「―――――……あぁ、そうでした。言い忘れていた事が……シロナ、」 「?はい?」 「写真、バッチシ納めて下さいね。報酬は給料一割アップで手を打ちますので」 「そんなジンさん、給料上げなくても最初っからカメラに納める気でいましたから大丈夫ですよ〜!」 「そうですか。それは良かった。なら、楽しみにしていますよ?」 「えぇ、任せて下さい」 ニヤニヤニヤ… 「ダイゴさん、どうしよう。ちょっと悪寒が…」 「うん、まぁ…頑張れ」 何する気 ――――――――― ――――――― ――――― ――― ― 「さて……レン、お前がジムに来るとは思わなかったぞ。このテレビ中継を見たナギサの市民は白銀の麗皇が帰って来た事に驚きを隠せないだろう。帰り道には気をつけた方がいい」 「そりゃ物騒な事で」 「お前に怨みを持つトレーナーは特にナギサには多いからな。お前の女性ファンにもつくづく気をつけた方がいい。それこそ中継で見たお前に躍起になって問い詰めて来るだろう」 「チッ。……ま、奴等に見つからねぇ様に善処するぜ。キンキン声うるせぇし香水ヤベェしベタベタしてマジ勘弁だからな」 ナギサシティにある、ナギサジム フィールドから離れ、ジム内にある休憩室に一旦移動した彼等四人 「―――それよりも、彼女の愛を熱く語るのは構わないがテレビ中継の存在を忘れるな。聞いていてこっちが恥ずかしい。なんなんだこの漫画にありそうな展開は」 「あ?まだこんな程度なんざ語った内にも入らねーよ」 「開き直るな」 「……いや、そいつの言っている事は正しいぞ……先程の言葉は全然語った内にも入らない…アレはただの忠告だ…」 「もはや遠い目になっているぞゴウキ…」 「………………」 ジムのリーダーのデンジはただ静かにソファに座っていた。ただし、眉間は恐ろしく寄っていて物凄く不機嫌なオーラがただ漏れだ。勿論その元凶でもあるレンは、対面するソファに踏ん反り返り、あまつさえトムの言葉にシレッと答えていた。ギロッと睨み付けてくるデンジには眼中に無い様子で、そのデンジに挑発した笑みを向けていた 注意をしたトムは、平然とするレンの敢然たる様子に呆れた仕草を見せ、ゴウキに至っては何処か遠い目をする始末。思い当たる節がありありで哀愁漂うゴウキに、ナズナは憐れみの視線をゴウキに向けるばかり ハン!と鼻で笑うレンのふてぶてしい姿を見ながら、お前もつくづく変わったな、とそう言ってトムはやれやれと苦笑を漏らした 「そんな事よりも……レンが此処に来るならまだしも、何故、かの有名な鉄壁の剛腕とサラツキ博士が…此所へ?」 サングラスを掛けいるその鋭い眼光は、ゴウキとナズナに向けられる トムとゴウキとナズナは、初対面に等しい トムはゴウキの活躍をずっと前から耳にしていて、ナズナの存在も最近認知したばかり。二人共、かの有名なサラツキ博士の息子であり、今では一人前の男として絶賛活躍中なゴウキとナズナ。そんな二人が此所にいる事態、トムは正直驚きを隠せないでいた 「そもそもレンが二人と知り合いだった事に私は驚いたよ。流石、情報屋なだけはある」 「情報屋は関係ねーが…ま、そういう事にしておくか」 「麗皇、紹介してくれないか?」 「あぁ、そうだったな。ゴウキ、ナズナ、こいつはトムだ。近くの喫茶店でのんびり運営している此処のジムリーダーだった男だ。トム、別にお前は紹介しなくてもいいだろ?」 「初めまして、ナズナです」 「ゴウキだ」 「トムだ。レンが世話になっているな」 「「あぁ全く」」 「おいお前ら何様だ」 ギロッと鋭い視線を向けるレンを尻目に、三人は気にした様子も無く互いに握手を交わし合う。しかし此処はナズナ、トムに自分の名刺を手渡す辺り板に着いていると感心するばかり しかし光栄だな、そう言ってトムは笑い、手渡された名刺に書かれている文字に注視する サラツキ・ナズナ。あの有名な考古学者、サラツキ・ツバキ博士の息子であり、今では同じ考古学者で、博士だ。親の道を歩んでいる、まさに生き写しだ。名刺には考古学の他にも歴史学と生物科学とコンピュータ技術開発を専門としているらしい。そういえば彼はツバキ博士亡き前は何処かの地方で科学者として腕を振るうっていたと聞いた。如何にも、目の前にいる男は知的なイメージを与えてくれる。若くして博士になれたのなら相当な努力と苦労があったに違いない そして隣りに立つゴウキはトムも一番知っている人間だ。初対面でも話には聞いていたから実際にこうして目の前に立ってみると迫力が違う。その若い歳でこの威圧感は、彼と同い年の若者と大違いだ 二人並んでいる姿を改めて見てみるが、二人は正直言って似ていない ナズナが「智」であればゴウキが「剛」。理数系と体育会系。筋肉が引き締まったガタイの良い体型のゴウキと、線の細いスラリとした長身のナズナ。茶色い髪と漆黒の髪。全て異なっている二人だが、唯一似ているのはその鋭い眼光と、ツバキ譲りの灰色の瞳(後、二人共髪が長い レンとゴウキが知り合いなのは障り程度しか話を聞いていなかったトムだったが、今日まさかそのレンに二人を紹介されるとは。つくづく情報屋の肩書きは凄いものだな、と思うばかり 「今度私の運営する喫茶店にでも立ち寄ってくれ。君達をもてなそう」 「えぇ、是非」 「何かあったら助けになろう。警察庁に連絡すれば俺に電報が届く」 「そうさせてもらおう。剛腕が居れば心強い。昔と違って此処も良くなったが、まだ治安が悪い所があるからな。君の名を有効活用させて貰う」 「構わん。それがナギサの為なら好きに使うがいい」 「助かるよ」 そう言って、三人は笑った → |