それはまだ私がロケット団に所属して、ロケット団か忌々しい少年少女の活躍で解散させられる前まで逆上る










私達には、尊敬する上司がいた




あの頃はまだ下っ端だった私達を眼に止めて、私達の実力を買い、私達を部下として認めてくれた。ロケット団首領サカキ様以上に存在が大きかった、あの御方。今の私が在るのは、あの御方の後ろ盾のお蔭だと言っても良かった

私はあの御方を尊敬していた。大袈裟に言えば崇めていた。きっと私達の中では一番にあの御方を崇拝していたのかもしれない。それだけ私にとってあの御方は存在が大きく、あの御方の為なら命さえも捧げてもよかった。歪んでいると思っている、しかしそれ相応に値する御方だったのだ






「――――…アポロ、お前にはしっかりと経験を積み、実績を積んでもらわねばな。何せお前はゆくゆく俺の跡を引き継ぎ、首領の補佐になってもらうんだからな」








科学者としての才能もあり、トレーナーの実力も兼ね備えていた誰もが敬う存在

あのサカキ様の隣りに立ち、冷静沈着に物事に取り組み、またあの三幹部と同等の実力を持ち、科学者でもあった、あの御方






「ナズナ様、いつもお疲れ様です」

「……全くだ…相変わらず首領もマチスさんも人使いが荒くてしょうがない…」

「(明後日の方向を見ている…よほどこき使われたのですね)………ナズナ様、これから研究所へ行かれるのですか?」

「あぁ、これから研究所へ顔を出しに行く。暫く留守にしていたからな、久々に顔を出したいし研究状況を見にな」

「そうですか、」

「お前も一緒に行くか?」

「!宜しいのですか?」

「別に構わない。お前の好きにするといい。こちらはこちらで勝手に動くから出遅れない様にな」

「はい、ナズナ様!」

「お!ナズナ様、アポロ引き連れて何処に行くんスかー?暇なんで俺も一緒に行かせてもらいますよー!」

「ちょっとラムダ貴方そんな態度ナズナ様に失礼でしょー!?でもアポロやラムダが行くなら私もついて行こうかしら〜」

「アテナ…貴女も人の事が言えませんよ」

「お前達…少しは謙虚を持ちなさい謙虚を!」

「ラムダとアテナとランスか。俺は何人来ようが構わないが、研究所内ではなるべく静かにしてくれ。勿論コントは控えるようにな」

「「「「コン…!?」」」」







あの御方の下で勉強に励み、実力をつけ、立派な部下になって彼の隣りに立ちたい。ずっとそう思って彼の背中を見続け、追い掛け続けた。今日も明日も明後日も、当たり前の様に共に歩めると…思っていた




しかし―――――











ガラッ――――





「っおいアポロ!聞いたかよあの話!」

「何ですかラムダ、唐突に現れて。第一廊下は走らない様にと約束事があるのを忘れてませんか?怒られてしまいますよ」

「おおそうだったそうだった走ったら先生に怒られ……Σねーよ!此処はスクールか!」

「煩いですよラムダ。少しはナズナ様の仕事を減らす為にも頭と手を動かしなさい。あ、失礼。お前は頭脳ではなく行動派でしたね。なら丁度良い、そこにある荷物を研究所まで運んで下さい。ナズナ様もきっとお前に感謝してくれるはずですよ」

「っ…アポロ、」

「あぁ、そういえばランスとアテナの姿が見当たりませんね。いつもならこの時間帯には必ず席に着いているのに…やれやれ、あの二人は遅刻ですか。減点ですね、一回の欠席でも無情に成績に反映されますから注意しないと」

「………アポロ、コントやっている場合じゃねーんだよ…」

「いえ、私は別にコントをしているわけでは無くて半分本気と半分冗談を…――」

「アポロ!いいか、よく聞け!ナズナ様が……脱走したんだよ!!」





「――――――…なんで、すって…!?」

























日常が一気に崩壊した、足下が崩れていく音が無情にも響いた瞬間を、今でも私は覚えている




そしてナズナ様の脱走が機となったかは定かではないが、我々ロケット団は三人の少年少女の活躍によって、崩壊

あの時、もしナズナ様がいたら状況は変わっていたのかもしれない




今となれば、空想でしかない













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