手土産に持って来たお茶ウケを早速提供しようとしたアスランに、カラシナ博士は言い、カツリと響く靴底の音が一つ響いたと思ったら―――そこにはスーツ姿に身を纏った灰色の髪を持つ一人の男性が立っていた。後ろには帽子を被った男性と金髪の長い髪を持つ女性の二人も控えていて、アスランは彼等の姿を目にすると、おぉ!と歓喜の声を上げた






「君はダイゴ君じゃないか!久し振りだね、君も此処に来ていただなんて驚いたよ」

「三年振りですね。お元気そうでなによりです。僕も驚きましたよ、シンオウに移った事は話に伺っていましたが、此処で再会出来るなんて」

「ハハハッ、私もだよ。そういえばリンカ君から話は聞いている。君はミクリにチャンピオンを譲ったって」

「今は二人でチャンピオンを務めています。ですが表向きのチャンピオンは彼に任せてあるので、今の僕はチャンピオンではありません」

「事情は伺っているよ。私はもう退職してかなり過ぎているからこれ以上の事は言えないが、とにかく君が元気そうでなによりだ。勿論、ゲン君とシロナ君もね」

「そちらもお元気そうでなによりですよ、アスランさん」

「お久し振りですね、アスランさん」






そこに居たのは、かつて自分がまだ幹部長を務めていた時に聖蝶姫と交代してチャンピオンに就任したダイゴと、聖蝶姫と親友でシンオウチャンピオンのシロナに、此処で最近見掛ける様になり顔馴染みになったゲンだった

最近会った事のあるシロナとゲンはともかく、久々に再会した成長したダイゴの姿に、しみじみと時の流れを感じさせる。三年の月日は老いぼれの自分にとって短いものだが、彼みたいな若者には大きなものになる。前以上に立派になった彼の姿に、自然と口に笑みが零れる

差し出した手を握り返してくるダイゴに満足そうな笑みを向けると、あなたには感謝しなければいけませんね、と視線をカラシナ博士に向けた






「カラシナ博士、あなたには感謝したい。彼と私を引き合わせてくれた事を」

「ハッピー」
「ミルミル」

「私は何もしてないよ、アスラン。まぁ三年振りの再会を楽しむといいよ。私は部屋に戻って仕事に取り組むとするかねぇ。その代わり、仲立ち料で大福はもらっておくから」

「ハハッ、分かっていますとも」

「それじゃシロナ、後はよろしくね」

「えぇ、分かっているわお祖母ちゃん」

「ダイゴ君、折角久し振りに会ったんだ、何処かお昼でも食べに…――」

「―――あぁ、そうそう。それよりもね、彼等はアンタに紹介したい子がいるんだとさ」

「、え?」




「「ブイブイ!ブーイ!」」








二つの鳴き声が、響いた

突然響いた小動物の鳴き声。元を辿りそちらに視線を向けてみれば、小さなイーブイ二匹が元気良くこちらに駆け寄ってきていた

しかもそのイーブイは、白と黒をした珍しい色をしていた

小さく驚く余所に、二匹のイーブイはキラキラとした輝きを瞳に写しながら―――真っ直ぐに、我先とばかりにハピナスとミルタンクに突進した

突然の登場に突然のタックル並の勢い。だがしかし、対するハピナスとミルタンクは、慣れた様に軽々とイーブイを受け止めては、まるで久々の再会を讃える様に再会を喜んでいた。四匹の仲睦まじい姿にアスランはおろか、ダイゴとシロナとゲンも驚きを隠せずにいたが―――クスリと、不意に三人は互いに視線を合わせ、笑った






「アスランさん、貴方にご紹介したい子がいます」






その時だった

カツン、と、言葉に合わせてヒールが床を歩く音が響いてきた






不意に、何処かで小さく鈴の音も響いた気がした

気のせいだろうか、否、気のせいじゃない



アスランは音のする方へ目を向けた








――――そして、目の前の現実に驚き、目を張った








「私達は、とうとう彼女を見つける事が出来ました」

「記憶を失ってしまいましたが、彼女が帰って来てくれた事には代わりはありません」

「アスランさん、共に彼女との感動の再会を」









ゆっくりとやってくる、"彼女"


オレンジ色を主張とした柔らかい服

ワンポイントに赤いリボン

闇より深い漆黒の長い髪をツインに縛り、こちらに歩を歩ませる度にフワリと靡く


その漆黒の瞳には、前までならけしてある筈もなかった光が真っ直ぐにアスラン達を写していて――――








アスランの目に、涙が浮かんだ







「―――――……ミリ、君」








優雅な仕草でゆっくりと歩み寄ってくる、彼女

彼女こそまさに、アスランが一番会いたがっていた彼女そのもので






「……君も、元気そうで…本当に、本当に良かったよ…!」






腕を伸ばして手を差し出せば、老化のせいで老いた自分の萎れた手の平に、細くて綺麗な手が乗せられて

ゆっくりと包み込む様に握ってみせれば、確かに彼女は存在していて





涙のせいで視界が歪んでも構わない


これが夢なら、醒めないでくれ







昔と変わらない、仮面を被らない太陽の笑みで―――ミリはフワリと微笑したのだった











(おかえりなさい)(君にずっと、会いたかった)



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