「――――…おや、お前も彼から連絡を頂きましたか」

「そういう貴方も連絡を頂いたみたいですね」






二人の男が、居た






「お前の元に連絡が来ている、という事は残りの二人にも連絡が行き届いているでしょう。…しかし、集合出来たのは私達だけみたいですが」

「あの二人は今別地方にいますからすぐに集合は難しいでしょう。…そもそも収集が急過ぎます。たまたま此処の地方に居れたからよかったにしろ…あの方は一体私達をどう思っているんでしょうね」

「おや、最も近い事を部下にしてきた冷酷なお前が今更その台詞を?面白い冗談ですね」

「…それもそうですね、今更でした。これだと部下に示しが付きませんね」

「その部下と呼べる者達は残念ながら居ませんがね」

「幹部長の貴方がそれを言いますか」

「冗談ですよ。事実ですが」

「返す言葉もありませんよ」






喫茶店のカウンターに腰を降ろし、先に到着していたであろう水色の髪をした男は注文したカクテルを傾けながら男――緑色の髪をした男を面白いモノでも見つけた様な顔をして小さく笑う

小さく溜め息を吐いた緑色の男は隣りに腰を降ろすと、先程から目の前でカップを拭いているバーテンダーの男にカクテルの注文をする。了解したバーテンダーの男は手際良くカクテルを作り出し、リズムよくソレを振った後に、出来上がったカクテルを差し出す



コートを着込んだ彼等二人の胸元には、小さくも「R」という文字が刺繍されていた








「それで、」

「えぇ。どうやらこの地方にあの聖蝶姫…いえ、氷の女王が帰って来ている、と。行方不明になっていた彼女が、まさか生きていたとは。こちらとしてみれば驚きですよ、てっきり私は死んだとばかりに思っていたので」

「彼女を甘く見ない方がいいですよ。…どのようにして陥れたかは知りませんが、あれしきの事で彼女が死ぬなんて天地がひっくり返ってもありませんよ」

「おや、お前が他人を評価するなんてそれこそ天地がひっくり返ってもありえないと思っていたのですが」

「………。貴方は一体私を何だと思っているんですか。私だって評価ぐらいしますよ」

「だって冷酷(笑)なんでしょう?」

「シバき倒しますよ」






水色の髪をした彼は、アポロと言った

緑色の髪をした彼は、ランスと言った


彼等は、六年前に解散になったロケット団の一員だった






「そういえばお前は実際に彼女と会っていましたね。見事なまでにボコボコにされて完封亡きまでやられたとか。帰還したお前の姿は面白いものでしたよ。まるでキャタピーを踏みつぶした様な顔で」

「貴方先程から余計な事ばかり言いますね。私に命令しておきながら貴方は私の醜態を笑っていたのですか。非道ですね」

「失礼ですね。お前よりはマシですよ。冷酷(笑)なお前よりは」

「いつか本当にシバき倒しますよ」

「まぁそんな話はともかく」

「…………」

「…私達がこうして収集をかけられたこの意味…ランス、お前はどう見ますか?」

「…どうにもこうにも、この私達がわざわざ収集をかけられた位です。きっと何かを起こすのでしょうね。一体何をするのかはまだ存じていませんが。……しかし、何故我々なのでしょうね」

「私としてみれば無事に我がロケット団が復興して、サカキ様がロケット団にお戻りになられて、あの栄光の日々を取り戻せられるならあの方が何をされても構わないのですがね」

「まぁそうでしょうね。その言葉には一理ありますが」

「所詮、私達はお互いの利益の為に一時的であれど手を組んだ仲…








…―――そうでしょう?チトセさん」







向けられたのは、先程からカップを拭き続け、二人の会話を静かに聞いていたバーテンダーの男

彼は静かに黒斑眼鏡を二人に写すと、小さくも歪んだ笑みを浮かべる







「確かに貴方の言う通りですよ、アポロさん。所詮私達はお互いの利益の為だけに手を組んだ仲です。お互い目指す目的の為だけ、ね」







すると徐に拭いていたカップを置くと、内ポケットからあるモノを取り出した

一つは、彼岸花の形をした赤い花のブローチが二つ。もう一つは、一枚の写真

チトセは二人のカウンターの前にそれらを置いた







「貴方方にはまずこのブローチを付けて頂きたい」

「おや、鴉によって解散させられた『彼岸花』を、ブローチを付けた事で世間に存在を示す事になりますが?」

「想定内です。貴方方はあくまでもロケット団として活動すればいい。このブローチは私達の結ぶ"鎖"です。一時的とはいえ、私達が互いに手を結んでいる事には変わりありませんので」

「…なるほど。分かりました、付けましょう。私達を結ぶ唯一の鎖を…ほう、中々良いモノを使っていますね」

「ではこの写真は?――――!」

「この、方は…!?」

「気付きましたか。だからこそ、私達は貴方方を呼んだのです」






差し出された、一枚の写真

その写真に写るのは、何処かの街で何かを"調査"している三人の姿



一人は白銀の髪をしていた

一人は漆黒の髪をしていた

一人は――――…







ゆっくりと、チトセの口から紡がれる









「――――…お願い出来ますか?」

「――――…分かりました。その依頼、引き受けましょう」






七年前、突然脱退したかつての上司

写真を食い入る様に見つめる二人を、チトセは嘲笑った







(その隻眼を、見間違えるわけがない)



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