「――――んー!美味しい!此処のワッフルとても美味しいですね…!ワッフルも美味しいしこのミルクティーも美味しいし……シロナさん私のチョコレートナナの実ワッフル食べて見てくださいよ!とっても美味しいですよ!」 場所は変わって、此処はコトブキシティ アスランの案内の元、彼等はランチをご馳走しに喫茶店に足を運んでいた 「あら?本当に?だったら遠慮無く貰っちゃおうかしら!ミリも私のモモンバニラワッフル一口いいわよ〜これも超美味しいわよ〜!」 「やったね!ちょっとそれ気になっていたんですよ…!と、言う事で……はいシロナさんあーん」 「あーん。…んー!美味しい!やっぱり食後の甘い物は欠かせないわ〜!はい、ミリもあーん」 「あーん。…んー!美味しい!モモンの果実とバニラがマッチしていて、しかも二つがワッフルと絶妙に絡んでいて…!ワッフル超うまー!」 時刻は正午を過ぎて、現在午後の2時を回った カンナギタウンから此処のコトブキシティまでは道中にテンガンザンを越えなければいけない関係、此処の喫茶店に着いたのは客が最も混むピーク時を過ぎた頃だった 此処の喫茶店はコトブキシティの中でも最も人気が高い店。勿論客は店内に残っている。ミリ達はその店の中でも一番静かな場所―――「予約部屋」の所で食事を楽しんでいた 「ミリ、シロナさん。僕のガトーショコラも一口食べてみるかい?こちらも珈琲と絶妙にマッチしていて美味しいよ」 「君の肥えた舌を唸らせるくらいだから余程美味しいんだな。…やはり私も頼んでおくべきだったかな」 「やった!なら遠慮無く一口貰います!ダイゴさんダイゴさん、私の分も食べて下さい!美味しいですよ〜」 「それは嬉しいね。なら遠慮無く一口貰うね」 「ゲンさんもどうぞ〜」 「私もいいのかい?」 「偉いわね〜ミリ。私なんて勿体なくてあげれないわ〜ミリだったらあげるけど。んー、やっぱり甘い物は最高ねー」 「ブーイVvv」 「ブ〜イ♪」 「美味しいね〜白亜、黒恋!」 「「ブイブイ!」」 ポケモンが食べれるポケモン専用のワッフルバニラ添えを美味しく食べる白亜と黒恋の頭を撫でてやれば、嬉しそうに尻尾を振って返事を返す 此処の喫茶店はただの喫茶店ではなく、ポケモンが人間食を気兼ねなく食べれる様に工夫したポケモン食も置いてある。だからこそ、沢山のお客が来店してくるのだ 店内に流れる心地好いメロディーに、店内に染み付いた珈琲の香ばしい匂い。店内の雰囲気もいい事から、こうして人気No.1の喫茶店になれたのだろう。試行錯誤した努力を今この瞬間垣間見れた気がした 「―――アスランさん、こんなに素敵な喫茶店に案内して頂きありがとう御座います!」 「此処の喫茶店は私も贔屓している所でね。気に入ってくれた様で自分の様に嬉しいよ」 「はい!この子達も此処の食べ物に随分気に入ってくれたみたいで――――そう、こんな感じに私の分まで食べちゃうから駄目でしょー?可愛いからって駄目なものは駄目よ〜、まぁ可愛いから許してあげるけどねー」 「「ブ〜イ!」」 「ハハッ、それは良かった!」 静かに当店自慢のブレンド珈琲を飲みながら、ミリ達の仲良く食を楽しむ姿を微笑ましそうに見つめるアスラン 浮かべるその笑みこそ、彼本来の屈託のない笑みだった 改めて、こうしてミリを見るその目は、大切な娘を見る優しげな瞳。記憶が無くなってしまったミリを再度見ても自分の知っているミリとなんら変わりもなかった。甘い物の前でテンションが上がる姿、甘い物を口に含めると幸せそうに笑みを浮かべる表情、美味しい物を他の人に分け与える心遣い…―――嗚呼、確かに彼女は此処にいると、改めて実感した 「ミリ君、知っているかもしれないが、実は此処の喫茶店はシンオウ副幹部長のジン君が副職で運営している所なのだよ」 「!え、やっぱり此処の喫茶店だったんですか?道理でこの紅茶、貰った茶葉の香りがしたので…」 「そーよミリ、此処はジンさんが運営している自慢の喫茶店なのよ〜。リーグ内の人間は必ず一回は此処で食事や打ち合わせをするくらいなんだから!」 「そうだったのか…噂には聞いていたが、まさか此処の喫茶店だったとは」 「確かにあの副幹部長が好みそうな喫茶店だね。味も雰囲気もコーディネートも申し分ない。是非ホウエンにも来て店舗を開いて貰いたいくらいだ」 「ハハッ、それは良い商談話じゃないか。ホウエンに店舗を開いたらそれこそ繁盛してくれそうだ」 そう、この喫茶店は只の喫茶店ではなく、あのリーグ協会シンオウ支部の副幹部長を務めるジンが開業させた喫茶店でもあった 元々ジン本人、喫茶店を開いてみたいという小さな夢を持っていて、趣味として開いてみようものなら大盛況に発展したものだから、誰が一番驚いたかと聞かれたら多分ジン本人だろう。お陰様でスイッチが入ってしまったらしく、お客様の視点、先入観、リーグ協会に所属している事からポケモンの視点に入ったアイディアなど様々な改良を重ねての、今の喫茶店が出来上がったそうな。一体本職はどちらなのだろうかと心配する熱心振りだ ジンが運営する喫茶店、という事からシンオウに来てから今日まで此処の喫茶店でよく贔屓してきたアスラン。自宅のマンションが近くにあるという理由もあり、従業員と仲良くなってしまうくらい、いつの間にか常連客になっていた。お陰様で席に座っただけですぐに食事が出てくるよ、とアスランが笑えば皆も楽しそうに笑った その時、タイミング良く来訪を知らせるノック音が控え目に小さく鳴った 「失礼します、」と一人の男性が入って来た。全身黒い服で統一した、喫茶店の服には似つかないバーテンダーの服を着た従業員だ。手に持つお盆の上には饅頭が乗った小さなカップが幾つか乗せてあり、手際良くそれをテーブルに並べ始める 「ご贔屓にして頂いてくれている御礼に、オーナーから皆様にと少ない物ですがお裾分けを、と。今出来上がったばかりですので是非ご堪能下さい」 「おや、ジン君がかい?それは気を遣わせてしまったみたいだね」 「どうやらジンさんには僕達が此処に来る事を予知していたみたいだね」 「そうらしいね」 「わぁ、何だろコレ。饅頭?」 「香ばしい香りがするわね」 「「ブイブイ」」 「これは美味しそうな饅頭だ。ジン君にありがとうと伝えといてくれないかな? ――――チトセ君」 「はい、確かに伝えます」 漆黒の髪、紺碧色の瞳に黒斑眼鏡 全身黒いバーテンダーの男は、静かに笑った → |