「しかし…君は顔に似合わず可愛らしいポケモンを持っていたんだね。アルフォンス君は穏和な性格の割りにゴツいポケモンを持っていたけどね」

「ハッピー」
「ミルゥー」

「この二匹を見れば誰だってお前をあの白銀の麗皇だなんて思わないだろう」

「本当に顔に似合わないな」

「全くだ」

「テメェら言いたい放題言いやがってぶっ飛ばすぞ」







可愛い顔して実力は御墨付き


―――――――――
――――――
―――











"彼女"という大切な記憶を失っても、気付かぬ内に"彼女"を求め、まるで"彼女"の形跡を辿る様に故郷より遥か北にある最北の地に移住を決めた。それが約二年前、自分の最後のパートナーであったポケモンの命の灯が消えた、その年に

初めは何故、自分はこんな場所に足を踏み入れ、しかも住家を移動しようと決めたのだろうかと自分に驚き、疑問を浮ばせた。シンオウに知り合いは数多く居るが、だからと言って何でわざわざこんな極寒の土地なんかに、と。暖かい気温に数十年も過ごしてきた故郷を手放すなんて、老後をホウエンにゆっくり過ごそうと考えていた自分の心の辺境にほとほと驚くばかりで

ホウエン地方より、遥かに規模が大きいシンオウ地方。気温もホウエンの暖気気温よりも、うって変わって極寒の気温。寒さが骨に染みる寒さに随分と堪えたのも良い思い出。ホウエンと同様に大地の自然は広大で、見応えのあるモノばかりで、身も凍る寒さが無ければとても過ごしやすい場所だった。特に感動したのは、猛暑以上に暑い夏が此処だと随分と涼しいという事。陽射しがホウエンと比べて痛くないので活躍しやすくて感動した事も今となれば良い思い出だ





「―――――……ミリ君、シンオウはどんな所なのかな?やはりあちらは此処とは違って寒かったりするのかい?」

「はい、それはもう雲泥の差ですよ。冬は雪が降り積もり、気温なんて氷点下以下…はっきり言えばホウエンと真逆ですね。だからこそ夏に涼しいシンオウへ、冬に暖かいホウエンへ逃げる方々が大勢いますからね。寒過ぎてこの子なんて私のコートから出れませんでしたし、」

「キ、キュー…」

「ハハッ、君は草タイプだからね。寒さには余程堪えたんだろう」

「キュー…」
「…」
「……」

「景色まではこの子達が見ている視界内でしか把握出来ませんが、それでも凄いものですよ。今でも思い出しますよ、積もった雪を踏み締めながら歩く感触、シンッと静まる音のない空間…――――今度、機会があったら是非アスランさんもシンオウに来てください。丁度此処が猛暑の時、あちらは全然残暑の気温すらいきませんから」

「それはいいね。今度仕事が落ち着いたら旅行にでもいこうじゃないか。勿論、君の案内でね?」

「はい、私で良ければ是非」







記憶が無いままシンオウに移住をした二年間は、ひたすらシンオウ巡りばかりしていた

コトブキシティを拠点にし、広大な土地を久々に自分の足で歩いて旅をしてきた二年間。様々な場所に赴き、自分の目で見て、感じて

しかし心の何処かではポッカリと何かが開いている虚無感を覚えていた。何故、かは分からなかった。否、初めはポケモンが居ない寂しさからかと思っていた。当たり前の様に自分のそばに居てくれた仲間、失ってから気付く喪失感が虚無感を感じさせていたとずっと思っていた





―――が、この虚無感はそれだけじゃなかった





気付いたのは、今から半年前

"彼女"の存在を思い出し、忘却してしまった記憶に罪の意識に苛まれ、後悔する中で、これでやっと理解した




此処のシンオウに来たのは、知らず内に消えた彼女を追い求め

己の内にずっと感じていた虚無感は、彼女と交わした約束を何処かで期待していたから








「もしアスランさんがシンオウに行く機会がありましたら、絶対に私が案内しますからね。私の友達を紹介して、あちらの幹部長の方々と一緒に、シンオウ旅行を満喫しましょう。きっと毎日が楽しい旅行になりますよ、アスランさん――――………」
















いつしか、夢を見ていた

"彼女"を思い出してからずっと夢見ていた、夢


"彼女"と、"彼女"達のポケモンと共にこのシンオウへ旅行しに行く事を。それこそ全てのしがらみから解放され、只の一個人のトレーナーとしてこの広大で壮大なシンオウ旅行を満喫する事

沢山の友達に囲まれて

彼女の仲間に囲まれて

楽しそうな彼女の姿を見ながら、彼女と共に過ごしながら、最後の人生を過ごす


そんな夢を、現実にしたかった















「……――――――初めまして、アスランさん。私の名前はミリといいます。改めて、宜しくお願いします」






彼女が生きている話は前々から耳にしていた

けどまさか今日…彼女と対面出来る日が来てくれるなんて、誰が予想したか






記憶が失ってしまっても、彼女が彼女な事には変わりはない







たった一人の、愛しい義娘

君が生きていてくれて、本当に良かった








「―――――…あぁ、こちらこそよろしく頼むよ




 ミリ君…――――」











さぁ、今こそ夢を現実にしよう





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