「―――…行ったか、舞姫達は」 「随分と楽しまれた様ですね」 「おや、ゴウキ君にナズナ君!よくきてくれたね。今日は色んな人に会えるなんて運勢でも良かったのかもしれないね。ささ、此処にいるのもアレだから部屋に案内しよう」 「ありがとう御座います」 「そうそう、今日は手土産にカリントウ饅頭を―――…おや?レンガルス君…どうかしたかね?」 「―――――…ぇ」 「ん?」 「やべぇマジやべぇ」 「――――…は?」 「やべぇマジやべぇ。いやマジ何がやべぇかって全てがやべぇ。おいお前らアレ見たか?何なんだあの俺の好みをつめこんだ姿は。やばすぎるだろアレ。やばすぎて虫が増える。害虫が増える。やべぇマジやべぇ頭撫でてやりたい抱き締めてやりたいああクソッアイツらマジ邪魔だな馴々しくミリに触んなや絶対にアイツら氷結させて粉々にブっ飛ばしてやる(イライライライライライラ」 「………………、彼は一体どうしたのかね?」 「気にするな。いつもの事だ」 「ただの禁断症状です。無視して下さい」 「(どんな禁断症状…!?)」 その目は一睨みで殺せるくらい目が据わっていたそうな ―――――――― ――――― ――― ― 黒い影が、いた 足下に浮かぶ影の中に、それは居た 「…ブイ?」 コトブキシティからダイゴのボーマンダの背に身を任せてブラリと飛行移動してから、数時間。無事に現在拠点にしている新居に足を踏み締め、大好きな主の腕から降りた黒恋 同じく同様に降りて来た白亜と共に、光沢光るメタグロスにお礼の一鳴きをを上げた後、疲れを見せない元気さを持て余しながら早速広い庭を駆け出そうかと足を動かせようとした矢先だった 何かが、いる気配がした 「…?ブー?」 気配は、何故か、足下から 下に見るのは、自分の影 ただの、影だ 太陽が上に射す時に、必ずと言ってもいいくらいに姿を表す、ただの自然現象の影 先程、何か黒い影に、また別の黒い影が潜り込んだ様な、そんな気がした 黒恋はジッと自分の影を見た ただの影だ。芝生の上に伸びる自分の影。黒恋は首を傾げた。傾げてみると同じ様に傾げてくる自分の影。小さな前足でちょんちょんと触ってみるも、何も感じない。まぁ感じるとすれば芝生くらいだけど 黒恋の頭の上に、可愛らしいハテナマークが浮かんだ 「……ブイブイ?ブ〜イブイ!」 「ブー…ブイブイ!」 家の中に入ろうと足を動かす主の後を追おうとした白亜が、自分の影を見て頭を傾げるといった妙な行動をしでかしている黒恋に向かって、なにしているの?あるじ様行っちゃうよ!と急かす 自分の気のせいなのかな?と小さく考え込むも、結局自分の気のせいだと自己完結を決め込み、いまいくよ!と元気良く声を上げて皆の後を追った 黒恋が走れば、黒い影も走る 白亜と並ぶと、影が重なる 「ブ〜イブイ♪」 「ブイ、ブーイ♪」 黒い影は黒いイーブイの下 黒いイーブイから、白いイーブイの下へ 「白亜ちゃーん、黒恋ちゃーん。お手洗いに行きましょうね〜」 「「ブイ!」」 ゆっくりと、ゆっくりと そして黒い影は、オレンジの光の影へと成りすます 「…?何か今気配が…」 「ミリ、どうかしたかい?」 「「ブーイ?」」 「……あ、すみません何でもありません!私の気のせいでした」 「そうかい?ならいいけどね」 「「ブ〜イ」」 黒恋と同様に、否、黒恋以上に些細な気配に気付いたミリだったが、ダイゴの言葉に疑問の糸を解いてしまい、結局本人も気のせいだと自己完結を決め付けてしまう 腕に抱き上げた白亜と黒恋の両手両足を洗うべく、ダイゴと一緒に洗面所へと足を運ばす。この子達を洗い終わったら次は夕飯作りだと、今のミリにはその思考でいっぱいだった 《………――――――》 足下に潜む、黒い影 光りを守る様に、溶け込む静寂の影へ 金色に輝く瞳が、不気味に輝いた → |