起動して一覧が現れる。ナナカマド博士が「よくスイッチが分かったな」と驚いていたが、それはこちらにも言えた事だった。時杜が図鑑を覗けば、確かにゲーム通りの図鑑だったが―――…そこは何も表示されてなかった 当たり前だけど、何故か、妙な違和感が湧いた まぁ、とにかく 「…―――頑張ろうね、皆」 「…」 《はい!》 《あぁ》 自称ポケモン博士としてシンオウの図鑑を制覇してみせる あの時はゲームとして頑張ってきたけど、それはゲームであって本場は違う。図鑑を完成させる事そのものが色々大変な道だと思うけど、でも、頑張ってみよう この違和感を、見つける為にも (また一つ、楽しみが増えた) |