「――――お前ら一体此処に何しに来やがったんだ。ただジム戦してきたわけじゃねーだろ」





今まで黙っていたデンジが口を開き、その睨みを利かした眼光はそのままにデンジはレンとゴウキとナズナに視線を向ける






「それは私も先程から疑問に思っていた事だ。レンと剛腕はジムバッチがあるし、サラツキ博士はバッチを集めていないのだろう?デンジに文句があるだけならレンだけがやってくるのは筋がいっているが、三人で来るのは余程の事がない限り考え辛い。そもそもレンは私の知る限り一匹狼そのものだ。あのレンが人と一緒に行動している事に驚きを隠せないでいる」

「アンタら三人がどういう関係かは知らねぇ。興味もねぇよ。だが、あの時の電話でアイツと仲良く会話するくらいだからミリが絡んでいるのは目に見えている。けどミリを省いてもお前らが一緒に来る理由が無い。―――そんなお前らが何で此処に来た?」






彼等がジムの扉を叩いた時から、ずっと疑問に思っていた

今日予約していた一人の挑戦者と戦い、勝利を納めた。今日は別荘にコウダイとジンが来訪すると聞いていたので、顔ぐらい出した方がいいと思っていた矢先だった。突然扉が開かれて、案内人のジムトレーナーと一緒に現れたのは見知った…最も会いたくなかった奴等が真っ直ぐフィールドに立つデンジに向かって歩いていた。驚くデンジを余所に、観客席に移動するゴウキとナズナ、そして柵を飛び越えフィールド内にやってきた昔馴染みは挑発的な笑みを浮かべ、いきなりバトルを仕掛けて来た

ミリの事かと始めは思った。だったら返り討ちにしてやるよとデンジも積年の怨みも込めてバトルに臨んだ。だが、ふと考えた。ミリだけの事ならレンだけでもいい筈だ。何故此処にゴウキやナズナが同席しているんだ、と

トムの言う通り、自分の知っているレンは一匹狼だ。人脈は広くて人望も厚くも、人と共に行動するのを避けていた孤独の情報屋。それこそ女なんて論外だったレンが、女を作り、しかも予想外の人間と行動している。一匹狼時代を知る人間が見たらえらい変わり様だと驚くだろう

そんな昔のレンを知る人間だからこそ、三人という団体で行動しているレンを怪しいと思い、一体何が目的だと警戒をする。ミリの事だったら首根っこ掴んでナギサの海に沈めてやる、と物騒な事を考えるデンジを余所に、三人は互いに視線を向け合う

その様子に気付いたトムは何かあると瞬時に気付く。しかし敢えて口には出さず相手の出方を伺い―――口を開いたのは、ゴウキだった






「――…確かに、用事があって此処に来たのは事実。だがそれはナギサシティであってナギサジムではない。ナギサジムに用があると白皇が言ったから、どうせバトルするのだろうと思い、俺達二人はバトル見たさに着いて行ったまで」

「どうもコイツの顔面蹴らなきゃ気が済まなくてな」

「テメェ死ね」

「生きる」

「なら、ナギサには何の用で?」

「色々と調べたい事があってな」






それ以上は答えないつもりなのか、そこまで言ったゴウキはゴウキは視線を落とし、壁に身体を預け腕を組んで沈黙に入る

少し離れて立つナズナも自分から何も言うつもりもないのか、ゴウキと同じく壁に身体を預けポケットに手を入れたスタイルで隻眼の瞳を閉じている。その二人の立ち振るまいの姿はやはり兄弟だなと関心するばかりだが、二人が口を閉じてしまえばこれ以上の追及は無意味

その時、トムはある物に気付いた






「(―――…パソコン)」






今まで触れてはいなかったが、一度疑問を浮かべてしまうと相手の私物までも気になる対象へと変化する

ナズナの胴と腕に挟まれている長方形のソレ―――指図め小型式ノートパソコンだろう。足下にはパソコンを収納するバックが置かれていた。しかし少しパソコンの大きさと比べると少々不釣り合いな大きさだ。きっとバックの中に別の機材でも入っているに違いない

ゴウキは調べたい事があると言った。ナズナは博士だ、調査ならお手の物なはず。白銀の麗皇であり情報屋のレン、鉄壁の剛腕でありシホウイン道場の副師範長のゴウキ、そして考古学者であり博士でもあるナズナ……彼等三人が共に居る事は、何か意味があるのかも知れない



そこまで思考を巡らすトムに、不意にゴウキはフッと笑った






「流石、と言うべきか。どうやらこの者は他の者と違って少々頭がキレる人間みたいだな、トム」






予想外の言葉、しかも自分の心情を読まれたトムは小さく驚いた






「驚く必要は無い。何も語ろうとはしない相手に疑問に思い、警戒し思考を巡らすのは誰だって同じだ。ただお前の場合、白皇の性質を見極めているからこそ疑問に思った。その推測には称賛を与えたい所だな」

「……これは驚いた。流石は鉄壁の剛腕、噂は伊達ではない様だな」

「動作も無い事だ。…だが、すまないがまだ全てを語るわけにはいかない。あまり混乱を招く行動は避けたいのが本音だ」

「………………」






鉄壁の剛腕は相手の気…つまり感情を読み取る事が出来ると噂されている。生憎武道の道にはいない身なので詳しい事は把握しきれていないが、詰まる所チャーレムやアサナン、そしてルカリオの類なのだろう。まぁこの話は置いておくとして

混乱を招く行動とは一体何なんだろうか。また疑問が一つ増えた。しかも説明までも拒否した。彼等は一体何を考えているのか。これ以上の詮索は無駄だと分かったトムは小さく肩を竦めると、最後の綱であるレンに視線を向ける

レンはただ黙ってソファに座り、腕を組んで沈黙を守っていた。その姿を見てトムはやれやれと被りを振った

その時、デンジは何かに気付いたのか、もしや…と小さく呟いた






「発電所に来た三人組の男性ってのは…お前らの事か?」














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