清々しい朝だ。雲一つもない空に元気なムックルが空を飛んでいる。ちょっぴり肌寒い気温だけど、昼頃になると過ごしやすい気温になってくれるだろう。そもそも此処の地域は近くにハードマウンテンという活火山がある為、本土よりかはマシなはず。テレビニュースには何処の街も一日中良い天候だと言っていたから、今日は良い初お出かけにピッタリだ






「ブイブイ!」

「ブ〜イ!ブイブイ!」

「白亜、黒恋。今日は楽しみだね」

「「ブイ!」」






キャッキャ、キャッキャとはしゃぐ白亜と黒恋を微笑ましそうに笑うミリ。庭の芝生の上で今日の楽しみさを盛大に表す二匹の頭を撫でてやれば、嬉しそうに喉を鳴らす

今日も二匹は元気いっぱいだ






「うーん、やっぱり口には出さなくても、色んな場所に行ってみたかったんだよねぇ、きっと」

「ブーイ!」
「ブイブイ!」

「ハハッ、そうだよね。うんうん、分かるよその気持ち。だからその分、今日が楽しみなんだよね?」

「「ブイ!」」

「なら今日は、いっぱいいっぱい楽しもうね」






シンオウの土地を踏んだのはナギサシティだけで、後は此処のリゾートエリアに止どまったばかりなので、本当のシンオウを二匹はまだ知らない

カントーやジョウトの土地面積を足してもまだ広いシンオウを、改めて今日、地に足を踏む事となる

本当だったら、今この時点でシンオウの旅を満喫していた筈だったのに、二匹は文句を言わずミリに従った。理由はいまいちよく分かっていないものの、二匹は二匹なりに状況を察知し、空気を読んだ。だからこそ、今まで我慢してきた分、今日が楽しみだった。知らされたのは朝食の時だったけど

いや本当此処の人達って突然だよね、とミリは苦笑を浮かべた






「あらあら、イーブイ達は今日も元気いっぱいね」

「ミリ、待たせたね。こちらの準備は整ったよ」

「ミリの方も準備が出来ているみたいだね」

「…ねみぃ。正直寝たりねぇ…朝日が目に痛ぇ」

「おいデンジ、そんなみっともない姿こいつらに見せんなって。シャキッとしやがれシャキッと」

「皆さん、」

「「ブイブイ!」」






その、ある意味突然言ってくる原因のメンバーが続々と庭にやってきた。爽やかだったり元気だったり一部眠そうだったりと反応が様々で見ていて飽きない

ミリは足下にいる白亜と黒恋を抱き上げて皆の元へ足を運ばせた






「…あら?ミリ、今日はその服で行くの?……用意した服があるじゃない」

「すみませんシロナさん。ですがせっかく新調した服を着ていかないのも勿体ないですし。なにせ今日は絶好日和!楽しまないと損ですよ!ねー?」

「「ブーイ!」」

「……そう、」

「「……………」」

「…ま、いいんじゃないか?似合っているし、可愛いし。おぉそうだそうだ別にいいだろ可愛いし」

「やっだーデンジさん褒めても何も出ませんって!照れる照れる〜」

「おー照れろ照れろ」

「デンジお前…面倒いからってそれは無いだろ」






ミリが今着ている服は今までタンスの中に閉まってあった、シンオウに行く為に新調した服。オレンジ色の生地と赤色の紐が風に揺られてフワリと靡く

今まで、そう今日この日まで一度もこの服を着た事は無かった。着なかった、否、着れなかった。もっとハッキリ言えば、着させてくれなかった。理由なんて、ミリは分かっている。目の前の彼等は―――聖燐の舞姫である自分を、拒んでいるから

彼等にしてみれば、新調したばかりだとはいえ、初めて見た服を「聖燐の舞姫を主張している服」と見ている。無理もない。現に目の前に立つシロナは不服そうな目でこの服を見ている。今まで服を用意し、コーディネートしてくれていたのは何を隠そう彼女だった。確かに選んだ服を着なかったから不機嫌になるのは致し方ないが……此処でも私の意思は無視ですか、と心の中で小さく息を吐く

しかし服に関しては譲れない。いくら自分を聖蝶姫に仕立てあげて、箱庭に閉じ込めても、服は絶対に譲れない。いや、譲りたくない



自分は聖燐の舞姫だという、小さな小さな主張だから




未だムスッとするシロナを、まぁとにかく、と宥める様にダイゴが口を開いた







「そろそろ行こう。彼を驚かす為にも早く行かないと」

「あぁ、そうだ。此処からカンナギタウンまで結構距離があるから、彼が来るまで早めに到着しなくては意味が無い」

「…そうね。でも最初にお祖母ちゃんに会って貰わないとね」

「ハァァァ…結構今回も仕事とか…俺も一緒に行きたかったぜ」

「ダイゴさん爆発しろ」

「僕だけ!?」






少しコント的な事をし始めた彼等を笑いながらミリは腕に抱いている白亜と黒恋に視線を向ける

二匹はキャッキャと笑いながら楽しそうに彼等の様子を見て笑っている。自分の視線に気付いた黒恋が愛くるしい瞳をこちらに向け、続いて白亜も同様に愛くるしい瞳をこちらに向けて見上げ、笑い、二匹同時に「「ブイ!」」と鳴いた。ミリは微笑を浮かべながら応える様にギュッと抱き締めてやれば、二匹は嬉しそうに擦り寄り、尻尾を振った






「それじゃ、行こう。メタグロス、カンナギ博物館までよろしくね」

「ボーマンダ、今日も宜しく頼む」

「フワライド、よろしくな〜」

「…電気タイプと飛行タイプのポケモンいねぇかな…」

「ミリ、いいわね?勝手にどっか行っちゃ駄目だからね?」

「分かってます」

「「ブ〜イ」」










さぁ、カンナギ博物館へ






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